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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第7章 巴衛編
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カラスの襲撃

「さて、では、解放軍の情報をもう一度整理したいのですが、黄虎本家に捕えられているワシたちからは情報なし。同じくスミレという人族からも、解放軍の所在や龍海殿の妻の兄熊の所在も引き出せなかったわけですな。」

龍賢の言葉に龍希は頷いた。

「あ、ただ黄虎が解放軍を警戒してたのは、眷属のとこでも悪さをしてるから、解放軍の狙いが黄虎なのか知りたかったらしい。

そう言ってた黄虎族長から悪意は感じなかったから、これは本当だろう。」龍希は思い出した。

「なるほど。しかし困りましたな。手がかりがなくなってしまいました。」


「あ!いや、あるぞ。あのスミレって人族は、スイドウ町と水連町って人族町に立ち寄っていたらしい。」


「しかし、その2つの町を探そうにも・・・何か手がかりがなければ。どちらも大きな町と聞いております。」

「あ!水洞町といえば、カラスがゴーライという雄ゴリラを捕えた町ですよ!」

「そういえば、まだカラス族からゴリラが目を覚ましたとの連絡はありませんね。」

「じゃあゴリラ待ちか・・・」龍希はがっかりした。

「いえ、カラスがゴリラを捕えた辺りを探す価値はあります。どこですか?」

「お!さすが龍賢だな。龍景、町のどこだ?」

皆で期待して龍景を見たのだが、


「え?どこ?き、聞いてないです・・・」


「はあ!?」龍希は龍景に拳骨をくらわせた。

「いてーーー」

「バカやろう!今からカラスに聞いてこい!」

「は、はい!行ってきます!」

涙目の龍景が立ち上がって執務室の扉を開けた時だった。

「おっと!」龍光とぶつかりそうになる。

「あ!す、すみません、龍光様」

「おお、龍景。こちらこそすまん。」


「龍光、どうした?」

「族長、水洞町にいた使用人からの報告です。

カラス族が町にある建物を襲ったそうなのですが、人族たちは解放軍が襲われたと騒いでいるそうで」

「なに!?」

「ど、どういうことだ?なんで?」

「・・・どうやらカラスに先手をうたれましたね。」龍灯が悔しそうに呟いた。



~水洞町郊外の森~

「ジュウゴさん、お疲れさまです。」

「あ!(ゆたか)てめえ!もっと早く手伝いにこいよ!」

ジュウゴは、ヘラヘラ笑いながら近づいてきた若い男を怒鳴り付けた。

「いや~カバの獣人の死体とか触るの無理です。」

「はあ!?俺だって不愉快だよ!」

「大変ですね。飼育係は。」

「ふざけんな!なんで俺がこんなこと」

「文句なら司令官にどうぞ。あなたを飼育係に任命したのは司令官ですから。」豊は気にせず肩をすくめる。

「ちっ!」ジュウゴは舌打ちした。


「てか川に流すだけでいいんですか?焼いたり埋めたりしないんですか?」

「こんなデカイカバ埋められるか!熊の子の時も大変だったんだぞ!男4人で2時間もかかった。

燃やすのはダメだ!臭いですぐに獣人どもが寄ってくる。」

「へ~勉強になります。」豊は棒読みだ。

「あ~くそ!疲れたぜ。ゴリラはどこ行きやがった?あいつがいりゃもっと楽なのに!」

「さあ。水洞町には来てないみたいです。まあ、獣人なんてすぐに裏切りますからね。あいつを飼ってた商人も行方不明です。」

「あのジジイ!どこ行きやがった!」ジュウゴは地団駄を踏む。

「逃げたか、もしかしたら獣人に殺されたのかもしれませんね。この辺でも商人が度々行方不明になってるみたいですから。」

「ふん!案外、ゴリラに寝首をかかれてるかもな。あんなデケェゴリラを飼えるわけがねぇ。」

「確かにそうですね。さすがジュウゴさん。」

「うるせえ!棒読みやろう!あ~帰ろうぜ。俺は風呂に入りてぇ。」

「はい。ご一緒します。」



~水洞町 西門~

「ん?なんか騒がしいな。」町の入り口まで戻ってきたジュウゴは首をかしげる。

昼間の往来が騒がしいのはいつものことだが、これは・・・

「悲鳴が聞こえますね。」隣の豊は険しい顔になる。

「ジュウゴさん、こちらに。」豊はそう言って町には入らず、すぐそばの川に向かう。

「おいおい!どこ行くんだ?」ジュウゴはそう言ったが、豊は返事もせずにスタスタと早歩きで進んでいく。ジュウゴは舌打ちしながら後を追った。

 河川敷を川上に歩いていくこと15分、大きな橋の下にたどり着いた。

「誰かいるぞ。」ジュウゴは息を切らしながら豊に話しかけるが、豊は無視してその人影に向かっていく。


「豊様!」橋の下にいたのは、解放軍の連絡係のツツジだった。20代の女でハイエナの奴隷だった奴だ。

「何があった?」

「か、カラスの獣人どもが襲撃してきました。わ、私はたまたま外にいたので逃げられましたが、あの中にはまだ副官たちが!」

「カラス?」豊は首をかしげる。

「なんでカラスが?」

「わ、分かりません。奴ら突然、大群で飛んできて、解放軍の拠点あたりに大量の石を落として、出てきた仲間たちを襲ったらしいです。わ、私が駆けつけた時には辺りは血の海で。何人もの仲間が・・・ううう」ツツジは泣き出した。

「よしよし。辛いものを見たね。よく伝えにきてくれた。」豊はそう言って馴れ馴れしくツツジの頭を撫でている。


「カラスといえば、白猫の地下室から逃げ出した雌が居たな。」


ジュウゴは思い出した。

「白猫の?」豊が驚いた顔で尋ねる。

「ああ。ワニどもと一緒に消えたんだ。

イーロがワシ領で拐って孕ませたカラスだよ。」

「イーロが?なんでカラスを?子どもがほしけりゃ鴨がいたろ?」

「あの鴨は雛だし、同じ白鳥から産まれたから相手にならねぇよ。」

「そのカラスを裏切り者のワニが連れ出して、カラス族をたきつけてきたのか?くそ!」豊は珍しく激怒しているが、

「これからどうする?」ジュウゴは気にせず豊に尋ねる。

「一番近いのはジャガーの隠れ家だから、そこに・・・」


「バカか?オウコに捕まるぞ。」


「え?さ、策士さん。」豊だけでなくジュウゴも驚いた。

いつの間にか雄熊の獣人がそばにきていた。

「オウコってなんですか?」豊が尋ねる。

「知らねぇのか?シリュウと仲がいいんだ。ジャガーはもうオウコの巣だ。」

「え?しかし、あそこにはまだスミレたちが・・・」豊は困った顔になる。

「行きたきゃ勝手にしろ。俺は行かねぇ。」策士はそう言うと川に入って川上に向かって泳ぎだした。


「あ、あいつどこにいくんだ?」ジュウゴは豊に尋ねる。

「あっちは・・・鹿領の隠れ家か?また勝手に!

ジャガーのとこから1人でこっちに来たのはそういう訳か!」豊はまた激怒している。

「ツツジ、君は朝までここに残って、逃げのびてきた仲間たちを鹿領の隠れ家に誘導してくれ。松のとこだ。

俺とジュウゴは熊を追う。頼んだよ。」

「はい。豊様、どうぞお気をつけて。」

「ありがとう。また会おうね。」

豊はそう言ってツツジの頭を撫でると、熊を追って川に入った。ジュウゴは慌てて後を追う。


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