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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第3章 後継候補編
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夜明けの子

2月、ようやく龍栄に息子が産まれた!

本家で龍兎の特訓をしていた龍希は知らせを聞いて、族長、龍兎とともに鶯亭に向かった。


「龍兎も連れて行くのか?」


「ええ。一昨日やっと音の出ない雷を出せるようになってきたので後は実践あるのみです。」


龍希は龍兎の頭をぽんぽんと叩く。


「まだ成功率は半々ですが・・・僕なんかが役にたちますか?」

龍兎は不安そうだ。


「大丈夫だ。雷出せなきゃトリどもにつつかれて鱗が裂けるからな。龍緑みたいに。」


龍希は笑顔で親指を立てる。


「え!ちょっ龍希様~」

「音は出すなよ。龍栄が激怒して殴られるだけじゃ済まんぞ。」

族長が釘をさす。


「そんな!やっぱり僕には無理ですよ!」


「もう1人の守番は龍灯を呼んだ。しっかりやれよ。」

族長が龍兎の肩を叩く。


「え!龍灯にい様ですか?良かった!」


龍兎は途端に笑顔になった。



~鶯亭~

20分ほどで馬車は鶯亭に着き、族長は到着するなり走って邸内に入っていった。


「ほら、行くぞ。」


龍希は後ろをとろとろ歩いている龍兎に声をかける。

「ここが鶯亭ですか。」


龍兎はキョロキョロと屋敷や庭を見ている。

初めて来た龍栄の住まいに興味津々なのだろうが・・・


「後でいくらでも見れる。それより龍栄殿を待たせるな!」


龍希に怒鳴られて龍兎は慌てて走ってきた。



「・・・」

前回と同様、龍栄と族長は小さな白猫を見て、大粒の涙をぼろぼろと流している。


龍希にとっても待ち望んだ龍栄の息子だが・・・


『俺の息子の方が可愛いな。匂いも強いし。』


何故だろう?

どうしても龍陽と比べてしまう。



10分ほど遅れて龍灯がやって来たので、龍栄と族長は馬車で神殿に向かった。


「龍兎は音の出ない雷が出せるようになったのか?」

龍栄が出発し、客間に3人になったタイミングで龍灯は異母弟に尋ねる。


「はい!一昨日ようやく。龍希様の特訓のお陰です!先月から守番の合間に、何度も本家で特訓して下さったのです。」


「ええ!?龍希様に?申し訳ありません。お忙しいのに弟のために。このお礼は私から・・・」


「成獣したんだから龍兎に用意させる。気にすんな。お前は妊娠中の妻のそばに居てやれ!」


「・・・ありがとうございます。何だかんだ龍希は面倒見がよいですよね。一生ついていきます!」


龍灯は感激しているが・・・

「いや、お前も後継候補だろ?」

龍希は呆れた。


「まあそうですが、私の妻の出産は来年の秋か冬ですし、龍希様の奥様がご懐妊されて出産される方がきっとはや・・・」


龍灯は顔色を変えて窓の外を睨む。

龍希と龍兎も険しい顔になった。


「来たな。」


何度も嗅いだ不愉快なトリの臭いだ。



~竜神の神殿~

「おめでとうございます。とうさま・・・じゃないりゅう栄さま、族長。」


竜縁は紫髪をツインテールにし、真っ白の巫女服を着て、神殿の最奥にある祭壇の前で待っていた。


「名前はもう決まっております。若さまですね。雪と氷でおおわれたこの月に、夜明けとともに母のニャアさまからお生まれになった子の名は、りゅう明です。

おす竜を示すりゅうに、夜明けを意味する明の字。大切に守り、お育てください。りゅう明がその名のとおり一族に明るい未来をもたらす日まで。」


竜縁は時々口ごもりながらも全て言い終わると祭壇の上にあるオレンジ色の果物を手に取って龍栄に渡した。


「これはみかんかい?」


龍栄は愛娘に優しく問いかける。

「いいえ。いよかんです。こちらをかあさまと一しょにお召し上がりください。子はおちちから実の力をえます。」

竜縁は笑顔で答えた。


「ありがとう。竜縁も一緒に食べような。こんなに立派に巫女の務めを・・・」


龍栄は愛娘の成長を目の当たりにしてまた泣いてしまった。


「もう!とうさま、しっかりして。さあ巣にもどりますよ!かあさまと弟がまってます!」


しっかりものの娘はそう言うと龍栄の袖を引っ張って馬車に向かう。

その後ろから同じく孫娘の成長に感動して涙を流す族長がついてきた。



~鶯亭~

「やった!殺れた!」


龍兎は両手をあげて歓声をあげた。


「おっし!次はあっちを頼む。」


龍希は龍兎の隣で大きな雷を2つ落とすと左手で指差す。


「はい!・・・おりゃ!」


龍兎の無音の雷がトリたちを直撃した。雷は小さいが、こいつはコントロール力があるから外さない。


「やるじゃないか!龍兎!でもまだ気を抜くなよ。やっと半分ほどだ。」


特大の雷を落として汗を拭いながら龍灯が笑顔で話しかける。


「はい!龍灯にい様!」


雪が降る中、30分以上庭にいるが、雷を出し続けているせいで身体が暑い。3人とも上着を脱いで袖を捲っていた。



「ふー終わったな。やっぱりお前は実践向きだ。」龍希はわしゃわしゃと龍兎の頭を撫でた。


「龍希様のお陰でございます!ああ、僕なんかが守番のお役にたてるなんて。まだ信じられません。」


龍兎はべそをかいている。


「何を言ってる。これなら明日からは守番として働けるぞ。族長にもちゃんと伝えとくからな。」


龍灯も嬉しそうだ。

「龍灯にい様!ありがとうございます。」

龍兎は満面の笑みで龍灯を見ている。



この年の離れた異母兄弟は随分仲がいいなぁ・・・龍灯の母の死後に龍兎の母が嫁いだからか?


まあいいや。それより腹減った。

鶯亭の使用人が食事を用意してくれてるはずだ。龍栄のとこはウイスキーが旨いんだよな。

龍希はご機嫌で鶯亭の玄関に向かった。

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