龍光の恨み
4月、龍光の息子、龍久が転変したそうだ。
6ヶ月か・・・卵生は胎生よりも早いと聞いていたが、俺の子たちよりも遅いな。
でも、竜縁が転変したのは10ヶ月だっけ?龍栄の息子は年内には転変するかな?
なんにせよこれで守番が一ヶ所になったので、もう少し休みが取れそうだ。
にしてももう少し早ければ桜の宿に妻を連れていけたのになぁ・・・まあ来年のお楽しみだな。
龍久の転変祝いは・・・龍栄の息子と一緒かな?
龍光は後継候補でもないし・・・
~紫竜本家~
5月、一族会議が開かれた。転変前の子がいる龍栄は当然欠席だ。守番の竜染、龍雲、龍海もいない。
予想外のことになった。
龍算に代わり龍光を後継候補にするというのだ。
龍算は今年で36、龍光は39だが・・・龍算はまだ再婚の目途が立っていない。
一緒に守番をしていた感じだと力はやや龍算の方が強い気がするが・・・龍算は相変わらず元気がないからなあ・・・まあ龍算がいいと言うなら俺が反対することじゃないや。
ただ・・・めんどくせえ。
龍光はかつては後継候補だったが、竜冠以降子ができず、妻と死別して半年後に今のシマヘビ族の妻を迎えた。
だが、その直後に俺が18歳で成獣になり、俺と交代する形で後継候補から外されたのだ。
俺は後継候補なんてなりたくもなかったのに・・・まあ俺とあいつじゃあ力の強さが違い過ぎるから仕方なかった。
のだが・・・このことで俺はずっと龍光に恨まれている。
俺の婚前交渉が分かった時には、龍光が一番うるさかったなあ。
俺を後継候補から外せと声高に主張していたけど、龍栄のやつ・・・あいつが賛同しなかったから、結局俺はおとがめなしになった。
あの時、後継候補から外されていればこんな面倒事ばかりに追われずに済んだのに・・・やっぱり嫌いだ。
それにしても龍光は後継候補最年長だし、子どももおれと同じ数になったんだからあいつが候補筆頭になればいいのに・・・なんで誰もそう提案してくれないんだよ!?
「じゃあ次の議題だ。竜冠」
族長の言葉に竜冠が立ち上がる。
「はい。先月、成獣いたしました。」
竜冠の言葉に皆、喜んでいる。
女は産卵できる身体になったら成獣と認められるのだ。
竜冠は今年で17だったか?
「この冬に白鳥族に嫁ぐことになりそうです。龍希様の次のお子様の守番はお任せくださいね。」
竜冠はにっこりと龍希に微笑みかけるが、
「まだできてねえよ。」
『というかこいつも俺のこと嫌いじゃなかったか?なんで龍栄でも、父親の龍光でもなくて俺?』
龍希は訳がわからない。
「しかし、白鳥ですか?」
怪訝な顔をしているのは龍賢だけではない。
「龍栄の元妻の件もあるけど、依然として主要取引先には変わりないからね。竜冠に内部から見張っておいてもらうことにしたの。」竜湖が答える。
「お相手は?」
「族長のいとこよ。あそこは元妻の離婚の責任とって当時の族長は辞任して、血縁関係のない今の族長が就任したわ。ま、だからといって白鳥族が紫竜にまた害をなそうとしない保証はないからね。」
「元妻は今は?」
「さあ?離婚成立後に白鳥族を追放されたらしいわ。白鳥族にしては随分厳しい処分だった。まあ、だからって許せる話じゃないけど。」
竜湖の言葉に頷いたのは龍希だけではなかった。
白鳥の元妻がいなければ、龍栄は今ごろ族長になっていたかもしれないのだ。
「白鳥の話はもういい。次だ。龍兎の件は・・・」
「私から。」龍兎の守番、竜波が立ち上がった。
「龍兎殿は、9月末に鴨族から奥様を迎えられることが決まりました。鴨族との取引はここ数年、拡大してまいりましたので。」
「おお!良かったな、龍兎。もう自分の巣にいるんだったか?」
「はい。と言っても父の別宅を借りている形ではございますが・・・」
「ああ、ススキ亭か。」
「鴨族の取引担当は9月より、龍灯から龍兎に変更する。」族長が宣言した。
ふーん。龍兎は鴨の妻か。鴨は取引が増えているとはいえ、主要取引先どころか真ん中よりも下の取引先だ。肝心のシリュウ香の取引量が少ないからなぁ。だけどまあ、龍兎の稼ぎはそこそこだし、結婚相手としては妥当かな・・・使用人じゃないだけましだ。
それにススキ亭は小さいらしいからなあ。小さい獣人の方が都合が良かったんだろうな。
「いとこの龍緑はどうなのだ?もう成獣になって2年はたっただろう?」龍光の質問に頷くものは多い。
「あはは・・・私はまだ・・・」龍緑は苦笑いしている。
「いくつも縁談をお持ちしているのですが、結婚の話になると逃げてしまわれるのです。」
龍緑の守番である竜夢がため息をつく。
意外だなぁ。真面目なあいつはとっとと結婚すると思ってたのに。
力があるから、とうに結納金を支払える貯金はあるはずだ。
父親の龍海は・・・今は息子の縁談を世話する余裕はないんだろうなぁ。
竜夢はワニの件もちゃんと動いているのかな?
「龍緑。早く身をかためて龍海を安心させてやれ。成獣したのに何年も結婚しないなど、みっともないにもほどがあるぞ。」龍光の説教が始まったが・・・俺への当てつけだろうな。
あいつは俺の時も煩かった。
「父は今、私のことなど頭にありませんよ。それに結婚を急ぐよりも相手を吟味する方が重要だと龍希様が証明なさったではありませんか。」
龍緑は龍希に作り笑顔をむけるが、
「俺の名前を出すな。」
『龍光がすげえ顔で睨んできたじゃねえかよ!』
「ほお。ならばお前は吟味してる最中という訳か?」
龍光は龍希から龍緑に視線を戻した。
「はい。最近は取引先の令嬢なら安心という訳でもなさそうですし。」
「・・・まさかお前も取引先以外から妻を連れて来ようなどと考えているのではあるまいな?」
「そこまでは・・・それに私はちゃんと結婚の手順は守りますのでご安心を。」
龍緑は営業スマイルを崩さない。
「龍緑は頼もしくなったわねぇ。もっと龍希に言ってやりなさい。」
竜湖が楽しそうにそう言うと、会場の方々から笑いがおこった。
龍希は1人ふてくされた。




