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孤独に愛された私  作者: 三塚みちる
8/10

 八月八日

 合宿から帰って二日経った。私の腕にある傷も徐々に治り始めた。赤色は薄まっていたが、やはり傷跡は長時間かからないと消えない。

 朝方から、ふーちゃんからラインが来てた。母親と一緒の自撮りが一枚ともう一つは報告だった。「告白された」って。よかったな、ふーちゃん。ようやく彼と一緒になれたね。幸せを祈るよ、君の事を思ってる『私』が。


 今日は美咲と出かける約束をしてる。行先は東京スカイツリーだ。昨夜はその誘いの言葉を私に伝えるためだったんだ。午後五時頃アパートから出た後、駅まで歩き、そして電車を乗って目的地までいった。電車は割と混んでなかったおかげで、私たちは電車内での席が取れて、ゆっくりした感じで到着した。電車は空いてても、やはりスカイツリーでは列が並んでいた。


「先輩はここに来た事ありますか?」

「あるよ」

「へー、いいですね。私は初めてです」

「夜のスカイツリーの風景は本当に綺麗だよ」

「そうですか。なんか楽しみです~!」

 四十分ぐらい並んでから、ようやく順番が来た。チケットを払った後、私たちスカイツリーに上がるエレベーターを乗った。耳がキーンってするぐらい高い所まで登って行った。目的の階に着いた途端、私は子供のようにはしゃいで、すぐに窓の景色を見に行った。太陽の光がまだ空に輝いてたため、綺麗の夜の風景はまだ先の話。しばらく待ってる間に、私たちは一回その階をぐるっと回った。人は相変わらず沢山いたが、まだ道が通れるぐらいな程度だからよかった。


「どう、スカイツリー?」

「うん、なんかすごい場所ですね」あまり興味なさそうな表情で美咲は答えた。無理もない、今日の行先は私が決めた所だから彼女が気に入るわけではない。

「あ、あそこ行ってみよう!」私の人差し指は透明な床のある方向へ向かった。先に足を運んだのは私で、後ろから嫌そうな顔をした美咲がついてきた。私は先に透明なガラスを踏んで遠い地面の景色を上から見たけれど、美咲はまだガラスの所を踏まず、緊張感のある表情でじっと立っていた。


「何待ってんの?早く来いよー!」と、私は彼女を自分の立ち位置まで引っ張ろうとした。その瞬間、私は気付いたのだ、彼女の触れえた手を掴んだ時。恐らく、彼女は高い所が怖いんだ。通りで、いつもの明るさがないんだ。でもこの様子じゃ、彼女も自分の恐怖の事を認めたくないみたいだ。


「ね、」と、私は彼女の顔を近づきながら声を小さくした。「大丈夫、私がついてる。手、放さないでね」そして私は握った手をゆっくりと引っ張り、美咲を透明な地面まで連れて行った。目を瞑るか、私の方を見れか、とにかく下を向かない美咲であった。

 何分後、私は再び普通の地面にたどり着いた。

「ほら、終わったよ」

「あ、ありがとうございます」彼女はちょっと照れ臭い表情を見せながら返事した。

 まぁ、自分の弱みは嫌な短所を隠したいのは当たり前な事だから私もあまり言わない事にした。だって、秘密をバレたくない気持ちは私に一番理解できる事。私だって毎日本当の自分をマスクの下に隠してるんだもの。


 時間が経ってせいで、ようやく空が暗くなった。私は美咲を連れてまだ広い窓の方へ向かった。目の前に見せられたのは綺麗な夜の風景だった。車やビルの灯、全然実物に見えなかったからいつもとは違う景色が見えて本当に素敵だった。美咲にもその感情がちょっと伝わったみたい。なぜかというと、彼女の目はさっきの怯えた目から光ってるようになった。多分私たちは同じ佳景を目にしてた。


 眺めが終わったご後、私たちスカイツリーで晩ご飯を食べた。値段は高かったが、めったにないチャンスを見逃すわけにもいかないから、ここで食事する事にした。豪華な食事を甘いスイーツで閉めた。そして、私たちのお出かけが終了した。


 帰りに美咲は私の家に寄った。彼女を私の寝室に連れて行った。部屋では、私は自分の椅子に座り、彼女は私のベッドに腰を下ろした。

「先輩は私といると楽しいですか?」と、彼女は突然訪ねてきた。

 そんな感情なんてない。楽しくないに決まってる。

「楽しいよ」

 嘘。

「今日も楽しかったですか?」

 楽しくない。

「楽しかったよ」

 嘘。

「なら良かったです」と、微笑みながら彼女は声に出した。

「また今度一緒にどこかへ行きませんか?」

 嫌だ。

「いいよ」と、偽笑いをした私。

「先輩は家でやる楽しい事はなんですか?」

「私?うーん、私は基本一人で文章と小説書いてるから?」

「え!小説書いてるんですか?!読ませてください!」

「まだ終わってないよ」

「大丈夫です!読みたいです!」

「分かった。完成したら見せてあげる」

「やったー!」

 少しの沈黙のあと、美咲は再び口を開いた。

「それだけですか?なんかゲームとか遊びはしないんですか?」

「んー、しないね。一応私も大人だし」苦笑いしながら答えた。

「えー、つまんない」拗ねた顔で美咲は呟いた。

 私は席からたち、彼女に近づいたこう言った。

「じゃ、私が教えてあげよっか、大人の遊び方?」唇は狐のようなあざとり笑みに曲げて、彼女を見つめた。美咲はなぜか両目を大きく開き、驚いた表情を見せた。

「ふ、冗談だけどね」と、言った瞬間私はまた元の席に戻った。

「教えてください」その言葉に驚いた。私の冗談を本気にしてしまった。これは、やり過ぎたかな?

「いや、本当冗談だって。ごめん、ごめん」と、さりげなく誤魔化そうとしたが、彼女は突然立ち上がり、私の方をじっと見つめた。

「私は本気です。教えてください、先輩のやりたい遊びを。それが先輩を喜ばせる事ができるなら、私は知りたいです」

 まずい。地雷踏んじゃった。でもここまで来たら、断るわけにもいかないし。何せ私に利益のある事だ、これは。


「わかった、教えよう。私が言う楽しみを」

 久々にこんな風に人を抱いたな。最後は『彼女』と一緒だったって言う事を思い出す。あの人と過ごした時間も今になって役立つとは思いもしなかった。私は仰向けになってる美咲の上に自分の体重をのせ、そっと口付けをした。さっき食べた甘いスイーツの味が唇に残った。お互いの体温を分け合い、距離も縮めながら、彼女の身体に快楽と言うものを教えた。声も抑える事ずら出来なかった彼女は、部屋中に喘ぎを漏らし続けた。


 快楽を求めた私は利益を手に入れた、彼女を利用して、孤独から内緒で。


 これが、全ての始まりだった。

 彼女との関係。

 孤独への裏切り。

 そして、自分の罪の増。

 ここから先は戻れないことになった。

 線を越えた罰の話はここから始まる。


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