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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第5章 白鳥編
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侵入獣人

~紫竜本家 地下室~

 龍希たちが大広間で族長の選定を行っている最中、紫竜本家地下室に侵入した獣人がいた。

「よお、イーロ。なんて様だ。」

「兄さん・・・すまない。よくここが分かったな。」

「ああ、人族のハッシンキのおかげだ。」

鎖を外されたワシの獣人、イーロはふらつきながら兄に支えられて、地下室の階段を登り始めた。

「あの母上も驚いていたぞ。まさかお前が紫竜なんかに捕まるとは。」

「紫竜なんぞに捕まるか!朱鳳だよ。」イーロは怒ってそう言い返すとゴホゴホと咳き込み、口の中の血を吐き出した。

「は?朱鳳?」兄は驚いた顔になる。

「ああ、数年前からこの本家にやたら出入りしてるんだ。雌の朱鳳が。そいつに空で捕まった。」

「そりゃ、どうしようもねぇな。」兄は肩をすくめると、廊下に誰もいないことを確認し、外の光で目をパチパチさせているイーロを使用人の通用口から屋外に連れ出した。

すぐ側に止まっている使用人用の馬車にイーロを乗せる。

業者台には白茶ぶち猫の獣人が乗っており、兄が馬車の扉を閉めるとすぐに馬車を出発させた。馬車は門をくぐって本家の敷地から出ていった。


「さてと、あと一仕事だ。」兄はそう呟くと1人、本家に戻った。



~紫竜本家 廊下~

「ふう。」会議を終えた龍光は1人、廊下を歩きながらため息をついた。

 無事に龍希様を族長にできたが、妻の問題が残っている。

シマヘビの妻を信じたいが・・・

龍光は客間の前にくると首を横にふって笑顔を作った。こんな顔を妻と幼い子どもたちに見せるわけにはいかない。

深呼吸して客間の扉を開ける。

「ん?」

シリュウ香の香りがする・・・なぜだ?今日は持ってきていないのに・・・

「り、龍久、龍墨!」2匹の子蛇の獣人が床に倒れている。龍光は慌てて息子たちに駆け寄った。

2匹ともすうすうと寝息をたてて寝ているだけだったが、

『布団も敷かずに床で?妻と侍女は何をしてるんだ?』

客間を見渡すが他に誰も居ない。

隣の部屋か?

龍光は寝室にしている隣の部屋を開けた。

「な・・・」

次の瞬間、龍光は腰をぬかして床に座り込んだ。

自分の見ているものが信じられない。

寝室の床には本家の侍女が倒れており、その奥のベッドには・・・胸にナイフが突き刺さった妻のクシャナの死体があった。



~龍光の客間~

「な・・・ん・・・」走って戻ってきた龍景に呼ばれて龍光の客間に駆けつけた龍希は、シマヘビの刺殺体を見て絶句していた。

「熊の殺害とそっくり。本家の侍女は気を失ってるだけ。この臭いは白猫の眠りガスね。クシャナは胸をナイフでひと突きにされて即死らしいわ。」竜湖は悔しそうに報告する。

「誰が?」龍希は信じられない。

「分からないの。一緒に居た龍久たちは龍光のシリュウ香を嗅いで眠ってた。シマヘビの侍女たちは本家に同行させてなかったし、本家の侍女はおそらく記憶がないでしょうね。」

「廊下の見張りは?」

「龍光の執事がしてたはずなんだけど・・・行方不明よ。」

「はあ?執事が?」


ドタドタと廊下を走ってくる音がする。この匂いは・・・

「族長!大変です!」竜紗がひどく狼狽えて客間に駆け込んできた。

「こんどはな・・・」

「地下室に捕らえていたワシが居ません!」

「はあ?」

「扉と鎖が壊され、何者かが連れ出したようです!」

「んなバカな!」

龍希は驚愕した。地下の拷問部屋は使用人たちは存在も知らなければ、入口も一族以外には分からないように隠してあるのに・・・

「すぐに探させなさい。一人じゃ歩くことも空を飛ぶこともできないはずよ!」竜湖が命じると竜紗はすぐに客間を出ていった。



~新族長執務室~

「くそ!」龍希は怒りのあまり拳で机を叩いた。

4日前、地下室から逃げ出したワシは見つからなかった。どうやら空ではなく陸路で本家の敷地外に出たようだが、協力獣人は不明だ。盗まれた馬車は紫竜領の端で見つかったが、発見時には誰も乗っていなかった。

 龍光のシマヘビ妻を殺した犯獣人も不明。目を覚ました本家の侍女は案の定、気を失う前の記憶がなくなっていた。



「族長。」暗い顔をした竜冠が執務室に入ってきた。

龍希は嫌な予感がした。

「り、龍墨が、た、たった今、い、息を引き取り、ううう~」竜冠は言い終わる前に泣き出した。

 突然母を失った龍墨の動揺ぶりはすさまじく、4日前から水も食べ物も何も食べずにとぐろを巻いて動かなかった。父の龍光、守番の竜色、竜冠、シュシュ医師が必死に慰め、なんとか龍墨に食べさせようとしていたのだが・・・卵生の子といえども母を失ったショックで衰弱死してしまった。

 兄の龍久は動揺はしているものの、幸いにも命に別状はない。ただ、龍光のシリュウ香のせいで侵入獣人の臭いを覚えていなかった。

龍光はシリュウ香を客間に持ってきていなかったらしいので、龍光のシリュウ香を持っているのは龍光担当の取引先だけだ。

 すぐに竜紗がシマヘビ族に問い合わせたのだが、驚くべき返答が返ってきた。

 シマヘビ妻の実家は、シマヘビ妻が殺されたのとほぼ同時刻に、火事によって建物が丸焼けになり中から黒こげの蛇の死体が出てきたそうだ。死体の数は、実家に住むシマヘビ妻の家族と使用人の数と一致した。

 シマヘビ妻がどうやって白鳥のココと連絡をとっていたのかは分からず仕舞いになってしまった。


 行方不明になっていた龍光のワシの執事は、客間のそばのトイレで見つかった。発見当時は気絶しており、身体には白猫の眠りガスの臭いが残っていた。

翌日、目を覚ました執事は案の定、本家に来て客間の前で見張りを始めた以降の記憶がないと言う。



 妻を殺され、今日息子の1人を失った龍光はしばらく使い物にならないだろう。龍久の警護と養育は守番の竜色に任せることにした。


 やっと白鳥の尻尾を掴めると思ったのに!

手がかりを失った上にまた一族の妻が本家で殺されるなんて!

それに大切な竜の子まで失って・・・一体どこのどいつがこんなことを!

龍希は悔しくて仕方ない。


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