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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第6章 望郷編
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解放軍の幹部 前編

「じゃあ虎桔、よろしく。」

「はい、族長。私からご説明します。」


 奥様はおそらく何もご存じないと思うので一から説明しますね。ここ数年、解放軍という人族の非公式軍隊が勢力を伸ばしています。獣人とも手を組んで、各地で悪さをしていましてね。最初は獣人を襲って人族の奴隷を盗んでいく程度だったのですが、昨年、白鳥領の町を襲って人族だけでなく獣人の奴隷まで連れ去りました。

 他にも、カバ族で族長に近い血筋のバカに近づいてクーデターを起こさせ、混乱に乗じてカバ領の各地で奴隷たちを盗み出しています。

 まあ、黄虎(うち)としてはそれはどうでもいいのですが、眷属のハイエナ族とライオン族でも、解放軍は悪さをしましてね。こいつらには解放軍を潰すように指示したのですが、失敗しまして。逆に解放軍に取り込まれた奴らまでいる始末です。

 そんな時に、解放軍がジャガー族でもクーデターを起こさせようとして、ジャガー族長が助けを求めてきたので、虎冬がちょっと手を貸して、ワシ2匹と解放軍の幹部だという雌の人族を捕まえましてね。

ワシは素直に喋ったんですが、どうやら雇われで、解放軍の下っぱですらなく何も知らないのですよ。

それで、雌の人族から情報を引き出したいのですが、解放軍の人族は何も喋らずにすぐ自殺してしまうので我らでは手が出せないのです。

それで、奥様にご助力願いたく。紫竜本家では、解放軍からの事情聴取をすでに成功されたと聞いております。



 虎桔の話に芙蓉は驚いた。

真矢の言っていた話はどうやら本当らしい。


でも人が獣人と協力?そんなバカな!?


「そんなに驚かれます?

これ全部、紫竜だって知ってる情報ですのに。」虎冬はまた呆れて・・・いや憐れんでいる。

「・・・いくつかお伺いしてもよろしいですか?」

「もちろんです。なんでも聞いて下さいませ。

奥様にはなんでもお答えしますよ。」虎桔は作り笑顔で答える。

「では、白鳥たち被害にあった獣人たちはその解放軍に報復をしていないのですか?」

「できないのですよ。なにせ非公式軍隊なので人族の長たちは知らぬ存ぜぬ。解放軍の基地がどこにあるのかも分からず、突き止めても、もうもぬけの殻という状況が続いているようです。」

「な、なぜ解放軍に協力する獣人がいるのですか?なんのメリットが?」

「解放軍に協力しているのは、元奴隷だったり、戦争などで今の族長に不満をもつ獣人です。その獣人たちは人族の知恵や武器を利用しているのです。

あと・・・」

そう言って虎桔はニヤニヤ笑いながら芙蓉を見てきた。

「あと?」


「紫竜族長の奥様は有名ですから。人族と仲良くしておけば、奥様とお近づきになれるのでは?と期待している獣人もいるようですよ。」


「え!?」芙蓉は真っ青になった。

「わ、私の素性は知られているのですか?」

「さあ。解放軍の内部情報は我らでも手に入らないのです。ですが、奥様の救出も解放軍の目的のようですから調べてはいるでしょうね。」

「・・・それで、私は解放軍から何を聞き出せばよいのでしょう?」

「お任せします。どんな情報が出てくるか私どもも分かりませんので」

「その捕まっている幹部について、教えてください。名前や年齢は分かりますか?」

「スミレと名乗っています。人族の年齢はなんともいえませんが、成獣はしていると思います。」

「どこで捕まえたのですか?」

「捕まえたのはジャガー領と鹿領の境界あたりです。カバ領にいた時から追っていたのですが、途中で見失い、鹿領近くの水連町という人族町で見つけ、水洞町付近でまた見失って、ジャガー領に入ったところを捕まえました。」


芙蓉は真っ青になった。

故郷の水連町に解放軍の幹部がいたの!?

偶然だろうか?

それとも・・・

「今、どんな状況で捕えられているのですか?一人ですか?」

「見てもらった方が早いですわね。ご案内しますわ。でも付き添いは龍希殿しか認めません。」黄虎族長がそう言って立ち上がったが、芙蓉は困った。

「子どもたちは・・・」

「龍栄殿たちが守るから心配いらないよ。芙蓉のことは俺が守るからな。」夫は有無を言わせぬ口調でそう言って芙蓉の肩を抱いた。

「ママ!」

「大丈夫よ。戻ってくるまで龍栄様たちの言うことを聞いて、いい子で待っててね。」芙蓉がそう言って笑いかけると、3人とも頷いた。



~黄虎本家 ???~

 黄虎族長に案内されたのは建物の奥、中庭にある建物だった。2階建ての石造りで芙蓉の実家と同じくらいの大きさだ。

「人族はこの中ですわ。今はスミレ1匹です。拘束はしていませんから、建物の外に出てくることもあります。」

「は?拘束してない?なら妻が危険じゃないか!ふざけんな!」夫が怒鳴ってさらに芙蓉の肩を抱き寄せる。

「他の奴隷と一緒にしてたけど、スミレが同族を傷つけることはないわ。というより、できないという方が正しいかしら。」

「どういうことですか?」

「武器なんてないし、スミレは両目が見えず、片腕もないのでね。」

黄虎族長の言葉に芙蓉は真っ青になった。

 おそらく拷問されてなくなったのだろう。やっぱり恐い。


「・・・どうやって建物の中の様子を見るんだ?」夫は疑うような顔で尋ねる。

「ふふ・・・こっちよ。」

そう言って黄虎族長は建物の反対側に向かう。

「え!?」族長についてきた芙蓉は驚いた。


壁の一部がガラス張りになっており、部屋の中が見える。

両目の上に包帯を巻き、片腕のない女が椅子に座っている。黄色の半袖ワンピースを着ているが、左腕の肘から下がなく、包帯が巻いてある。

「おい!こっちも丸見えじゃないか!」夫は怒った顔で黄虎族長を見るが、

「マジックミラーよ。」黄虎族長はそう言って鼻で笑った。


「私はどんな立場で接触しましょう?以前は、相手と同じく捕まって閉じ込められているふりをしたのですが。」

「あ~なるほどね。さすが奥様。今回はスミレの世話をさせるために捕まえてきた人族って設定でお願いします。これまでもそういう人族の女を連れてきては、数日で交代させていますの。」

「分かりました。」


芙蓉は覚悟を決めた。


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