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「まあ、お茶会……?」


「はい。

 私、社交界に顔を知っている方がいなくて……。

 さすがに未来の王太子妃としていかがなものかと」


 私の言葉に王妃様がそうね、と考え込む。急に言い過ぎたかしら。でも、次にお会いしたら言うんだ! と意気込んでいたからついついすぐに言ってしまったのよね。


「確かに、顔つなぎも大切だわ。

 いいわ、今回は私が準備のほとんどを手伝ってあげる。

 あなたと年齢の近いご令嬢を招待して、小規模なものから始めましょう」


「あ、ありがとうございます!」


 良かった、勇気を出してみて。嬉しくて笑っていたら、ここからが大変よ。とくぎを刺されてしまった。


 今日の予定を急遽変更して、お茶会に正体する人を選ぶことになった。王太子妃の婚約者として、貴族へ向けた初めての交流会。ここでどの派閥の人をどう呼ぶのか。そんなことを今までの生では一度も考えたことがなかった。


「ひとまず、有力貴族であなたと年が近いのはこの辺りのご令嬢かしら。

 この家とこの家は一緒に招待してはだめ」


 慣れない話を必死に頭に叩き込む。貴族家同士の関りとか、ご令嬢同士の関係性とか、気にすることが多すぎる。今回は小規模だからまだ招待する人数が少なくて楽だと言っていたけれど……。これがとにかく人を招待するような大規模なものでもいっそ招待客の選定は楽らしい。準備はその分大変だけれど、と王妃様がこぼしていた。


 なかなか面倒かもしれない……。


指導の数回分の時間をかけてようやく招待客の選定と招待状の作成が完成した。ここからはお茶やお菓子を選ばなくてはいけない。私には招待客の知識がないから、今回は王妃様に任せきりになってしまったけれど、これもそれぞれの好みなどを加味して選ばないといけないから油断ができない。


 連日いつもは使わない頭を使っているからさすがに疲れた……。さすがに疲れが顔に出ていたのか、ある日ユースルイベ殿下に声をかけられてしまった。


「最近無理をしているのではないか?」


「無理なんてしていませんよ。

 それはまあ、新しいことばかりで多少疲れてはいますが。

 それでも、楽しいです」


「それならいいけれど……。

 無理はしないでね」


「はい……」


 何だろう。心配してもらえるのは嬉しい。想ってくれているってことだと思うから。でも、でも。応援してくれてもいいのに、なんて。


「もう休みますね」


「あ、うん」


 どうしてだろう。もっと話したいと思う気持ちがあるはずなのに、でも話したくないという気持ちもある。私がやろうとしていることが、迷惑だったら? あなたはそんなことをしなくていいって、言われたら? 怖い、のかも。


 そのままユースルイベ殿下の返事を待たずに、私はその場を後にした。


―――――――――

「本日はお越しいただき、ありがとうございます。

 短い時間ではございますが、どうぞ楽しんでいってください」


 主催者として、淑女の笑みで挨拶をする。今日招待した令嬢たちがそれぞれご招待ありがとうございます、楽しみにしておりました、と口にする。その笑みの奥で何を考えているのかはわからないけれど、表面上は穏やかにお茶会が始まってくれた。


 私がもっと幼ければ、ご令嬢は保護者、私は王妃様同伴で安心できるお茶会ができたかもしれないが、もうこの歳になるとさすがに子供だけが多いそう……。何度か王妃様と練習をして、今日は私一人でお茶会に臨むことになってしまった。き、緊張……。


「フリージア様のギフトは『神の目』なのですよね!

 お話にはずっと聞いていて、気になっていたのです。

 どのように、ギフトが視えるのですか?」


 それぞれの自己紹介が終わりひと段落、というタイミングでとある令嬢からそんな声が上がる。ほかの令嬢方も興味津々といった様子でこちらを見ているし……。


「そう、ですね。

 夢をみているような形です。

 起きてもはっきりと覚えている夢。

 その内容が過去であり、現在であり、未来なのです」


「夢!

 それでしたら、どうやって本物の夢とギフトの夢を見分けているのですか?」


 どうやって……。そこまでしっかりと考えたことがなかったな。何となくいつもわかっていたから。


「はっきりとこれで、という理由は上げられませんが……。

 でもわかるのです」


「そういうものなのですね」


 ギフトはわからないことが多い。だからこそ、それで皆納得してくれた。ほかの人もギフトを紹介してくれたり、今は何が流行っているか話したり、おおむね和やかに会は進んでいった。


 初めてのお茶会に一体どうなるのかとはらはらしていたけれど、皆いい人たちでよかった……。さすが王妃様が選んでくださった方たち。ほっとしていると、にわかに周りがざわつき始めた。まさか、ここに来てトラブル!?


 せめて重大な問題ではありませんように、そんな思いを抱えながらざわつきの方に目を向ける。すると、そこには予想外の人物がいた。


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