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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第6章 望郷編
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カヤの娘

 6月、紫竜本家にカラス族長が妹のカヤを連れて訪ねてきた。


「その節は大変お世話になりました。」


カヤはそう言って深々と龍希に頭を下げる。


「お元気になられて何よりです。」

龍希は営業スマイルで答えた。


「カヤの娘と思われるワシの雛を見つけましたので、ご報告とご相談に参った次第です。」


カラス族長が経緯を話し始めた。


「この春にゴリラ族のある商人が人族からワシの雛を買ったと聞いたのですが、ゴリラ商人によれば、その人族とはこれまで取引もなく、ワシの雛を手に入れた経緯も分からないと言うのです。

 それでその雛をカラス族が買い取ろうとゴリラ商人と交渉を続け、先週ようやく話がまとまりました。

 ただ、カヤは雛が孵化してすぐに引き離され、離れていた時間が長いために自分の娘か分からないようで・・・大変恐縮ですが、紫竜のお力をお借りできないかと。」


そう言ってカラス族長とカヤは再び頭を下げた。



「もちろんご協力致します。その雛を連れてきて下さい。」


龍希は営業スマイルのまま答えると、カラス族長の補佐官がワシの雛を連れてきた。

ワシの雛は龍希たち紫竜の匂いでぐったりしている。



「・・・わずかですが、雛から龍海の匂いがしますね。心当たりは?」



龍希はそう言って雛を見たが、雛は・・・

もう気絶している。


「おそらくこの雛で間違いなさそうですね。」


カラス族長もカヤもほっとした顔になった。



「それで、その人族の手がかりは?」


龍希はカラス族長に問いかける。


「西側からゴリラ領に入ったとのことで、おそらくその近くの人族町を経由しているはずですので、現在その町を捜索させております。人族の商人は男二人組で、車に乗っていたそうです。それと・・・その人族たちからは雄熊の匂いがしたらしいのです。」


「雄熊?」

龍希は眉をひそめる。


「はい。熊族長に確認しましたが、人族と組んでワシの雛の売買をする熊には心当たりがないと。熊族のルールでは例え他種族であっても雛の売買は違法でございますので。」


カラス族長の言葉に龍希も頷いた。



『その雄熊は、龍海の妻の兄かもしれないな。』



「現時点でお知らせできることはこれくらいでございます。続報が入り次第、またお知らせに参ります。」


「ああ、ありがとうございました。またお待ちしています。毎回、族長直々にお越しいただくのは申し訳ないので、次回からは使者で結構ですよ。」


「ありがとうございます。ではお言葉に甘えて、次回からは補佐官のサヤを使者に致します。」


カラス族長はそう言って気絶した雛を抱いている雌カラスを見ると、サヤというカラスは、無言で龍希に頭を下げた。


「分かりました。どうぞよろしく。」


龍希は営業スマイルのまま答えたけど、


『見分けつかね~』


3匹のカラスはそっくりなのだ。





「あ~マジで無理!」


紫竜本家から飛び立って5分ほどした頃、カヤは上空で叫んだ。


「情けないわねぇ。今日は族長1人だったからまだましよ。」


そう言ってアヤは苦笑いしたが、紫竜族長お披露目会の後、アヤは1週間も寝込んだのだ。



「竜の巣にあの族長よ!臭いヤバすぎ!2~3回意識飛びかけたわよ!」


「姉さんは病み上がりだからね。だから留守番してたらって言ったのに」


サヤも呆れている。


「嫌よ!娘を放って1人安全な本家で留守番なんて!にしてもなんで紫竜族長自ら?」


「人族が族長の妻にちょっかいかけてるからでしょ。」


アヤが答える。



「ならなんで族滅させないのかしら?カモメなんて一発アウトだったのに。」



「今後も人族の妻を補充したいんでしょ。龍海の息子のとこも妊娠中らしいし、ついでに人族から生まれた竜の子がどんな特性を持ってるかも分からないからねぇ。」


アヤの答えにサヤも頷いている。


「族長の今の妻はまだもちそうなの?」


「おそらく。族長お披露目会の時はとても死にかけには見えなかったわ。信じられないことに。」



「マジ?サヤなんて半年足らずで死にかけてたのに?」




「悪かったわね。匂いだけが原因じゃないわよ。」


「結果オーライよ。夫婦続けてたって殺されてたわ。短期間に竜の子を3匹も産ませるなんて正気の沙汰じゃない。」


アヤは吐き捨てるように言った。



「全くねぇ。熊族はよく嫁がせたわね。あの族長の右腕でしょ!?」


「龍海は50過ぎたから子を産ませるにしても1匹でしょ。熊はいい枠を持ってったわ。若い竜との縁談はどこもごめんでしょうね。カバも鴨もすぐに破綻したもの。」


「タヤは困ってたけど、鴨からも当分花嫁は出ないわね。侍女使って自殺なんて・・・鴨に帰る実家はなかったのかしら?」


「実家からは侍女を連れてきてなくて、妻が独自に雇った侍女だったらしいけど、考えられないわ!実家の侍女が居なくちゃ誰が花嫁を守るのよ!?」


サヤが珍しく怒っている。



「全くね。タヤを通じて鴨族長に助言したのよ。絶対に侍女を連れていけって。なのにこの結果。 

 紫竜は鴨族が用意した侍女じゃなかったことを理由に結納金の一部返しを受けなかったらしいけど、紫竜が金銭解決を拒否するのは怒ってる証拠だからねぇ。鴨族長はかなり窮地に立たされてるみたいね。」


「カバみたいにクーデターは起きないわよね!?あそこは異種族の妻も皆殺しにされたらしいじゃない?」


「止めてよ!縁起でもない。タヤに手を出したら鴨の奴らは容赦しないわ!」


アヤは険しい顔になる。


カバ族のクーデターはあまりにも乱暴で容赦がなかった。

カバ族は好戦的な種族ではあるものの頭は悪くないはずだ。

なのになぜ?

あんな老カバのクーデターが成功したのか謎だ。



「一度、タヤを呼びましょう。鴨の内情を把握しておきたいわ。」


アヤの言葉にカヤとサヤは頷いた。


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