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マリス・シュリントンのその後(おまけです)

乙女ゲームの裏設定話。マリス・シュリントン視点。ロメリアとリリアムの結婚直後のお話。本編とはあまり関係ないので、読まなくても良いです。気になった人だけどうぞ。

 ――――ゲコゲコ、ゲロロ、グエッ。


 蛙の鳴き声がする。


 三日前よりも二日前。二日前よりも一日前。一日前よりも今日。そんな具合に蛙の鳴き声は大きくなっている。目に見えて数も増え、庭園は蛙まみれ。景観が損なわれている。


「もう、一体何なのよ! 私を屋敷に閉じ込め謹慎処分にした挙句、蛙攻撃!?」


 これは絶対、エド・フロッガーの仕業だわ。


 庭園に出て、地面にへばり付く蛙を避けながら、エドを探す。程なくして彼を見つけた。


「ロメリアに私を監視しろって言われたの? それとも、私がここから逃げ出して、ロメリアに仕返しすると思ってる?」


 勝手に庭園に入り込み、木々の下でしゃがみ込んでいるエドに話しかける。


 エドは私の方をチラッと見ただけで、すぐに視線を蛙に戻した。


「仕事のストレスで逃げ出してきたのと、ロメリアさんの為ですかね」

「何それ……。貴方、まさかロメリアの事が好きなの?」

「マリスさんよりかは好きですよ。だからこうして、()()()に貴女の様子を見張っている訳ですし」


 そう言って笑うエドの顔が怖かった。


『毒々★魔術師たちの秘密を暴いて』という乙女ゲームは、攻略対象者の四人の秘密を暴く事で親密度が爆上がりする仕組みになっている。


 ロメリアはその秘密を暴いたっていうの!? あり得ない。有り得ないわよ。


「私はエドの秘密を知っているわ」

「何でしょう、それって脅迫ですか?」

「いいえ、貴方と親密になりたいだけよ」


 この乙女ゲームの熱烈なファンでもあった私は、攻略方法から裏設定まで知り尽くしている。だから、負ける訳がない。異分子のロメリアに負ける訳が!


 屋敷から出られなくて攻略ができなかったけど、こうして攻略対象者がのこのこやって来てくれたのはありがたい。最初は、ジル・エリュシュバーンを攻略しようかと思っていたけど、まあ良いわ。



「エド、貴方の秘密はフロッガー家にある。秘密の一族なんて言われているけど、本当は王家専属の掃除屋、つまり暗殺稼業をしているのよね?」


 ふふ、ほらほら顔色が変わったわ。エド・フロッガーもこれで攻略でき――――。


「あがっ、く、苦ひい、あ」

「ああ、煩いなぁ。殺しとく?」


 必死に首を振ると、掴んでいた首を離してもらえた。


 今、本気で私を殺そうとした? なんなのコイツ! ゲームではここまでのキャラクターじゃなかった筈なのに。


 訳が分からない。


「マリス・シュリントン。貴女は一体、誰を見ているんですか?」

「……はぁ?」

「少し気になっていたんですよね。貴女は確かに上手く立ち回っているように見えましたが、相手を全然()()()()()んですよ。相手だって血の通った人間なのに。その点、ロメリアの観察眼は鋭かったです。彼女、ほわほわしてる所もありますが見どころがありますよ。鋭いのにどこか抜けているって最強のテクニックだと思いません?」


 最強のテクニックって言うのは、攻略方法を知っている者だけが持つテクニックでしょ!? エドにそんな事、言われたくないわ。


 ムカムカしてきて、思い切り地面を蹴った。地面にいた蛙が驚き、逃げて行く。


 ったく何よ、この敗北感は……。確かに、私はこの世界をゲームとしてしか認識してない。キャラクターの攻略ばかりに気を取られて、目の前にいる人たちを人間扱いしていなかった。そういう所は、疎かにしていたわ。


 でも、それが敗因って言うの? 


 違うわ。私が前世の記憶を思い出す前に、ロメリアが先にこの世界を蹂躙し、改編したからよ。私の所為なんかじゃない!


「う~ん、強情だなぁ……。反省のない顔ですね」

「私はちっとも悪くないわ」

「一つ聞いても良いですか? マリスは誰が好きだったんですか?」

魔術師ウィザードは全員好きよ。ハイスぺだし。強いて言えば、リリアム様だけど」

「そうですか。あ、この前ロメリアと結婚しちゃいましたね。あれは良い式でした」


 何ですって!? 私が謹慎処分中に結婚!? もう攻略不可能じゃない……。大体、何でそんな大事な情報が私の所に来ないのよ。


 思わず爪をガリっと噛むと、エドに見透かされた。


「あれ、知りませんでした? ああ、そうか。謹慎処分中は、外部とのコンタクトを最低限にしているんです」

「そうなの? まあ良いわ。ジル殿下にするし」

「え……? あまりおススメはしません。だって、殿下って僕より裏表激しいですよ?」

「そんなの知ってるわ。私はねぇ、殿下の秘密も知っているんだから」

「それは何でしょう?」

「殿下の今の姿は仮初の姿よ。真実の姿は少し違う」


 もったいぶった言い方をすると、エドがやっとこちらを見た。今度はすぐに目を逸らさない。


「へぇ、それは面白いですね。でも、何でそんな事を知っているんでしょう? 殿下に知られたら、罪状が増えそうですね。間者と間違えられたりして」


 か、間者!? それは嫌だわ。処刑台エンドじゃない! そもそもヒロインには処刑台エンドなんてないのに……。


 エドの言葉と嬉しそうな顔は心臓に悪い。


 やっぱり過程を経てないから、秘密だけ暴露しても好感度が上がらない? 乙女ゲームにちっとも詳しくなさそうなロメリアは、魔術師ウィザードの秘密にも迫れていないでしょうね。


 なのに、何で皆、ロメリアの肩を持つのよ!


「良いですね、その顔。僕たちを追い詰めようと秘密を暴露したものの、逆に追い詰められちゃいましたか?」

「まだよ。まだエリオットの秘密がある」

「聞きましょう」

「エリオットは毒蜘蛛の加護を持っているけど、実はそれだけじゃない。もう一つ、加護を持っていて、密かに色々と情報収集しているのよ」

「興味深いなぁ……。ぜひ、()()()()友達になりたいです」


 その時、背後がゾワリとした。振り向くと、エリオット・グレイスが立っている。


「僕の噂話、してたの? 嫌だなぁ、とっておきは隠しておきたいのに。ロメリアの為にね」

「ハッ、どいつもこいつもロメリア、ロメリア、ロメリアって煩いわね! 大体、エリオットには姉なんかいない設定だったのに!」


 感情任せでぶちまけると、エリオットが笑った。


 少しドキッとしたのは、天使のように可愛い笑顔だったから。


「そうだよ、姉さんって呼んでいるけど、ロメリアは姉じゃない。理解してくれる人がいて嬉しいよ」


 え、そっち!? 重度の拗らせ系なの? 私はお呼びじゃない感じ? しかも、親密度マックスって嘘でしょ? ロメリアはもう結婚しているのに、ロメリアに対する愛情がこれっぽっちも減っていないなんて、そんな事、ある……?


 呆然と立ち尽くしていると、エリオットが近付いてきた。


「ねぇ、マリス。リリアム義兄さんの秘密は何? 教えてくれたら、良い事あるかもよ?」

「あ、それ僕も聞きたいです」


 二人の魔術師ウィザードに肩が付く程の距離で囲まれる。



 それなのに……。


 魔術師ウィザードのキャラクターたちに初めて近付いてもらえたのに……。


 どうしてこの手はこんなにも震えているの……? 



 ゲームだから。悪役令嬢だから。

 何しても良いって思ったから、罰が下ったの?


 私と同じ人間なのに。傷付いたら涙も血も出るのに。

 私が人として当たり前の、他者への思いやりを見せなかったから?


 ヒロインだから攻略できると思っていたのに、今では攻略できるとは微塵も思えない。


 身体の力がふっと抜けて、地面に座り込んだ。




「リリアム様の秘密は……。彼は、とても優しくて、溺愛してくれて、結婚までは何も問題なく物語は進んでいくのよ……」

「あれ、マリスの様子がおかしいけど、壊れちゃいました?」

「続けて……?」


 可愛いエリオットに耳元で囁かれた。


 ああ、こんな事は初めてだわ……。攻略対象者とこんなに長い時間、話せるなんて……。


「リリアム様の秘密は『欲求不満になると、粘り気のある黒い液状のものを出す』事です。笑っちゃうでしょう? でも、その状態を放置するとゲームオーバー。離縁されます」


 唯一、ヒロインを地獄に突き落とす攻略対象者。そこも魅力的で、他の攻略対象者にはない部分。うん? そうよ、自然と離縁されるじゃない!


「あはッ、だから私が心配する事はなにもない。ロメリアはきっとリリアム様の秘密を暴けずに自滅していくわ。あはは!」


 蛙にも負けない声で、声高らかに大笑いした。


 秘密が暴けなかったら、黒い液状のものがこの国を覆い、この国は暗黒期に入る。そうしたら、私の出番――――。


「あ、そうだった。僕がここに逃げ出してきた理由は、リリアムが七日間の休みを取っているからです」

「え?」

「きっと今頃、イチャイチャしてると思います。ジル殿下もそう予想していましたし。個人的な八つ当たりですが、リリアムの机を蛙まみれにしておきました」


 嘘よ。ロメリアがリリアム様の秘密に辿り着いた!?


「使役したもう一つの加護も、その情報が正確だと言っているね。さすが僕のロメリア。義兄さんの方は、魔力暴走か……。やっぱりあの人、魔力量が半端ないなぁ。僕ももっと鍛えないと。あ、これ、お礼に受け取ってくれる?」


 そう言うと、エリオットは人形ぬいぐるみを差し出した。反射的にそれを受け取ると、エリオットはまたあの笑顔で私を見てくれた。


「あ、僕もお礼を渡しますね。はい、どうぞ」


 エドからは蛙グッズを渡された。


 二人の魔術師ウィザードが帰って行く。彼らの背中が見えなくなるまで見送ると、バチンッと大きな音が鳴った。


「あれ……。私、もしかして調子に乗せられた?」


 自白させられたような感覚が残っている。


「ああ……。全部、秘密を喋っちゃったわ。口はわざわいの元なのに」


 悔しくて、エドとエリオットから貰った物を放り投げた。


 認めたくない。ヒロインに転生したら勝ち組だって思っていたのに。


 ロメリアにあんな事を言われても、何とか立ち直れたのに、もう無理だわ。彼女には最強の魔術師ウィザードが四人も付いている。最初から、勝てる訳がなかったのよ……。 

書き足らない所も正直ありますが、本人の執筆修行も兼ねていますので、完結させる事を目標に書きました。処女作では設定を積み込み過ぎて、爆破させた経験がありますので、それを踏まえてこの長さにしています。

評価(★~★★★★★)してくださると次回作にも気合が入るので、よろしくお願いします。


追記:いつからか分かりませんが、完結済みになっていたみたいです。いじった覚えはありませんが、申し訳ありませんでした。

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