エリオット・グレイス
ロメリアの弟の短いお話。
俺の名前は、エリオット・グレイス。
6歳上のロメリアの事をずっと大切に想っている弟だ。いや、弟じゃない。血は繋がっていないから。
俺が4歳の時、ロメリアは10歳だった。4歳にして頭脳がほぼ完成していた俺は、かいがいしく俺の世話をしてくれるロメリアの事が好きだと気付いた。
でも、捻くれた性格の4歳児には、自分の毒の生物たちを押し付けるという行為でしか、愛情表現する手段がなかった。当然、ロメリアは悲鳴を上げ、泣いて俺のところに来て、助けを求める。
そこでやめておけば良かったのに。
ロメリアの泣き顔が可愛くて、ついつい長い間ロメリアに意地悪し続けてしまった。
ロメリアはそんな俺の想いに気付く事なく、いつも俺を天使みたいに可愛い弟と言っていた。俺が天使なんて笑える。ま、俺もロメリアの前では「僕」呼びだし、「姉さん」と呼んでいるから、そう見えても仕方ない。
そう言う意味で俺は、色々ロメリアを騙している。悪いとは思っていないけど。俺には自分を偽り続けるくらい必死にならないといけない理由があるからな。俺がどんなに頭脳明晰でも、どんなに身体を鍛えても、6つの歳の差は埋まらない。
ロメリアの方が先に結婚出来る年齢に達し、家を出ていくだろう。
――――本当、運命を恨むよ。
大好きなロメリアが馬鹿貴族と結婚なんて、考えただけで虫唾が走る。どうせ結婚しても、愛人を作る貴族は捨てる程いる。結婚後、途端に冷たくなる身分だけは一人前の貴族もいる。資産管理がだらしない貴族もいるし。
例を挙げれば限がないな。
俺以外の奴がロメリアを泣かせて良い権利? ないね。
「エリオット、お父さまが呼んでいたわ。書斎まで来て欲しいって」
「すぐ行くよ、姉さん」
「もしかして、また毒蜘蛛とお話していたの?」
扉から顔を覗かせて、ロメリアが不思議そうに聞いてくる。
「うん。毒の生物たちの中で、毒蜘蛛と相性が一番良いみたい。ひょっとして、僕の……。いや、何でもない」
「変なエリオット」
――――例えいつかロメリアが素敵な人と出会い、結婚しても、俺は道化であり続けるだろう。それでずっと機会を窺ってやる。ロメリアを泣かせたら、容赦なく婚姻終了させるつもりだ。
その日まで、ロメリアの気を引いて天使のような弟を演じよう。
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