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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第4章 世代交代編
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龍景

 5月、本家とスミレ亭の2ヶ所で守番が続いていた。

前回と同様、今のところはなんとかなっているが、秋か冬には龍灯の妻が出産予定だ。さすがに3ヶ所は・・・

悩んでいる龍希のもとに嬉しい報告あった。

 龍賢の息子の龍景(りゅうけい)がついにリュウカを見つけたそうだ。


~族長代行執務室~

「失礼いたします。族長代行。大変お待たせ致しました。ついに、リ、リュウカを・・・」龍景は言い終わる前に泣き出した。

龍景は今年25で龍兎と同い年だ。龍兎よりも力は強いのにリュウカを見つけられず焦っていたに違いない。

これで20代の男は皆成獣した。子どもの最年長は、今年5歳になる息子の龍陽だ。

「良かったな!明日から早速守番を頼む!頼りにしてるぞ!」龍希は笑顔で龍景の背中を叩いた。

「は、はい!ようやく、ようやく龍希様と一族のお役にたてます!」龍景は泣き笑いしている。

「お!そうだ。これから俺の息子に会うか?そろそろ守番たちが戻ってくるころだ。」

「え!よろしいのですか?是非!龍風様にお会いしたいです。」龍景は涙を拭って歓喜の声をあげた。

転変前の竜の子に会えるのは守番を担当する成獣の雄だけだから、龍景はまだ見たことがないのだ。

「はは。大袈裟だな。ここで待ってろ。息子を連れてくる。」

 3歳下の龍景とは雛の頃によく本家で一緒に遊んでいた。龍兎と龍緑は龍栄とつるんでいることが多かったが、龍景はなぜかいつも龍希にくっついていた。

うっとうしいとよく殴っていたけど、なんだかんだ言いながら一番長く一緒に過ごしたのは龍景だ。


 父が族長になってから、龍陽が生まれるまでの約20年間、誕生した竜の子は龍兎、龍景、龍緑、竜冠の4人だけ。龍陽が産まれてからは・・・・わずか5年で竜の子は7人で今年中に龍灯の子で8人になる。やはり父が族長になってからが異常だった。

 父はなぜ子が生まれないのかとしょっちゅう頭を抱えていたけど・・・本当の理由は分かっていたんだ。

分かってて何もしなかった。自分の過ちを認めることも責任をとることもせず、2人の妻からも嫌われて・・・



「わ!わあ!これが人族の子の姿ですか?龍希様が雛の頃と全然違う。」龍景は腕の中の龍風をまじまじと見ている。

 龍風は娘よりも小さく3キロちょいで産まれたが、この1ヶ月で体重が1キロ近く増えた。

「日に日に大きくなられますな。」今日の守番の龍算は嬉しそうに息子を覗き込む。

「龍風様も竜の子の匂いが強い。さすがは龍希様の息子ですな。」もう1人の守番の龍範はそう言って頷いている。

「そうだ、龍景。守番が落ち着いたら早く結婚しろよ!もう25だろう?」龍範の説教が始まった。

「え?は、はい。俺なんかにも縁談があれば・・・」

「あるに決まっとろう!あの龍兎にすらあったのだ。守番の竜湖様が動いて下さる。お前なら結納金は貯まっておろう?」

「あ、はい。でも・・・俺より先に龍緑では?」


『バっカ!お前!龍範の地雷だぞ!』


もう遅い・・・

「全くだ!お前からも言ってやってくれ!龍海はどんな教育をしてきたんだ!一族の恥さらしめ!」

「え、ええ!」

龍範の激怒っぷりに龍景はドン引きしている。

龍算は聞きなれているのか一歩下がって聞いているふりをしている。

龍希は龍景から息子を受け取って避難しようとしたが・・・

「どこに行かれるのです?族長代行!あなた様も3児の父になられたのです!龍緑にガツンと言ってやってください!あなた様ですから、24の時にはお子様がいらっしゃったのに!龍緑は結婚すらしていないとは!」

「あ、ああ。龍緑もなかなか頑固でな~」龍希は逃げられなかった。


 龍緑なあ~

竜夢にああ言われたし、妻は同族の毒見役がそばにいると機嫌がいいし。あいつはあれっきり人族に興味もないようだし・・・もう取引先の雌と適当にくっついてくれりゃいいのに・・・他竜の結婚なんてどーでもいいが、龍範は煩くてかなわねぇ


「竜夢様がご担当なのですから、龍緑もきっとこの守番が終われば・・・ねぇ、龍希様!」龍景は困った顔で龍希に助けを求めてきた。

「そうそう!あの口うるせえ竜夢が説教してんだ。龍緑だってそろそろ観念するさ!な!」

「女の説教などあてになりません!あの竜湖様ですらあなた様への説教は諦めて、騙し討ちで結婚させたではありませんか!」

「あ!てめぇ、竜湖の嘘を知ってて黙ってたな!」

族長になるかは子を授ける竜神が決めるから、お前みたいな問題児は心配するなと竜湖に騙されて龍希は前妻と結婚したのだ。

「あんな嘘に騙される方が悪いのです!ちゃんと勉強しておられれば今の族長決めのルールが200年ほど前の一族会議で決まったことで竜神様とは無関係だと分かったでしょうに!」

「え?龍希様、あの嘘を本気で信じてたんですか?」龍景は呆れた顔で龍希を見てきた。

「いや!お前も嘘だと分かってたなら教えろよ!」

「ええ!いや、どう考えてもおかしいでしょう。竜神様が族長を決めて下さるなら、神殿の巫女に聞けば済むから息子2人なんてルール要らないじゃないですか?」

「あ!そっか・・・」

「ええ~しっかりしてくださいよ!奥様はあんなに賢い方なのに」

「まあまあ龍景。龍希様は自分に足りないものを分かった上で今の奥様をお選びになったんだ。君も妻選びの参考にしなよ。」

龍算は相変わらず俺をバカ扱いしやがる。


「でも結婚前には妻が賢いかどうかなんて知りようがないのでは?」

「ん?そんなの2人で話してみればなんとなく分かるだろ。」

「え?結婚前に2人で話をするなんて、そんな機会ないですよ。」

「そうか?」

「・・・龍希様はどうやって2人で話す機会をお作りに?」

「え?」

どうやってって・・・人族のふりして金で買った、とは言えねぇ。

「あ~俺のことは参考にすんな。」

「・・・」龍景はまた呆れた顔で見てきた。

「人族って結婚前の娘をそんな自由にさせてるものなのですか?」

「え?あ~俺の妻は親を亡くして1人で働いてたからな。」

「そういえば・・・人族の薬屋にいらしたんでしたか?なんで龍希様はそんなところへ?」

「え?あ~えーと、興味本位」

「ええ?」龍景は怪訝な顔をしている。

「確かに酒屋なら分かりますがなんで薬屋に?」龍算までのっかってきた。

「・・・知らないのか?人族は酒も薬にしてんだ。」

「え!そうなのですか?」

「ああ、面白いだろう。」

これは嘘じゃない。人族の飲み屋でおっさんがそう言ってた。


「さてと。俺はそろそろ息子を妻のとこに連れてくよ。そろそろ授乳の時間だ。」

これ以上詮索されてはたまらない。

龍希は今度こそ逃げ出した。


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