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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第4章 世代交代編
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朱鳳の報復

 会議の後、龍希は龍緑を応接室に呼びだした。


「失礼いたします。龍希様。まさか説教ですか?」


龍緑は何やら楽しそうに笑いながら入っていた。


「ちげえよ。まあ座れ。・・・疾風。」


龍希の後ろに控えていた疾風は、龍緑が龍希の向かいに座ると、龍緑の机の前に木の箱を置いた。


「なんですか?」


「うちの使用人が世話になったらしいな。その礼だ。」


「使用人?世話?」

龍緑は首をかしげている。



「3月に本家で熊のとこに迷い込んだ馬鹿だ。」



「あ!あ~人族の彼女ですか。そんな世話なんてほどでは・・・」


「いいから受け取れ。熊の侍女に見つかりそうなとこを助けてくれたんだろ?」


 タタから報告を受けたときには肝が冷えた。妻の毒見役が熊の部屋あたりをうろついていたなど知れたら、俺だけでなく妻まで熊にどんな言いがかりをつけられたか・・・考えたくもない。



「いや~あれはなかなかスリリングで楽しかったですよ。」


龍緑は思い出し笑いをしている。


「お前・・・そんな性格だったか?」

龍希は少々面喰ってしまった。


龍緑はもっと生真面目で大人しい奴だと思っていた・・・



「口うるさい両親が居なくなった反動ですかね。」龍緑は笑顔のまま肩をすくめる。


「俺は笑いごとじゃねえよ。たく!妻のお気に入りじゃなければ殺しているところだ!」


龍希は妻の毒見役を信用していない。



「え!?殺すくらいなら譲ってくださいませんか?」



「は?」

龍希は驚いて龍緑を見る。


「人族の毒見役なんて何に使うんだ?」


「いや、毒見役がほしいわけではないんですけど・・・」


「じゃあ食うのか?」


ワニ族は戦いで殺した獣人を食べることで有名だが・・・ワニの息子のこいつも?



「俺は獣人は食べませんよ!彼女は俺に対しても悪意を感じませんでしたから。もったいないと思ったんですよ。」



「ああ、悪意はな。だが俺は信用してない。人族なんて。」


「・・・」

龍緑は困ったような顔になる。


「俺が使用人にしたからって信用されちゃ困る。妻のお気に入りだから置いてやってるだけだ。」


「悪意を感じないなら信用に値すると思いますが・・・」


「それでやられたのが龍算だぞ!」


「いや、まあ・・・まさか鹿族への復讐のために龍算様を利用するなんて。恐いですね。実家のある妻は。」

龍緑は肩をすくめる。



「・・・お前も実家がない妻を探してんのか?」



「も?」

龍緑は首をかしげる。



「あ、いや・・・まさかお前・・・手つけた?」


「はあ!?そんなわけないでしょう!龍希様の使用人にそんなことしませんよ!」


「冗談だよ。そんな怒るなよ。」


「全くもう!」


「まあ、妻が要らないと言ったらな。」



『こいつはふざけているのか。マジなのか・・・分からん。』


だが、龍緑には早く結婚してもらいたい。龍希の妻の安全のために!

それに利用できるなら・・・ありか?



「それにしても結構なお酒をありがとうございます。てっきりワシ族の件かと思いました。」


龍緑は木の箱を開けて中の酒を嬉しそうに見ている。 

まあ当然だ。龍緑好みの酒を取り寄せるのに一月半もかかったのだ。



「ああ、そういえばワシ族の件は何か進展があったか?」


 ワシ族は龍緑の取引担当だが、昨年、人族がワシ領に侵攻してきたとの報告があった。

妻のことがあるので龍希はもう何年も前から人族の動向を追っている。ついでに、ワシ領の隣は孔雀領だ。



「はい。ついに朱鳳が動いたそうです。」



「なに?」

龍希は驚いた。


 確かにワシ族は朱鳳の眷属だったはずだが、朱鳳はこれまで眷属の鳥族が人族を含めた他族と争っていても後方支援に徹していると聞いていた。



「そんなにワシ族はやばかったのか?」


「いえ。少なくともシリュウ香取引に何も支障は出ていませんでした。ですが、なんと朱鳳は若い連中を何匹か投入して、あっという間にワシ領から人族を追い出したらしいです。」


龍緑も真面目な顔になっている。



『朱鳳の前では人族の武器なんて役に立たないだろうな。』



「ふ~ん。慎重派の朱鳳もようやく人族への報復に出たのかな?」


朱鳳の代替わりの儀で人族が龍希たちにけんかを売ってきたのは何年も前だが・・・紫竜よりも寿命の長い鳥たちとは時間感覚が違うのだ。


「そうかもしれません。俺の庭師はワシ族なのでこの知らせに大喜びでした。」


「ん?そうなのか?ワシが執事じゃなくて庭師とは珍しいな。」


父の執事の一人はワシ族の段だ。ほかにもワシの執事をもつ男は多い。



「ええ。母が連れてきた使用人ですので、執事には・・・」


「ああ。なるほどな。」


「今思えば、母はそのことも不満そうでしたね。俺にも父にも・・・」


龍海は妻に執着していたが、線引きはちゃんとしていたようだ。さすがだな。

 


「ん?」

廊下から誰かが走ってくる音がする・・・この匂いは


「失礼します!」


龍兎がノックもせずに勢いよく応接室の扉を開けて入ってきた。


「龍兎殿!龍希様の前ですよ!」

龍緑は眉をひそめて注意するが、


「あ・・・すみません・・・ぜえぜえ。竜音(りゅうおん)様が!・・・」


龍兎の報告に龍希と龍緑は真っ青になった。

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