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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第4章 世代交代編
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族長選定 後編

 族長選びの議論が始まってからすでに4時間、議論は平行線だ。

まあそうだろうな。俺のことが嫌いな龍栄派、龍算派は龍光を支持してるし。

「う~ん、龍希、龍光、お前たちの意見は?」疲れた顔の族長は龍希を見る。

「龍光を族長にして、俺は枇杷亭に帰ります。」

ようやく巡ってきた発言の機会だ。龍希は即答したのだが、

「龍光はどうだ?」

族長にスルーされた。

「・・・妻のことがあったばかりですので・・・龍希様、一族にはとんだご迷惑を。」龍光の様子がおかしい。

「は?妻がやったこととお前が族長になることは全く別だろ。」龍希は思わずつっこんだ。

 

 龍希が許せないのは妻子を殺そうとした奴らだ。無関係の龍光にはなんの恨みもない。龍希に対して悪いと思うのは龍光の勝手だが、それなら族長になってほしい。龍希のために。


「し、しかし、龍希様の奥様はあれほど一族のために尽くしておられるのに・・・私の妻は、とても・・・」

「どうせ白鳥との関与が分かったら殺すんだ。族長にふさわしい新しい妻を選べばいいだろ?」

「ちょっと、龍希!なーんであんたが龍光をフォローしてんのよ?妻から族長になるよう頼まれてないの?」竜湖が抗議してきた。

「芙蓉は族長の妻になりたくて俺と結婚した訳ではないので。それに族長選びに妻の意見は取り入れないルールでしょう?俺だってちゃんと線引きくらいはできるんですよ!」龍希はそう言って両腕を組んだ。

「まじ?あんなに執着してる妻のお願いでもダメなの?」竜湖はショックをうけた顔をしている。

龍希は無言で肯定した。



「他の後継候補のご意見は?」

「龍灯様は龍希様を支持されるそうです。」龍灯の世話役の竜色が悔しそうに報告した。

「では龍栄様は?」

う・・・嫌な予感がする。


「そうですな・・・私が族長に望むのは一族を一つにまとめて下さることです。今の議論を拝見しているとどちらが選ばれても、他方の派閥に遺恨が残るでしょう。一族は2つに割れたままです。」龍栄はそう言って首を横にふる。

「そ、それはそうですが・・・」予想外の答えに龍光派のみならず竜湖たちも困惑している。

 てっきり俺に押し付けようとすると思ってたのに。やっぱりこいつは頼りになる!

龍希は1人ほっとしていた。


 龍希には一族を一つにまとめるなんて無理だ。龍希のことを嫌ってる奴らの気持ちが変わることはない。だけど、龍光は別に龍希派に嫌われている訳じゃない。龍光が族長になれば自然と一族はまとまるはずだ。


「新族長のもとで一族が一つにまとまるには時間がかかると言うことです。ですが、今回のように一族の意見が割れている時でも族長には結論を出してもらわなければいけない。私はそれができる方のサポートをしたいと思っています。」

龍栄はそれだけ言うと満足そうな顔で黙ってしまった。

『いや、結局、お前はどっちを支持するんだよ!』

龍希は意味がわからないのに・・・なぜかうんうんと頷いている奴らが多い。


「では、私からご提案が。」先ほどとはうってかわって龍光がいつものはっきりした口調で言った。

皆が注目する。

「一族の多数決で族長を決めるのはいかがです?一票でも多い方が次の族長です。隣の小部屋に投票箱と赤白の紙を用意し、1人ずつ小部屋に入って投票します。誰がどちらに入れたのか分からない匿名制です。

龍希様を支持するなら赤、私なら白です。全員が投票を終えたら私と龍希様で数えます。本日不在の龍灯様たちのご意向は竜色が事前に確認していますので票を数えるときに加算する。どうでしょう?」

「おお!」あちこちから感心したような声があがる。

「いいんじゃないか。賛成だ。」龍希は安堵した。


 龍光は勝算のないことはしない奴だ。

この方法なら、この場で発言しづらい奴らも族長選びに参加できる。龍希派は声の大きいやつばかりだからな。



 こうして、龍希と龍光以外が序列順に小部屋に投票しに行った。意外と時間がかかるな。

ようやく最後の龍流が投票箱を持って小部屋から出てきた。

「では数えますか?赤が龍希様で、白が私です。」

龍光はそう言って箱の中身を机の上に出す。

「・・・待て、龍光。おかしいだろ。」

龍希は開いた口が塞がらない。

「なにか?」龍光は首をかしげるが、首をかしげたいのは龍希の方だ。

「嘘だろ?なんで?」

「数えなくてよろしいのですか?」


机の上の紙の山はどこからどう見ても・・・真っ赤だ。

白は・・・片手の数もなさそうだ。



「いやいや!なんでだよ!」龍希は龍光を睨んだが、

「私に怒らないで下さいませ。当然の結果ですよ。」

「はあ?お前は勝算のないことはしないだろうが!」

「はい、致しません。予想通りです。」龍光はそう言って肩をすくめる。

「はあ?意味が分からん!」

「あんたがこの期に及んでもバカなこと言ってるから龍栄と龍光が軌道修正したのよ。諦めなさい。多数決で決めることにあんたも同意したんだから。」竜湖は呆れた顔で見てきた。

「は?軌道修正?なにが?」

「嫌がってるあんたの目の前で、あんたを族長にって発言できない奴は多いの。特に竜紗を怯えさせた直後なんてね。だから龍栄があんたを支持すると発言した上で龍光が匿名投票を提案して、あんたを目の前にして萎縮してる奴らが自分の意見をあんたに届けられる方法をとったのよ。

分かった?

さ、会議を終わらせて下さい、族長。取引先への連絡に、新族長のお披露目会の準備にと、やることは沢山あるんですから。」

「え?本当に俺?」龍希はまだ信じられない。

「そうですよ。それとも一緒に票を数えましょうか?」龍栄がむかつく笑顔を向けてきた。

ぶん殴りたい。

「なんで!?俺は嫌ですよ!」



「ああ、そうだ。龍希の補佐官を決めておかねば。」

父上にまたスルーされた。

「龍賢様、龍海様に加えて若手が必要ですね。」

「私はもう第一線は退かせて頂きたい。歳ですし。」

「ならば龍賢は相談役だな。補佐官は、龍海、龍栄ともう2~3人ほしいな。」

「龍光様、龍算様、龍灯様では?」

「私は今、余裕がございません。幼い子2人に妻の問題もありますので。」

「私と龍灯は異存ありません。」

龍希を無視してどんどん話が進んでいく。

「あと1人くらいは・・・」

「・・・龍景にします。」龍希は観念した。

「え!?俺ですか?龍緑・・・殿ではなく?」

「ああ、お前の方がこき使い易い。」

「ええ!?そんな理由で?」

「龍景、補佐官手当があるよ。」

「やります!お任せ下さい!」龍算の一言で龍景は目を輝かせた。


「じゃあ、解散」

新族長は渋々宣言した。


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