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紫竜の花嫁  作者: 秋桜
第3章 後継候補編
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ソフトクリーム

 11月中旬、芙蓉は夫と子どもたちと牛族の牧場に来ていた。


 この世界では、牛の獣人と家畜の牛は別の生き物だ。獣人は言葉を操り、服を着て経済活動を営んでいるが、家畜は喋れず、二足歩行すらできない。



 牛領は枇杷亭よりも南にあるからか昼間はコートがなくても大丈夫なほど暖かい。

ここに来たのはとれたての牛乳とソフトクリームを食べるためだ。

芙蓉は息子たちに牛乳を飲ませたいのだが、2人とも牛乳が嫌いなので困って三輪に相談したところ、三輪は牧場で新鮮な牛乳を飲んで牛乳嫌いがなおった子どものことを教えてくれたのだ。

 夫は守番で忙しそうなので頼むのは気がひけたが、芙蓉の頼みをあっさり承諾してくれ、日帰りできる牧場を探して連れてきてくれた。


「お待たせしました。午前中に絞ったばかりのミルクと、こちらはソフトクリームです。」

芙蓉たちが牧場そばの木製ベンチに座って待っていたら、ピンクのエプロンをした牛の獣人が持ってきてくれた。

ミルクはよく冷えた金属のコップに入っており、ソフトクリームはコーンの上に巻かれている。

 子どもたちは牛乳よりも初めて見るソフトクリームに興味津々だ。

「2人とも落とさないように気をつけてね。」

芙蓉が両手に持ったソフトクリームを差し出すと、子どもたちはふんふんと匂いを嗅いだあと、息子は自分でコーンを持って食べ始めた。

娘はその様子をじっと見ている。

「竜琴も食べない?美味しいわよ。」芙蓉は牛の獣人からスプーンをもらうと、ソフトクリームを掬って一口食べて見せた。

「たべゆ」

娘はそう言って口を開けたので、芙蓉はスプーンでソフトクリームを掬って娘の口にいれた。

「ちべたい~」

冷たさに驚いた娘は顔をしかめたが、味は気に入ったようで息子と同じように自分でコーンを持って食べ始めた。


「ふーん。旨いなこれ。牛の乳からできてるなんて信じられない。」夫も初めてソフトクリームを食べたらしい。もう食べ終わりそうだ。

「ふふ。あなたも気に入って下さったならよかったです。」芙蓉はシュンから受け取ったソフトクリームを食べ始めた。


 子どもたちはコーンまで完食し、喉が渇いたのか牛乳の匂いをふんふんと嗅いでいる。

息子が舌を出して牛乳をぺろりと舐めた後、驚いた顔をして一気に飲んでしまった。

それを見ていた娘も牛乳をぺろりと舐めて、それからゆっくり飲んだ。

三輪の作戦は大成功だ。



 この後は、のんびり牧場の牛を見て回りたかったのだが・・・紫竜の匂いを嫌って牛たちは牧場の隅に逃げて固まってしまっている。

獣人だけでなく動物にも嫌われる匂いらしい。

 仕方がないので、牛乳とチーズを買って帰ることにした。牧場の主は雄なので芙蓉に近づくことを夫が許さず、ピンクのエプロンをした雌牛の獣人があれこれ商品を売り込んできた。

だけど、チーズの種類が多すぎて・・・次々カタカナの名前を言われても芙蓉にはどれがどれだか分からない。

夫は・・・いつものごとく選ぶ素振りすら見せない。芙蓉にお任せだ。

 延さんに来てもらえばよかったのだが、芙蓉と同じ馬車に乗ることをまあ、夫が許すわけがない。

 結局、ピンクエプロンがオススメするチーズ5つを買って帰ることにした。牛乳はよく冷えた金属製の蓋付き瓶に入れてもらった。



 買い物の間、牧場を走り回っていた子どもたちは帰りの馬車に乗るなりすやすやと眠ってしまった。

「あなた。ありがとうございました。」

「ん?芙蓉が喜んでくれたならよかった。それに旨かったな。」

「はい。今までで一番美味しい牛乳とソフトクリームでした。人の牧場と違って放し飼いだからですかね?」

「ハナシガイって何だ?」

「私の故郷の牧場では牛たちは狭い牛舎に入れられて、食べ物も運動も管理されてましたから。あんな風に牧場の中で牛たちに自由にさせることを放し飼いと言うんです。」

「なんで人族はそんなことするんだ?」

「狭い場所でできるだけ沢山の牛を育てるため・・・ですかね?」

「そんな環境で子どもなんてできるのか?」

「子どもも管理してるらしいです。乳牛はほとんど人工授精のはずです。」

「ジンコウジュセイって何だ?」

「えーと、まあ・・・なんといいますか・・・夜伽をせずに子どもを作ることです。」

「はあ?」

夫は驚いている。まあそうだろう。

「え?どうやって子どもを作るんだ?」

「えっと、私も実際に見たことはないのですが、確か・・・雄から精液を採取して、注射器で雌に入れるらしいです。人が・・・」

「なんだそれ・・・ん?」

夫は険しい顔になった。

「あ、ごめんなさい。こんなお話・・・」

「芙蓉!」

夫が突然、両手で芙蓉の両肩を掴んだので芙蓉はびっくりした。

「そのジンコウジュセイなら雄と会わなくても子ができるのか?」

「え?ええ、そうです。」

夫の勢いに芙蓉は面食らってしまった。

『え?そんなに食いつく話?』

芙蓉は意味がわからない。



 その夜、子どもたちが寝た後で夫から衝撃的な話を聞かされた。

「え?ソラ様がそんな・・・」

花嫁の替玉?

紅葉の山が故郷なのは本当で、キノコは嘘?

子どもが生まれたのにトリが来ない?


芙蓉は頭の理解が追い付かない。

それに私が聞いていい話なの?

「あ!ニャア様の体調不良はソラ様とは無関係ですよね?」

夫から、3月にニャアが体調不良になったとしか聞いてないけど・・・

「ん?白猫?どうしてだ?」

「私の勘違いならいいのです。以前3人でお話しした時、ニャア様にやたらと鴨族の宿を勧めてらしたので・・・春にいくと魚が美味しいって・・・」

「本当か?」

夫のこの驚き様からするとやっぱり・・・ニャアはあの宿で体調を崩したんだわ。

そんな・・・


どうして?


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