表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

1/2

死者の声

 この春、ボクは死んでいる。

 新学期が始まり、登校中だったのを覚えている。

 突然だった、青信号で横断歩道を渡っているたらダンプカーが突っ込んできた。

 その時、ボクは何もすることができずに引かれてしまう。

 痛いという感情はなかった。

 そのまま眠るように即死。

 残酷だがこれが現実のようだ。


 ボクには夢があった。

 将来、街で小さなパン屋を開くことが夢だっんだ。

 みんなに美味しいパンを作って、食べて貰って笑顔になってもらいたい。

 そんな夢だ。


 ボクは夢を叶えるために、専門学校で絶賛勉強中の学生。

 だけど、死んだボクはもう何もできない。


 ボクは、今死んだ横断歩道にいる。

 ここでなにかしているわけじゃないんだ。どこかに行こうとしても行けない。

 もしかして、これって地縛霊なのか?

 いや、この際地縛霊とかどうでもいいや。


 ボクはこの場所が嫌いだ。

 横断歩道に入る前のところに沢山の花束に、ボクの写真が飾ってある。

 この近くに住んでいる方の中には、わざわざジュースやお菓子を買ってお供えしてくる人がいた。

 ちなみにボクの両親はここに来て、大粒の涙をこぼしながら悲しんでいたのをよく覚えている。ボクは、何度も「ボクはここにいるよ」って伝えたのに伝わらなかった。

 その時、初めてボクは死んだのだと分かったよ。

 死んだのは分かったけど、信じなくなかった。


 ずっと横断歩道に立っていると、当然だけど飽きてくる。

 それに体は疲れないけど、精神的には参るね。


 こんな状態が既に4日。

 どうすればいいんだ。

 いつまで、こんな所に1人寂しく居なくちゃならないのか。

 嫌だ。

 気がつくと、一筋の雫が頬を流れている。

 ボクは、泣いてるんだ。


 ボクが死んだせいで、両親は泣いて、夢を強制的に叶わなくなり、横断歩道(ここ)から動くこともできずに毎日を消費しているだけ。

 これが“死”なのか。

 そう思うと、涙が止まらない。

 まだ、やり残したことが山のように沢山あるのに。

 悔しいよ。

 恋もしないで死ぬなんて惨めじゃないか。

 くそ、ボクはこれじゃなんのために生きていたのか分からない。

 ボクはその場にしゃがみ込んで、叫んだ。

 誰にも届くはずのないこの声で。


「誰かボクを助けてくれよーーー!!!」


 やはり、誰にも届かなかったらしい。

 当たり前だ。

 ボクは死んでいるんだから。

 もう、この声は誰にも届かない。


「そんなことないよ。私には、あなたの声届いたよ」


 ボクは慌てて振り返った。

 後ろに誰か立っているのを確認。

 1人の女の子だ。

 だいたい、歳は女子高生ぐらいか。


 その女の子は純白の腰まである髪に、天色の瞳。雪のように白い肌、それから背中に羽を生やしていた。

 ボクは、しっかり女の子を見ると、その子は微笑んだ。

 それから、しゃがんでいるボクに合わせるかのように、女の子もしゃがむ。


「辛かったね。でも、もうあなたは1人じゃないよ」


 そう声を掛けてくれると、ボクの手を握ってくれた。

 暖かい手で包み込むようだ。

 久しぶりに、誰かにボクのことを見てもらった。

 ボクは意を決して質問する。


「君は何者なの」


「私は天使ガヴリール。あなたに選択肢を与えに来ました」








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ