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秋葉原ヲタク白書39 聖子ちゃんカットの女

作者: ヘンリィ

主人公はSF作家を夢見るサラリーマン。

相棒はメイドカフェの美しきメイド長。


この2人が秋葉原で起こる事件を次々と解決するオトナの、オトナによる、オトナの為のラノベ第39話です。


今回は、80年代のアイドルグループの元メンバーから、メイドになった娘とTOを別れさせて、とのリクエスト。


コンビが調べると、どうやら娘とTOは、ホテルで謎の"80年代プレイ"に明け暮れていたようで…


お楽しみいただければ幸いです。

第1章 制服


B面って、わかるかな?


昔のアイドルは、新曲はレコードのシングル盤で売り出すのが定石だ。

このシングル盤は、CDと違って表(A面)に1曲、裏(B面)に1曲が入る。


もちろん、メインの新曲がA面(表)に入り、B面(裏)にはオマケの曲が入る。

だから、当時"スナック"には"B面の女"とか呼ばれる女が必ずいて…


あ、レコードって何?と逝う平成生まれやCDって何?と逝う令和生まれは、ココから先はパパやママと一緒に読むコトを推奨←


あ、令和生まれは、未だ字が読めないか笑

とにかく!今回は"令和のB面の女"の話。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「"セー服"が名曲過ぎるょね」

「え?"制服"?何処の?」

「違うょ。"セー服"だょ!"セーラー服"の短縮形で"赤いスイートハート"のB面だょ!」


ココは、僕の推し(てるメイド)ミユリさんがメイド長を務めるアキバの老舗の御屋敷(メイドバー)

何かと息苦しい大気中に大量の酸素を供給するので"酸素発生型光合成細菌(シアノバクテリア)バー"とも呼ばれる。


「あ!"セー服"ねっ!御存知の方がおられるの?松田"セー子"サンの名曲!懐かしいわっ!雨の卒業式!出来なかった告白!私の青春!」←

「やゃ?貴女は、もしかして…」

「あら、もうわかっちゃったの?元シェイプDOWNガールズのフミカです!水着写真集"あふれてフミカ"よろしくねっ!アラフィフだけど」


えっ?ええっ?


あ!と思った時はもう遅いwフミカさんはバッグから写真集を取出しサインを始めてるw

海千山千の御屋敷の常連連中が、呆気に取られる内に次々とサイン本を買わされて逝く。


ス、スゲェ営業力w


アラフィフだょ?アラフィフ!そんな水着写真集なんか買ってどーすんだ?!

と思って見せてもらったら結構イケるw結構どころかサイン本ならお得カモ!


あ、僕も1冊…と思った瞬間に周辺空域に100万ボルトの電圧がかかるっ!

ミユリさんのデス光線だっ!ミユリさんが…怒ってイル(かもしれない)w


「おかえりなさいませ、御嬢様。御屋敷のメイド長を仰せつかっております、ミユリと申します…とりあえず、ワンオーダーを」

「えっ?貴女がミユリさんなの?思ったより全然お若いのね?ナウシカに出て来る大婆様みたいなシワシワのおばあちゃんが出て来るかと思ってたのに。もしかして、私より年下?」

「お察しの通りかと。そもそも、この中にアラ還がいるとでもお思いですか?」


わ!珍しくミユリさんが口答えw


ミユリさんを熱くしてるフミカさんは、セレブが得意な「オールホワイト」の装いにパワーツールで白スニーカーと逝う着こなしだ。


「そもそも秋葉原のメイドは全員永遠の…」

「37才でしょ?貴女」

「⁂♬〓⌘☆!」


あ、今度はミユリさんが絶句w

珍しい!まさかホントに37才?


「と・に・か・く!今宵は、お願いがあって来たのょ、私。コチラの美人なメイド長さんとお連れのSF作家さんのコンビに頼めば、どんな大問題でも必ず解決してくれる、って聞いて来たんだけど」

「お話を伺いましょう」

「実は、娘がメイドをやってるんだけど、悪いTO(トップヲタク)がついて」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


TOとは、昔風に逝うとアイドルの親衛隊長みたいなモノでファン代表的な存在だ。

地下アイドルの場合、ライブ現場が健全に盛り上がるよう色々と気を配ったりする。


「そのTOがね、どうやら娘への下心が見え見えで、その、何と言うか、ほっとくと結婚しちゃいそうなのょ。ホラ、娘もウヴだから」

「うーん。貴女のお嬢さんなら絶対大丈夫って気もするけど、とにかく、僕達は別に探偵やってるワケじゃないんで。メイドさんが結婚したくて卒業スルなら止められないと逝うのがスタンスです」

「だ・か・ら!とにかくソレを調べてもらって、もし婚約とかしそうな気配があったら、即私に教えて!もしナンなら現場判断で阻止してもらっても結構。全部一式でお願いスルけど、おいくら?」


話が通じないw


まぁ、とりあえず、そのお嬢さんがどんなメイドをやっているのかを見に逝って来よう。

ミユリさんに明日、御帰宅してみるょと目配せして…カウンターの写真集に目を落とすw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


翌日、御屋敷の開店前にフミカ娘がメイドをやっている御屋敷にミユリさんと御帰宅。

ミユリさんは、秋なのにサクランボ柄ワンピで春気分満開、腕を絡めてくるんだけど…


「えっ?フミカ娘の御屋敷って"シュガースター"だったの?」

「そのようですwフミカさんから伺った住所だとココなので。わ!スゴい行列w大繁盛みたいですね」

「おかえりなさいませ!御嬢様に御主人…ああっ!ミユリ姉様、御無沙汰してます。"コスプレバトル"の件では、姉様にはホントお世話になりました」


メイド長のカリナさんが手を振ってくれる。

で、彼女は首から腕を吊って松葉杖に眼帯w


やれやれ。今日も満身創痍だね、君は。


第2章 聖子ちゃんと呼ばないで


カリナさんは、ミユリさんの後輩で"シュガースター"のメイド長をやっている。

清楚系お嬢様だけど、夜は"コスプレバトラー"なので、いつも生傷が絶えない。


「あ、松葉杖も眼帯もシャレなんです。最近は"コスバトネット"を見た、と仰って御帰宅される、外国からの御主人様も多いんです。だって月額500円で私達のバトルが見放題なんですもの。登録者数も鰻登りで、コミッショナーは先日、有名な経済誌"フォープス"の取材も受けたんですょ。その煽りで、御屋敷への御帰宅者数も天文学的な数字です」

「うーん。でも、カリナちゃん。その打撲&骨折のオンパレードな外見で力説されてもねぇ。ホントにケガとか大丈夫なの?TOのマイルさんにも、ちゃんと御相談してから参戦するのょ」

「はい、ミユリ姉様。でも、マイル様は私の"和琴(ワゴン)"のコスプレに、そのぉ、あの、もぉ何だかメロメロみたいなんですぅ。実は昨夜も…きゃ!」


マイル!お前っ、カリナさんに昨夜何をw


カリナさんはアニメ"雅楽忍者隊"のミニスカ忍者"黒鳥(ブラックスワン)の和琴"の(コスプ)レイヤーだ。


(コスプ)レイヤー同士の対決"コスプレバトル"は収益の約8割をメディア事業で稼ぐ。

その牽引役は、目下、世界18ヶ国に展開中の動画配信サービス"コスバトネット"だ。


従来は、この手のメディア戦略は、CATVに放映権を売って終わりだったが、新アプリの投入で業界風景が文字通り一夜にして激変。


ゲームの視聴回数が世界(今は18ヶ国だけどw)相手に一挙に毎回億回単位に跳ね上がる。

契約1件当たりの売上高は低いけど、世界中で会員数の増加が止まらズ補って余りある。


従来の興行メインのやり方では、生身の人間がやる試合数には自ずと限りがある。

だが、グローバル&デジタルに舵を切れば新ビジネスモデルの進撃は止まらない。


海外プロレスの派手な演出や展開の世界から引き算を繰り返して行ったら、後に日本特有の文脈を持つヒットコンテンツだけが残る。


将来は映像コンテンツなどの知的財産(IP)がオリンピックやワールドカップに並ぶ"スポーツビジネスの核"となる時代が来るのか?


コスプレ女子のチープなプロレスごっこを、グローバル&デジタルでメジャーなビジネスモデルへと変身させた"令和の錬金術師"!


アキバ発の世界的なスポーツエンターテイメントの育ての親、ソレがトロイさんだ。

アキバを睥睨するタワーマンションの最上階に愛人ドリィと住む"謎の億万長者"。


でも、僕は彼に貸しがある←


「ねぇ、ミユリ姉様ぁ。一緒にコスプレバトルやりましょうょお。姉様の"ダークナイトセレナーダー"、今じゃ伝説なんですぅ!和琴とタッグ組みません?テリィ様の番(組)宣(伝)にもなルンですょ?」

「テリィ様の"地下鉄戦隊メトロキャプテン"は、もう十分に数字(視聴率)が取れてるからいいの。それに、カリナちゃん。私、しばらくはリバースゴリースペシャルとかゴメンなの。カリナちゃんも受けたコトないんでしょ?あの技をかけられた時、もう死ぬかと思ったんだから!」

「でも、姉様がドリィさんの拷問技に捕らえられた時、テリィ様はコトのホカお喜びだったって後で聞きましたけど」←


こらぁ!何でソンなコト逝うかなぁw

隣の芝生が青いからって焼き払うな!


「と・に・か・く!僕達、この子を探してルンだけど"シュガースター"のメイドさんだょね?」

「え?あ、はい?あぁ、セイラちゃんです。彼女が何か?今日は早番だったんで、もう上がっちゃいましたけど」

「だから、その、何て逝うかな。TOがついたんだって?最近。で、何かその、ソレが、悪い奴だとか、何とか…」


フミカさんから預かった写真を見せたら1発でネームまで判明だw彼女の名はセイラ。


「でも、テリィ様。セイラちゃんは別にアイドルではナイので、TOとか、そーゆー人は特にいないと思うんですけど」

「甘い!ソレが彼女にはTOがいるんだ!確かな筋からの情報なので間違いない。カリナさん、コスプレバトルで何処かぶつけて記憶喪失になったんじゃないの?」

「何ソレ?韓流ドラマじゃあるまいし。如何にテリィ様でもアンマリです。ミユリ姉様の大事なTOでなければ、とっくに私の必殺技…」


あ、ヤバい!地雷だっ!

ミユリさん、後は頼む←


「カリナちゃん、ごめんなさい!テリィ様には私から後で"よーく話を聞く"じゃなかった"話しをしておく"からwでも、実はね、カリナちゃん。私達、それだけ急いでいるのも確かなの。そのセイラちゃんのコト、もう少しお話を聞きたいな?」

「あぁ!姉様、私なんかに謝らないでください!セイラちゃんですょね?彼女は…率直に逝って多分バイトしてると思います。まぁ実はウチの方がバイトだったりしてw」

「あらら。ソレは困ったメイドさんね」


メイドがバイトしてると逝えば、そのぉ、まぁ、こーゆー文脈だと、普通は風俗だね←


「実は、こんな写メがあって。たまたまウチの御主人様方が見かけて、送ってくださったのですが」

「えっ?何々?気になるー」

「テリィ様はダメ!ミユリ姉様にしかお見せしません!」


と逝いながら"チョットだけょ"って感じで見せてくれるカリナさん、カワユス←

で、その写メは、アキバの雑踏を背にしてセイラが振り向いた瞬間のショットだ。


往年のアイドルのブロマイドみたい。

だって…"聖子ちゃんカット"だょw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


"聖子ちゃんカット"は知ってるかな。


レイヤーカットなんだけど、サイドの毛先を外側にブローしてある。

1980年頃は、合コンしたら全員が"聖子ちゃんカット"とか頻発←


時は過ぎ、聖子チャンは聖子サンとなり、その髪型も、まぁ、その廃れたワケだけど、ソレがどうして、今、アキバで復活してんの?


セイラの"聖子ちゃんフォト"のバックに映り込んでた駅近のホテル"24"を訪ねる。

テナントビルの1Fはスタバだけど、その奥の"24"のオフィスで支配人が…食べてる←


殺風景なオフィスの小さな応接セットで彼がかっ込むのは、フカヒレ味のカップ麺だ。

新発売の奴だょねソレ?どう?美味い?今回は、僕は彼に貸しのある人に貸しがある←


物わかりの良い彼は、カップ麺が不味いコトや"聖子ちゃんカットの女"がホテルの常連で、さっき帰ったコトとかを教えてくれる。


え?彼女が使った部屋を見せてくれる?

いいや、ソレより彼女の相手のコトを…


「うわっ!何だ、この臭い?」


でも、部屋を見せてもらって正解w同行した掃除係のオバサンが手順通り消臭スプレーを撒く前に嗅いだ酸っぱい臭いは…フロンか?


正確にはクロロフルオロカーボンだ。


誰かレトロなヘアスプレーでも使ったのか?オゾン層に穴が開くから今は使用禁止だぞ!


しかし、この部屋は…


イエロー&オレンジの極彩色がぐるぐる渦巻く内装、曲線的なインテリア、ポリエステル、ドラッグカルチャーの浮遊感、ミニテーブルに第1面に中曽根首相の顔写真の新聞、クローゼットにラップデザインの服が1着、発ガン物質入りマニキュアの小瓶、テクニクスのステレオ…要するに全てが80年代でサイケデリック!


こ、こんな部屋があったのかょ?

え?80年代プレイの専用ルーム?


"聖子ちゃんカット"のセイラは、この部屋でどんな情事にふけっていたんだ?

相手の男は…1980年代ヲタク?そんなヲタクがいるのか?どんな男だったんだ?


ええっ?!男じゃナイの?笑

相手は女?マジ?百合かょ?


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


誰かが、セイラに"聖子ちゃんカット"をさせ、80年代の服を着せて、この部屋で悪夢のような妄想プレイを楽しんでいる。


まぁ、ギリギリ良い方向に考えても"サタデーナイトフィーバー"の和製リメイク版オーデ(ィション)会場でした、とかね←


でも、少なくとも今回のお相手はリアルのようで内心ホッとする。

ホントは心配でwまた"未来ナチス"だったらどうしようってさ←


第3章 支配セラピストのモノローグ


「テリィさん。貴方の妄想の裏には、どのような欲求があるの?貴方の望みは、何を支配することなのかしら?。言い換えるわ。貴方は別人に変わりたい?」

「全然」←

「フロイト以降、セクシャリティは心理学の主要テーマになったの。人にも逝えない妄想は、誰にでもあるわ。大切なコトは、敢えてその妄想に身を委ね、機会と捉え、自分自身を学ぼう、という姿勢を持ち続けられるか否か、なの」


何逝ってんだかワカラナイw

今、僕は生放送に出演中だ←


僕の目の前にいるのはスマホTVの人気番組"丸子のヘア"のアンカーパーソンのマルコ。

御本家?よりは若いが軽くアラフィフ、巨体のマルコ・リラックス様は堂々の大熟女だ。


コレがセイラの80年代プレイの御相手?


"24"の支配人から教えてもらった僕達は、スマホTV局"ワラッタ"に彼女を訪ねる。

当の御本人に"80年代ルーム"の話を聞く内に何故だか僕が番組に出演する話になり…


で、続きは番組中でやるコトになるw


「貴女のプロフ(ィール)を調べさせてもらいましたが、円山町(渋谷)のSMバー"薔薇の館"で女王様をなさってますょね?今の話がホントなら、ソレも貴女の妄想なのかな?貴女は、女王様と逝う妄想から何を学ぼうとしているのですか?」

「先ず、私は女王様ではないの。支配セラピストと呼んで欲しいわ。愛の鞭もビジネスの内だから。ソレと私、心理学のエキスパートなのよ。特に性的な妄想に詳しくて、心理学の博士号も取ろうとしている(多分"しているだけ"だろう笑)の。常人ではカバーできない分野を客員教授的にカバーしているワケよ」

「アブノーマル系性的妄想が御専門と逝うワケですね?」


瞬間、マルコが殺気に満ちた視線を放つが直ぐにアンカーパースンの自覚を取り戻し、袖の番組プロデューサーを呼んで耳打ちする。


「…あ、スズキくん!今宵はコチラともう少し語るコトにするわ。良い絵が撮れそうよ。次のゲストはキャンセルして頂戴」


げげっ!誰だか知らないけど、次のゲストが可哀想w

控室にライダーベルトしてた奴がいたけど、彼かな?


しかし"空間メディアプロデューサー"のスズキくん、こんなトコロにもいるのか?

フリーランスって意外にタイヘンなんだなw自分を見失うな!夢をしっかり持てっ!


「えっと、何の話だっけ?あ、そうそう支配ょね?だから、女も色々なの。支配したがる女。支配されたがる女。つまるトコロ、男を上にするか下にするかと逝う1点に尽きるワケ。あら?ミサトさんの十字架(アニメの小道具)?」

「エヘヘ。推し(ミユリさん)からのプレゼントなんです。しかし、貴女の妄想は、支配と逝うより再現でしょう?あくまで"例えば"の話だけど、貴女は80年代と逝う過去を蘇らせたがってる。恐らく、貴女が少なくとも今より"幸福だった"と思える過去なのでは?当時の貴女は、仕事でも私生活でも、自分が1番だと思えた"ヲレ様ギャル"だったのではナイでしょうか?」

「ギャル!そうょ、私は私が"最強ギャル"だった頃に戻りたいの!"やりたいコトだけやる""嫌いなモノは嫌い""空気は読まない"3拍子揃った"最強ギャル"に、私は戻りたい!」


確かにギャルは最近キテる。


令和になって、伝説のギャル雑誌の復刊や原宿系ブランドの復活などが相次いでいる。

忖度だらけだった平成にタメ口で引導を渡す勢いの令和ギャルにマルコは憧れたのか。


でも、ソレは無理←


金髪&巻き髪&カラコンでどうだ?

いや。やっぱり無理だょその年齢w


で、モノローグは勝手に佳境←


「初めて行ったメイドカフェで、偶然生き写しのメイドを見つけた。私が"最強ギャル"だった頃の"お相手"に生き写しのメイド。その時"この子だ"って思った。その場で、彼女に過分な報酬を払い、話を持ちかけた。すると、その夜、彼女からプロモ(ーション動画)が届いた。"絶対に貴女をリラックスさせる自信がある、雇ってくれたらうれしいな"って動画の中で微笑む"あの子"や、何もかもが"あの頃"の色に瞬時に染まった。だから、私、朝まで待てなくて、真夜中にホテルの支配人にルームの"80年代リフォーム"をリクエストしたの!全ては"あの夜"を完璧に再現するためだったのよ!」

「"あの夜"とは?」

「そう!彼女は、確かに"あの夜"と全く同じに"妊娠した"って、私に言ってくれたわ!うれしそうに!でも、完璧ではなかった。だって、あの子は、セイラは、ホントは妊娠してなかったのよ!全部ぶち壊しよ!」


あの夜?ホントに妊娠?ぶち壊し?


いよいよ話はわからなく(ピーマンに)なり、プロデューサーのスズキくんに、そろそろ〆だとサイン。

スズキくんは"最高数字(視聴率)"とサインを返し有頂天だが結果的に大間違いとなる。


なぜなら、開局以来の数字を叩き出す世紀の大放送事故が起きるのは、コレからだからw


「ギェー!ヲレは通りすがりのライダーだ!ココからはヲレのステージ!キバって逝くぜっ!」


歴代ライダーの決めゼリフを乱発しながら、オンエア中に割り込む狂った男!

パーカーにジーンズの普通のヲタクなんだが腰にライダーベルトを巻いてるw


げ!僕の次に出番だったゲストの人だ!

確か、マルコ指示でキックアウトでは?


「ライダーキーック!」


彼は、舞台袖からイキナリ飛び出しジャンプ!

驚いて思わず股を開いたマルコにdropkick!


見事にマルコの急所をヒットするが、次の瞬間、1バトン(客側に1番近い舞台照明を吊った鉄管(バトン))が僕の鼻先に落ちて来て大衝撃音を立てるw


さらに、足にロープが絡まったか、バトンと入れ違いに空中へと吊り上がったライダー?がブザマに絶叫、バタバタと大暴れするw


死人こそ出てないが、オンエア中の大事故にライダー?を除く全員がその場に凍り付く。

しかし、素早く状況を掌握した僕は咄嗟にテーブル上の冊子を手にカメラ目線をキメる。


「期待の最新刊、"地下鉄戦隊メトロキャプテン・クロニクル"!in store now !」


第4章 "出来なかった告白"


お陰様で"クロニクル"は超新星(スーパーノヴァ)的な売上を記録する。

何もかも彼のお陰でホント"境界性人格障害ライダー"様々だ。


しかし、スマホTVのリアリティショーって、実はバカにしてたんだけど、スゴい影響力を持ってルンだな、と驚きを通り越し呆れるw


増刷に次ぐ増刷で、急遽残酷…じゃなかった全国サイン会ツアーが組まれるw

フリダシとなる札幌へ飛ぶ前に、僕はミユリさんと今回の件を整理してみる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


先ず、セイラのTOは、タレント"マルコ・リラックス"と判明。

2人の関係は、推しとTOと逝うより、コスプレ援交的なモノか?


フミカさんからは内々2人を破綻させろとリクエストされてたけど既に破綻済みだw

何しろ、推し(セイラ)の妊娠騒ぎ?以来、2人の関係は完全に冷め切ってしまっているのだ。


しかし、ワカラナイのは、マルコがアレだけ湯水の如く金を使って熱中した80年代ゴッコに一夜にしてシラけ切ってしまった理由だ。


答えは、思いがけない形で明らかになる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ごきげんよう、フミカ。相変わらずレオタード一丁でハデにやってるみたいね」

「貴女もね。もっとも、貴女の活躍の場は地下みたいだけど、マルコさん。いや、マルミと呼んだ方がいいかしら?」

「えっ?マルミ?もしかして、貴女は原々(わらわら)マルミ?元シェイプDOWNガールズの?」


御屋敷(ミユリさんのバー)に2人のシェイプDOWNガールが集う。

話を耳にしたアラ還の常連が思わず後ずさる。


80年代のAKBとでも呼ぶべき"シェイプDOWNガールズ"は4人組のタレントユニット。

当時は"ナウ"な概念だった"シェイプアップ"を前面に出した"健康美"がウリだ。


今となっては"シェイプアップ"自体が死語となるが、4人のその後も実にマチマチだ。

しかし、芸能界に残る者、去る者に等しく同じなのは80年代が最も輝いてたという事実。


そして、ソレはマルミにとり憧れのフミカが最も輝いていた日々なのだ。

当時から百合だったマルミは、いつかフミカに"告白"する日を夢見る。


しかし、夢は叶わぬまま、80年代は過ぎ年齢を重ね、体重も増え、全ては色褪せる。

そして、先月、マルミがフミカの娘セイラとアキバで出逢って再ゲームの幕が開く。


しかし、金で買ったオママゴトのようなイメクラプレイはシャワー中にマルミがセイラの免許証を盗み見たコトで終止符が打たれる。


だから、その1週間後に僕とミユリさんが、一部始終をフミカに話しに逝ったコトは今となっては余計なコトだったのかもしれない。


フミカは、瞬時にスマホTV界の"マルコ・リラックス"が元DOWNガールと見抜く。

そして、自分に"出来なかった告白"を娘にする気?と激昂して僕達を呆れさせる。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


何もかも終わった夜の御屋敷(メイドバー)


「でも、マルコはホントに"出来なかった告白"をするつもりだったのかな」

「え?何で?じゃ何のためにセイラを雇ってまで"80年代ゴッコ"をしたの?」

「ソコだょ。マルコは"出来なかった告白"そのものを再現したかったんじゃないのかな」

「え?どーゆーコト?」

「でもぉ、このままでいいのぉ、ただのぉ、ク・ラ・ス・メ・イ・ト、だからぁ」

「やめて。歌わないで」


あ、話相手はヘルプのつぼみんだ。

ミユリさんは楽しそうに笑ってる。


ソコへ…


「あぁ!いたぁ!社長!カリナです!ぜひ私もWCBに!私も世界の(コスプ)レイヤーと闘いますからっ!私も世界に連れてってぇ!」

「え?え?カリナさん?しかも"和琴"のコスプレで何しに来たの?しかし、そのカッコでよく東西通路を歩けたな」←

「そうよ、カリナちゃん。ソレに私のTOを社長って呼ぶのもどーなの?80年代のキャバレーの呼び込みじゃないんだから!」

「あ、ミユリ姉様ごめんなさい!でも"コスプレバトル"コミッショナーのトロイさんから聞いたのです!新会社"WCB(ワールドコスプレバトル)"を立ち上げ、社長をテリィ様にして今後のコトは任せると…」

「まぁ!初耳だわ。でもね、カリナちゃん。いずれにせよ、ソレは御主人様がお決めになるコトよ。メイドの立場から何かと口を挟むのは出過ぎたコトだと思うの」

「えっ?じゃミユリ姉様もOKされてルンですね?"社長夫人バトラー"として姉様も参戦されると逝う噂はホントだったんだ!あぁ、心強いわ!」

「ええっ?!チョ、チョ、チョッチ待って!"社長夫人バトラー"って何なの?聞いてないわっ!テリィ様っ!」

「わ、わ、わ!今宵ユックリ話そうと思ってたのに、そんな怒るかな?あ、怒るょねwとにかく!トロイさんが勝手にオファして来ただけだから!未だウケてないから!ホント!ミユリさんのカチューシャに誓う!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


過去を顧みないものは、必ず過ちを繰り返すと逝うけれど、過去を忘れられズに、ひたすら何度でも繰り返したい、と願う者もいる。


だが、愚直にそう願う者は、実は、知らないでいるだけなのだ。

想い出は繰り返す内にセピア色に色褪せてしまうと逝うコトを。


誰もが、いつか夢から覚める。

だが、今は考えないでおこう。


想い出は振り返るモノではない。

そうさ、新たに作るモノだから。



おしまい

今回は海外ドラマなどで見かける"80年代回帰モノ"をネタに、当時のB級アイドルグループの元メンバーやその娘、娘の御屋敷のコスプレ好きなメイド長、境界性人格障害のライダーヲタクなどが登場しました。


TVで見聞きするNYの都市風景を秋葉原に当てはめ展開してますが、今回はネタのシェイプアップを図り(コレでも笑)かなり整理しています。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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