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さぁ、異世界へ

 目の前にいるガヴリールという女の子は、自称天使ときた。

 普通なら信じられない。

 でも、ボクは今死んでいるんだ。だからという訳では無いが、色々不思議なことが起きたっておかしくないと思う。


「選択肢って何?」


「うん、あなたにこれから与える選択肢は2つ」


「2つ?」


「1つ、天国に行く。2つ、異世界に行って新しい人生を歩む」


 ガヴリールは喋り終えると、笑顔になりボクの方へと向けてくる。


「さぁ、どうする?」


 ボクはすぐに答えることができない。

 この状況についていけてない。

 そもそも本当に異世界なんてあるのか?

 そんな疑問が湧いてきてしまう。

 ガヴリールはボクの心を見透かしているのか答えてくれる。


「もちろん、異世界は存在するよ。その世界はね、魔法があって、それで生活したりモンスターを倒したりするんだよ」


 簡単にだけど、異世界の説明をしてもらった。

 でも、正直魔法とかモンスターとか興味無いな。

 そう言えば、天国ってなんだろう。

 楽園?


「ううん、違うよ」


 これまた心を見透かされたようだ。

 流石、天使って言ったところか。


「天国は、簡単に言えば“無”だよ。何も無くて、ただ輪廻転生を待つだけなんだ」


 そんなの苦痛じゃないのか?

 死んでも楽しくないじゃん。

 だったら、新しい人生が欲しい。

 でも、1つ気がかりなことが僕にはあった。


「その、異世界に行ってもパンを作れるの?」


「うん」


 笑顔で頷きながら答えてくれた。

 そのまま続ける。


「あなたの夢は十分叶えられるよ」


 なぜか、この天使はボクの夢を知っていた。まぁ、どうでもいいや。

 なんだ、まだボクの夢は終わってなかったんだ。

 ボクのパンで誰かを笑顔にできる。

 異世界に行けば、夢は叶えられるんだ。

 なら、答えは1つだ。


「ボクは異世界に行きたい」


「うん。なら、あなたを私が異世界に連れて行ってあげる」


 こんなに簡単に連れて行って貰えるんだ。

 でも、ボクは死者だ。

 今更だが、肉体がない。

 これで異世界に行っても誰にも見えないのではないか。


「大丈夫、異世界に行けば自動的に肉体が与えられるから、誰かに見てもらえないなんてことにはならないよ」


 つまり異世界転生か。

 じゃ安心して行けるな。


 ガヴリールは背中に生えてある翼を広げると、少し宙に浮きながら呪文なようものを唱える。

 その澄んだ声は、ボクの心に響き渡る。

 とても綺麗だ。


『新たに地に足が着き、新たに天の息吹を受け、生を成す。世界の真理、その扉を開け。』


 そこまで言うと一瞬だけ間を開けると、ガヴリール全体に光が包み込んだ。

 光が全体を包み込むと同時に、


 《新天地》


 そう口にした。

 すると、横断歩道に光の渦のようなものが出現する。

 ボクは目を大きく見開いた。

 光の渦から感じられるのはとても暖かいもの。

 ボクは、驚いたが不安じゃない。

 逆に何だか安心する。


 ガヴリールは、唱え終わるとボクの手を握って渦の方へ指を指した。

 その手は暖かい。

 ポカポカする。

 できるならずっと握っていてほしい。ついそう思ってしまう。


「あの渦の先に、あなたの望む世界があるよ」


 あの渦の先か。

 不安が半分、期待が半分。


 よし、行くか。

 どんな異世界がボクを待ってるんだろう?

 そして、不思議なことに今まで動けなかった横断歩道(ここ)から動けるようになっている。


 渦の方へ歩いて行くと、ボクは大事なことを忘れていることに気づいた。

 まだ、ガヴリールにボクの名前を名乗ってない。

 これから、一緒に異世界に行くんだから言わないと行けないと思う。

 渦に向かって行く、ガヴリールを呼び止める。


「待って、ガヴリール。ボク、君に名前を言ってなかったね。だから名乗らせて」


 そう、ボクはガヴリールと多分仲良くなりたい。

 名前を知ってもらって友達、仲間になりたいと心からそう思った。


「ボクの名前は、『末永(すえなが) (はい)』。これから異世界でよろしく」


「もちろん。私の方こそ、不束な天使だけどよろしく」


 何だか告白したカップルみたいだ。

 ボクは、つい言葉を言い終えたガヴリールに見とれてしまった。

 天使だからなのか、笑顔が可愛い。


 ボクは、顔を横に振った。

 こんな不純なことを思っていたら異世界ではやっていけない。

 もっと気をしっかり持たないと。

 極めつけに頬を両手で叩いた。

 ガヴリールは、ボクの行動が終わるまで待っている。

 終わると、


「よし、行こっか」


「うん」


 ボクは肯定するために頷き、渦の方へと今度こそ足を運んだ。

 渦の近くに行くと自然に体が中に引き寄せられていることが分かる。

 さぁ、異世界へ。




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