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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第4章 世代交代編
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変な臭い

「族長代行!姉ちゃんに何があったのでございますか?」


龍希がシュグの医務室に戻ると、疾風はシュグに胸倉を掴まれて詰問されていた。


「妻に聞いてきたから疾風を離してくれ。疾風、客間の警護に戻れ。」


シュグから解放された疾風は走って医務室を出ていった。


龍希は先ほど妻子から聞いた話をした。



「変な臭い?なんでしょうか?」

龍灯はシュンの匂いを嗅ぎながら首をかしげる。


「いつもの香水と違う匂いだが・・・変な臭いはしないな。」


龍希も嗅ぎながら頭をかいた。


「香水・・・同じ匂いですね。熊の侍女と。」


龍灯の言葉にシュグが驚く。


「ええ!?そんなはずはありません。侍女の香水は奥様ごとに違うはずです!」


「いや、しかし同じだぞ。」

龍希は熊とシュンを順に嗅いで龍灯に同意した。


「若様たちはこの熊の香水を変な臭いと仰ったのでは?嗅ぎなれた香水でないから警戒なさったのかも。」

「かもしれないな。だが、そうするとシュンが倒れた時に熊の侍女が居たのか?」


「もしそうならおかしいですね。枇杷亭の奥様がいらっしゃる浴室に熊の侍女が近づく理由などないはずです。」


龍灯は険しい顔になる。

「シュンが起きればはっきりすることだ。熊の侍女にも起きたら話を聞く必要がある。あと、龍緑の庭師にも一応な。」

「龍緑は明日また庭師を連れて本家にくる予定です。」

「よし!シュグ、2人を頼んだぞ。明日の朝また来る。」

「畏まりました。」

 龍希はこの晩は妻子の待つ客間に戻った。



 翌朝、妻子と朝食を済ませた龍希は息子を連れてシュグの医務室に来た。

今年4歳になる息子は機嫌のいい時には妻と離れても転変しなくなった。

まだ意識が戻らない熊の侍女とシュンを息子に嗅がせてみたが・・・


「へんなにおいしなーい。シュンのにおい。」


昨日、龍希が感じた香水の匂いは熊からもシュンからももうしなかった。

シュグがもらってきた熊の侍女の香水は、昨日龍希が嗅いだ香水とは違う匂いだった。息子も違うと言う。



昼前に龍緑がワシの庭師を連れて来た。


「睡蓮亭の庭師をしております(とう)と申します。」


若いワシの獣人は深々と龍希にお辞儀する。

「昨日、熊の侍女を見つけた時のことを族長代行に説明してくれ。」


「はい。昨日、若様を呼びに本家に降り立ったのはすっかり日も落ちて暗くなった時で、間違えて中庭に着地してしまいまして。

恥ずかしながらどこから建物に入れるのか分からず、中庭の中をうろうろしている時に布を踏んだ感触があり、誰かが倒れているのが分かりました。ただなにぶん暗くてよく見えず、明かりを探すために本家に入り、廊下で出会った使用人に助けを求めました。」


「・・・」

参考になりそうな話はなかった。



扉をノックする音がして、妻の毒見役が入ってきた。


「失礼します。・・・シュグ医師がお呼びです。熊の侍女が目覚ましたと・・・」


「あれ!?・・・そうそう三輪さんだ。」


龍緑が笑顔を向けると毒見役は顔を赤くして俯いた。


『ふーん』


龍希と同じくワシも興味深そうに2人を見ている。

本家の侍女だけでなくタタとタートも、妻のいない龍緑を嫌悪しているのに・・・こいつも鼻が利かないからだろうか?

しかし、さすがに龍緑が人族じゃないことは分かっているはずだが・・・


まあ妻の安全が確保できるならなんでもいいや。


あーでも勝手に龍緑に売ったらさすがに妻は怒るかなあ?

こんなことで妻に嫌われるのはごめんだ・・・竜湖に相談してみるか。

守番は竜夢だけどあいつは俺のこと嫌いだし・・・



「龍・・・族長代行?」

龍緑が怪訝な顔をして龍希を呼んだ。

「ん?」

「医務室に向かわれないのですか?」


「あ、ああ。行ってくる。龍緑、ご苦労だった。庭師は戻して構わない。お前も・・・あーやっぱり一緒に来てくれ。熊の侍女には俺よりお前から事情を聞いた方が良さそうだ。」


「え?はい。お供しますが・・・熊は母とは仲が良かったですが、俺はどうだか分かりませんよ。」


龍緑は困った顔をして肩をすくめる。


「俺よりはましだろ。」

龍希は龍緑を連れて医務室に向かった。



~シュグの医務室~

目を覚ました熊の侍女に龍緑が事情を聞いたが、気を失う前のことは何も覚えてないらしい。中庭に来たことすら覚えてないと言う。


まあ、侍女は終始、龍希に嫌悪感と警戒心をむき出しにしていたのでどこまで本当のことを話しているかは分からないが・・・

構わない。


どうせ何かしら対応したというパフォーマンスだ。


シュンはまだ目を覚まさない。妻を安心させるためにこっちは何としても解決しなければ!


と龍希は意気込んでいたのだが、夕方、ようやく目を覚ましたシュンは、何も覚えてないと言う。

妻たちについて風呂に行ったことすら覚えてないというからどうしようもなかった。

ただ、シュンは元気そうで、心配するシュグを置いてとっとと妻の元に戻って行った。


原因不明のままだが、これ以上は打つ手がない。

明日は朝から竜音の葬儀なので、あとは族長に引き継ごう。

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