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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第7章 巴衛編
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一喝

~族長執務室~

『ひええ・・・なんで俺こんなとこにいんの!?』

龍景は部屋の隅で怯えていた。

 

 今朝、血相を変えた龍算様と龍灯様が朝顔亭に来たと思ったら、龍景は問答無用で馬車に押し込まれて本家に連れてこられた。

 龍海様とも合流して入った族長執務室では、龍峰様vs族長と父が怒鳴りあいの喧嘩してて、龍峰様が雷を出しそうになるのを族長が雷気で抑え込んでと・・・とんでもねぇ修羅場に連れてこられた。


 てか先輩方!?俺を無理矢理連れてきておきながらなんで隣で置物になってんの!?

特に龍栄様!あんたの父親と弟だよ!なんとかしろよ!

あんたも龍希様と同じくらい力強いだろ!龍峰様より強いじゃん!

なんで青い顔して龍海様と並んでだんまり?ふざけんな!?


 キレてる龍峰様たちを一喝して押されられるのはやっぱり竜湖様だけか~でも族長たちの言い争い聞いてると、なんか竜湖様が原因っぽいなぁ。

龍峰様は龍陽様が寝込んだことでキレてるっぽいけど・・・何があったの?

誰か教えてくれ!



バン


と、執務室の扉が勢いよく開いた。

この修羅場に自ら乗り込んできた猛者は・・・


「うるさーい!にいにねてるの!しずかにして!」


「竜琴様!?」龍景は驚いて乗り込んできた幼女を見る。

怒った顔をした竜琴様と、その後ろには同じく険しい顔をした竜縁様がいる。


さすがの族長、龍峰様、父も驚いた顔で2人を見ている。

「外まで言い争いの声が聞こえてますよ!けんかならどっか外でしてきてください!」竜縁も怒って叱りつける。


「パパもじいじもきらい!どっかいって!」


竜琴様はそう言って族長たちを睨み付ける。

すげぇ怒気だ。

「え?あ、ご、ごめんよ。竜琴」族長から怒気が消え、気まずそうに娘に返事した。

「す、すまん。もう騒がんから。許しておくれ」龍峰様も落ちつきを取り戻しておじいちゃんの顔になっている。


「まったくもう!」竜琴様はそう言うと踵を返して去っていった。

『すげぇ・・・もう竜湖様いらねぇじゃん。』龍景は感心してしまった。


「り、竜縁、ごめんな。も、もう大丈夫だから。」龍栄様が初めて喋った。


「役たたず!」


怒った顔の竜縁様はそれだけ言って竜琴様の後を追っていった・・・


『辛らつ~親バカの龍栄様にそれは・・・』


龍景がちらりと見ると、龍栄様はショックのあまり床にしゃがみこんでいる。

「む、娘を持つって大変なんですね。」さすがの龍景も顔がひきつった。

竜理(りゅうり)にあんなこと言われたら、俺、立ち直れないよ。」娘を持つ龍灯様は涙目になっている。



「と、とにかく。お、落ち着いて話をいたしましょう。さ、族長も、龍峰様も、龍賢様も座って下さい。

龍景、龍灯、飲み物を持ってきてくれ。

龍栄様、立って下さい。」龍海様がやっと喋った。



 落ちつきを取り戻した父の説明で龍景たちはようやく事情が飲み込めた。

族長は奥様の、龍峰様は龍陽様のことで激怒していたようだ。2人の怒りの矛先は竜湖だが、龍峰様が怒りのあまり本家に雷を落としそうになったので、族長がキレたらしい。そりゃ、本家には族長の奥様がいるから仕方ない。


「それで、竜湖の処分はどうなさいます?」父が尋ねる。

「妻にも子どもたちにももう近づけさせない。下の子2人にも聞いたら竜湖を嫌ってたしな。なんで、誰も俺に教えてくれなかったんだよ~」族長はしゃべりながらまた泣き出した。


『最近、涙腺緩くね!?あの龍希がなぁ・・・』


龍景はまた呆気にとられた。

「人族の雌は、夫とその家族に不満不平を言わないようにと幼少期から教育を受けるそうですよ。」龍海様の説明に皆驚いた顔になる。

「そうなの!?なんでお前が知ってんだ?」

「以前、息子から相談を受けまして。自分で妻にきく勇気が持てないと言うので、食事会に来てくれた息子の妻にききましたら、そう教えてくれました。

息子の妻は、前の結婚では夫の言葉に反論したとの理由で人族の夫に殴られていたそうですよ。信じられません。なんと野蛮な!」


「マジで!?あーでも、そっか。妻も、俺は殴らないから優しいって言うんだよなぁ。妻を殴らないなんて当たり前なのに。」


「種族によって文化や考え方は様々ですからな。まあ、それはお互い様ですが。それで、奥様の新しい担当は誰にされますか?」父が尋ねる。

「もういらねぇ!女は誰も妻に近づけさせねぇ!」

「それはいけません。他の妻には担当がおりますのに、族長の奥様だけなしとなると、奥様にも他の妻にも説明がつきません。

それに竜湖は例外です。女たちの本来の仕事は、妻からの情報収集もありますが、妻から不平不満を聞き取って、夫婦関係を円滑にする役割もあります。

特に族長はお忙しく、お子さまも多いので奥様と話す時間は必然的に少なくなります。それを補うためにも女の担当者は必要ですよ。」

「う~でもなぁ。妻はどの女のことも信用してねぇぞ。」


「当然ですよ。熊の奥様も私の妻もそうでした。雌竜を信頼するのはバカな妻だけです!

ですが、雌竜からもたらされる情報を妻たちは必要としております。それに、これからますますお子様たちの養育に雌竜の助力も必要となりますよ。

私は竜冠を推薦します。龍風の守番ですし、竜琴様の転変前の騒動では奥様のそばに居て、関係は悪くなさそうでした。」


父は言いきった。

「それなら竜紗の方がいいのでは?」龍算様が提案したが、

「ダメです!竜紗は竜湖の腹心ですから。それに比べて竜冠は女の派閥争いからは一歩引いた中立派です。

竜色もそうですが、あいつは露骨に族長を嫌いすぎてますから。」

「え!?女にも派閥があんの?」族長は驚いている。

「族長、それも知らないんですか?」龍景は呆れて尋ねる。

「知らねぇよ!悪かったな!てか、なんでお前は知ってんだ?」

「父から教えてもらいました。成獣前に。」

「竜湖は妻だけでなく、あなた方の養育でも情報を制限してコントロールしようとしますからね。だから、私は龍景の教育を竜湖任せにはしておりません。龍希様だって孔雀の奥様とカカがフォローしておりました。」


「まじかよ・・・わかった。龍賢の推薦なら安心だ。

竜冠にしよう。」

「ありがとうございます。」


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