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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第6章 望郷編
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シリュウ石の山

 7月に入ってすぐ、龍兎がマムシの後妻をつれて挨拶にきたが、妻は蛇が嫌いなので俺一人で相手することにした。

マムシは実家からちゃんと侍女たちを連れてきたらしいから、鴨と同じことは起きないはずだ。



 龍栄は龍河の巣を買い取ることにしたらしい。竜縁が巣を気に入ったからと即決だった。優柔不断だったあいつが、娘が産まれてから変わったよなぁ~

巣は桔梗亭と名付けるそうだ。なんでも竜縁が好きな花らしい。龍栄のとこは使用人だけでなく執事も死んだから新しく用意する必要があるけど、まあ竜夢にまかせとけば心配ないな。



 龍緑は先月末にようやく巣から出てきて仕事に復帰した。あいつの妻はやっとつわりが終わって、体重が増え始めたらしい。

後は何事もなく11月に出産できればいいが・・・妻はまだ三輪のことを心配している。会いたいんだろうけど・・・

妻を龍緑の巣に連れていくのは断固拒否だ!

龍緑も妊娠中の妻を巣から出して本家に連れてきたくはないだろうし。

 にしても龍緑が動けなかったせいでシリュウ石のストックが・・・たぶん10月ころからまた巣に籠るだろうしなぁ。

龍兎は再婚したばかりだから連日リュウレイ山とはいかねぇし、龍景は補佐官の仕事に加えて、まだ放心中の龍賢の仕事もやってるからこれ以上は無理だな。

 龍栄は休んでた間の注文が貯まってる。朱鳳と藍亀は煩くてかなわねぇ。龍栄の作ったシリュウ香以外は受け付けねぇとか言いやがって!

 あ~でも龍栄が本家にいるんだから、族長代行にして俺がリュウレイ山に行けばいいか。身体がなまって仕方ねぇから運動したいし、デスクワークは龍栄と竜湖に任せりゃ安心だし。

龍陽も連れて行くかな~あいつも1日くらい妻と離れても大丈夫だろう。



 鹿領の向こうの人族町は犬の使用人たちに探らせているが、まだ雄熊の匂いがついた人族は見つからない。

ゴリラ領西方の人族町は、龍海に任せたが、同じくまだワシの雛を売った人族の手がかりはないらしい。

 にしても今の人族町では他の獣人が行き交って商売してるらしいから、使用人たちを潜り込ませやすくていいな。

あの頃とは大違いだ。



~リュウレイ山~

「お疲れ様でございました。族長、龍陽様」御者台から降りた龍流が馬車の扉を開ける。

 7月のある日、龍希は息子を連れて龍流の馬車でリュウレイ山に来ていた。

「おー久々だな。」龍希は馬車から降りてのびをした。

初めてリュウレイ山に来た息子はキョロキョロ周りを見回している。

「なんかすずしいね。」息子が不思議そうな顔で問いかける。

「ああ、ここは紫竜領で一番高い山だからな。」

「ふ~ん。」

「ほら!こっちだ。まずは滝で身体を清めるからな。」龍希がそう言って歩き出すと息子は後をついてくる。

もう手は繋いでくれなくなった。龍希とは。



「飛べそうか?」

「たぶん。」

子竜の姿では自由自在に飛び回っていた息子も、まだ二足形の姿で宙に浮くのは慣れてない。龍希は、息子が恐る恐る空中を付いてくるのを滝の手前で待っていた。

『子どもの成長は早いなぁ。』



「つめたかったー」滝にうたれて全身ずぶ濡れの息子は不満そうだ。

「雷出してりゃすぐに熱くなる。」龍希はそう言って笑いながらシリュウ石の採取穴に息子を案内した。

「わ~においすご!」息子は穴を見ながら鼻をふんふんさせている。

「さ、今度は下まで降りるぞ!」龍希はそう言って穴のふちから飛び降りた。

「あ!まって!パパ!」3秒ほど遅れて息子も降りてきたが、ゆっくりだなぁ。

まあ、初めてだと怖いか。


「わ~ぜんぶシリュウ石?」息子はまたキョロキョロしている。

「ああ、この辺の山に雷落としてシリュウ石を採るんだ。あんまりでかいと運ぶの大変だし、溶かしにくいから拳大(こぶしだい)くらいまで砕け。」

「はーい。・・・あっちの小さい山がりゅうめいかなぁ?」

「あ・・・いや、どうだろうな。」

息子から、幼くして亡くなった甥の名前を聞いて龍希は胸が苦しくなった。

と、息子は小さな山に向かって両手を合わせて目をつむる。

「ん?何してるんだ?龍陽」


「もくとう」


「なんだそれ?」

「え?しんだ人へのおいのりだよ。ママがふゆにしてるでしょ。」

「そうなのか?芙蓉が冬に?」龍希は初耳だ。

「うん、ママのパパはふゆにころされたんだって。」

「そうなのか?なんでお前が知ってるんだ?」また初耳だ。

「ママがおしえてくれた。」

「ええ!?俺には教えてくれないのに。」龍希はショックをうけた。

「パパにはククとシュンがいるからじゃない。」

「・・・」


なんで息子が監視のことを知ってんだ?


「ねぇ。ママのママはどこにいるの?」

「え?パパも知らないぞ。ママはお前たちにも教えてないのか?」龍希は息子の質問に驚いた。

「うん。知らない。じゃあパパのママはどこ?」

「俺の?もう死んだぞ。十何年も前に。」

「なんで?」

「病気で。」

「パパのママはどのお山?」息子はそう言って周囲のシリュウ石の山を見る。

「パパのママはここには居ないよ。孔雀領の墓にいる。」

「くじゃく?なんで?」

「パパのママは孔雀の獣人だからな。」

「え?くじゃく?」息子は驚いている。

「パパはくじゃくなの?」

「パパは紫竜だよ。龍陽だって人じゃなくて紫竜だろ。」

「う?」息子は不思議そうに首をかしげる。

「ぼくは人じゃないの?」


「ああ、龍陽は紫竜だよ。俺の子だからな。」


「なんで?」

「え?なんでって、パパの子は皆紫竜になるんだ。」

「ぼくはママの子じゃないの?」

「パパとママの子だよ。」


「・・・だからママはないてたの?人の子じゃないから」


息子は悲しそうな顔になる。

「聞いてたのかよ。」龍希は困った。

「ママはもう元気になっただろう?人の子じゃなくてもお前たちを愛してるよ。」龍希はそう言って息子の頭を撫でる。


「・・・なんでママはパパとけっこんしたの?」


「え?」龍希は困った。

『そんな質問する?なんて誤魔化そうかな・・・』

「えーと・・・」龍希は考え込んでしまった。

「ママはすぐにこたえてくれたのに・・・」息子は呆れている。

「え?ママはなんて言ってたんだ?」

「パパにはないしょってやくそくしたの。」

「え?なんで?」

「ないしょ」

息子はそう言って断固として教えてくれなかった。


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