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 今日はルイさんがお見舞いに来る日だ。昨日よりも回復していたものの、まだ歩かせてはくれないみたい。ただ、起き上がっても特に問題ないことは昨日でわかっていたので、ルイさんのことはサロンで迎えることになった。


「ねえ、私の恰好おかしくない?」


「ええ、もちろんです。

 とてもかわいらしいですよ」


 鏡の前で自分の恰好を見てみる。今日もとてもかわいいワンピースを用意してくれているのはわかっているのだけれど、なんだかそわそわしてしまう。最後にいつも通りお店のヘアピンをして完成。 なんだかこのヘアピンをしていると落ち着くな。


 朝食を食べに行くと、すでに3人は半分以上食べ終わっている。いつも以上に朝の準備に時間がかかったことが分かってちょっと恥ずかしい。朝の挨拶を交わして朝食をいただく。ルイさんは朝食後に来るという話だったから、朝食を食べ終わったらさっそくサロンに向かった。


 ふかふかなソファに座って待つことに。私の前には昨日読みかけで終わった本が用意されていて、またもや暇つぶしできるようになっている。ただ、それを読んでも内容が頭に入ってくる気がしなかった。 なんだろう、ルイさんはお店ではよく会っている人だけれど、自分が暮らしているところで会うのはなんだか落ち着かない……。


 そうしてそわそわとルイさんの到着を待っていると、くすりと笑ったメイドがルイさんの到着を教えてくれた。どうして笑われているのかわからなくて首をかしげるも、すぐにルイさんを迎えに行かなくちゃ、と意識を切り替える。


「玄関に行きます!」


 そう宣言してすくっと立った途端、足に痛みが走った。そうだ、今けがをしていたんだった……。


「っ!」


 い、痛い。


「まあまあ、大丈夫ですか?

 まだお怪我が治っていませんのに。

 ルイ様はこちらに案内いたしますから、フィーア様は座って待っていてよろしいのですよ」


「だ、大丈夫です。

 わかりました」


 痛さをこらえながら、何とかそう返す。正直この痛みの中で迎える気がしないから助かったかもしれない。そして、少しだけ待つと、外から足音が聞こえた。すぐに扉がノックされて、短い返事の後に扉が開かれた。


「ルイさ、ん……。

 そのお怪我は⁉」


「やあ、おはよう。 

 この怪我は大丈夫だよ。

 君のよりはずいぶんと軽い」


 ふふっとルイさんはほほ笑む。その顔にはカーゼが張られている。ほかにも手当されていて、あちこちに傷があるみたい。それはきっとあの時、私を助けてくれた時についたものだろう。


「それよりも、座っても大丈夫だろうか?」


「え、あ、はい!

 気が付かず申し訳ございません!」


「いいや、気にしないで」


 ルイさんは相変わらず穏やかに笑っている。その顔に怒りは読み取れないことにほっとした。


「そうだ、これを。

 見舞いの品なんだけど、受け取ってくれるかな?」


 そういうと、近くで控えていたメイドに視線をよこす。……ルイさんってお金持ちの家の人かもしれない。直接じゃなくてメイドに渡すなんて。まあ、あのお店であんなに頻繁に買い物ができている時点でお金持ちなのかもしれないけれど。


 見舞いの品を受け取ったメイドはそのまま私の方へやってくる。これは……。


「お菓子、ですか?」


「ああ。

 最近見かけてね、女性は好きかと」


「ええ、とてもきれいです!

 ありがとうございます」


 星をつかんで入れたような形状のそれは、とてもきれい。色合いもカラフルで可愛らしい。瓶に詰められているそれは、瓶も星形。食べ終わった後も何か物を入れたいけれど、何を入れようかな。


「喜んでもらえたようで安心した。

 そうだ、後はこれを」


「それは、手紙ですか?」


「そうだ。

 妹が渡してほしいと言っていてな」


「妹さん……」


 それは、ルイさんがよくあのお店に来ている理由である妹さん、だよね。これもまた、メイドを介して渡される。薄ピンクのそれは後で部屋に戻ってから読むことにする。


「ありがとうございます。

 でも、どうして手紙を?」


「パレードの件にあなたが巻き込まれたことを知って、手紙を書きたいと。

 迷惑だったか?」


「え、いえ!

 そんなことはありません。

 嬉しいですよ」


 それならよかった、と笑みをこぼす。その優しい笑顔に少しどきり、とした。


「そういえば、どうして私のことを助けようとしてくれたのですか? 

 馬が暴れていて危なかったのに」


「それを言うなら、君もだろう。

 君が助けた子は特に知り合いでもなかったのだろう?」


「それは、まあそうですけれど」


 でも、私の場合はあの状況を視ていたのに、何も対応できなかったから。自分の罪を軽くしたかっただけ。それなのに。


「それが知り合いならば、なおさら助けたくなるよ。

 それに……」


「それに?」


「……いいや、なんでも」


 これ以上どういったらいいのか戸惑っていると、メイドがお菓子を追加してくれる。それを見てお菓子を勧めると、ようやく気まずさを脱せた。そのあとは他愛ない会話をしてルイさんは帰っていった。


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