旅
私は孤独に愛されてる。家族と友人にも大切にされてるが、なぜか彼らの気持ちは私に伝わらない。まるで、私の感情に壁が建てられて、皆の感情をそれを通り抜けたいのに、壁が破壊する気配は一切ない。それで孤独と一緒に過ごすしかない。つまり、私の感情への扉を開けられたのは孤独だけ。やつの愛情しか伝わらない。通り抜けたという事に嬉しく感じるはずなのに、なぜ空しくて悲しい気持ちにしかならない。私には孤独がいるのに私はそれに愛情を与える事は出来ない。唯一私が愛を感じられるものに自分はその気持ちを返せない。仕方なく一緒にいる事しか私には出来なかった。
居場所も行先もない私はどこ遠くの所へ行った方がいいんだ。旅にでも出ようかな?
夏休みが始まってからやく一週間経った。毎日同じ事の繰り返し。大学の授業から休めるのはありがたいけど、毎晩同じことの繰り返しのせいでそろそろ腕が痛んできた。暑くてもバイトに行ったら出来るだけ長袖を着て、買い物やお出かけでも暑さに負けず頑張って隠そうとしてる私。腕にもう傷が作れないほど赤に染めていった。
一週間があっという間に過ぎてから、サークルの夏合宿だ。集合時間は午前十時、場所は新宿。一泊二日で泊まる場所は落ち着いた旅館だった。
バスに乗って空いてる席を探した。他の人と違って、私は特に誰かと一緒に座る約束をしてないから、一人で座るつもりだった。けれどまた、私の予定が壊された。
「隣、いいですか?」
私は鞄を自分の椅子の下に置き、彼女に席を譲った。
「どうぞ」嫌なのに、私は一般的な人間の行動のため、こうした。
「千代は来ないんですか?」
「ああ、あいつ来週帰るんだ」
「そうですか」
話はそこで終わり、バスは出発した。美咲がまた少し会話を始めたが、その後またすぐ静かになった。私は電車以外の乗り物あまり会話したくないタイプなんだ。時間が経って落ち着いたと思った時、ちょっと寝ようとしたが、意地悪な美咲がまたいつものいたずらを始めた。目を瞑ろうとしたら顔の前に手を振ったり、肩をツンツンしたり、時々息を振ったりした。けど、バスの中、そして皆仲良くするために行く合宿だから、私も怒る事は出来なかった。まぁ、出来てもしないだろうな、私。だって、私怒れないんだもの。
結局一眠りも出来ず、目的地まで到着してしまった。昨夜眠れなかったせいで結構寝不足なのに。着いてからすぐにグループと部屋分けが行われた。グループでは私と同じ講義と取ってる子と一緒だったが、部屋はまさかと思ったら美咲と同じだった。文学研究会だから、特にはしゃぐようなイベントはなかったが、皆はそれなりに盛り上げた以外と楽しかった。時間があっという間に過ぎ、夜が訪れた。夕飯、風呂と就寝の時間は自由だった。私は真っ先に友達と夕飯を食べたが、風呂は一番遅く入った。その理由は他でもない、私の両腕に刻まれた傷のせいだ。
午後十一時に私部屋の皆が女子会やゲームと始める途端に、服やシャンプーを持ってこっそりと温泉風呂の方へ逃げた。予想通り、その時間には人がほとんどいなかった。いたとしても、上がる人ばかりだった。私はゆっくりと入ろうとは思わなかったが、焦る事もしなかった。
髪と身体を洗った後、湯船に入った。他の人は今頃ゲームやお喋りで楽しんでるはず。私には孤独と過ごす時間が最も大切な事だと思ってる。そう、私を愛してくれる孤独がいれば他の誰もいらない。けれど、孤独といる時間がまた邪魔された。私の予定をいつも壊す彼女が現れた。
「こんばんは、先輩!」と、罪のない顔で美咲は私に挨拶した。その時、私は傷が見えないように必死だった。
「ん、こんばんは」と、私は眠そうな感じで返事をした。
「もう、遅いですよ。どうしてまだここにいるんですか?」彼女は身体を洗う準備をした。
「私は遅く風呂入るタイプだからね。君は?」
「私は自由時間になってからちょっと一人で散歩してきました。」小さな笑いをだしてから、彼女は髪を洗い始めた。
「へー、そうなんだ」
なぜか、羨ましかった。一人旅をしたかった私が、先抜かれたせいだからかな?
私はもう少しゆっくりして風呂に入りたかったけど、ここから逃げたいっていう気持ちもあった。この傷がバレる前に。けれど、考えてる間に時間がかかり過ぎて、いつの間にか美咲も風呂に入ってた。結局二人で温泉に入る事になった。
「何でさっきからジロジロ見てるのさ、君は?」
「いや、先輩の胸以外と大きなーって」視線を私の目に合わせず、ずっと下の方へ見てる美咲が言った。
「うるせえよ!」別に嬉しくもないけど悔しくもない、そんな事を言われて。そこで出るきっかけになった。「もう出る!」と、イラっとしてるように聞こえて、タオルと他に持ってきた物を手取ってから出口へ向かおうとしたが、お湯から出る瞬間に私の手首を掴めた美咲の手が触れた。痛い、痛い。けど今下手に動くと傷口がバレる。
「な、なによ?」
「待ってください。私も一緒に出ます」
「分かったから放して」
「あ、すみません」と、言った瞬間彼女が握ってた私の手を放した。私は早めに出て、体を拭いた。せめて袖と裾が長い私の上着を着たらセーフだ。
「ねぇ、君」と、私は美咲に声をかけた。
「はい」
「君がさっき散歩に行った所、私も連れてってくれないか?」
そして、私たちは旅館から出た。そういえばさっき美咲が全然部屋で邪魔しに来なかったな。外にいたからだったんだ。まぁ、そのおかげで私も一冊の本読み終わらせる事も出来たけどね。夜の涼しい風が髪当たり、爽やかな気分になった。全然どうって事ない後輩と一緒だとして、とても落ち着いてるような感じだった。基本、時間を費やすんだったら孤独と一緒の方がいいんだけど、平和な気分で他の人と一緒にいても悪いくないかも。
私と美咲は近くにある橋まで足を運んだ。そこには流れてる綺麗な泉が見えた。汚れてない、透明な水が流動だった。私は両手を手すりに乗せ、美咲は片腕を乗せ、私の方を向いた。
「先輩って、改めて見ると、本当に可愛いですね」彼女は微笑みながら言った。
「何?いつもは可愛くないわけ?」
「いいえ、もちろんいつもの先輩も可愛いですよ。ただ今日は風呂上りの見れて、もっと魅力を感じました」
その言葉を聞いて、胸の中から何かドキッとした。微妙にいつもの痛みじゃない、けれど何かときめいた。でも、なぜかそれが嫌だった。いや、怖かった。
「褒めてもどうもならないぞ」私は一瞬腕を組みながら美咲から逆の方向を向いた。
「え?照れちゃいました?」彼女は手すりから手を放して、後ろから顔を見ようとして近づいてきた。
「照れてねえし。もう、帰る!」機嫌悪い子供のように私は言った。速足で、先に部屋へ戻ろうとした私は、尻尾のように美咲も後ろからついてきた。部屋に戻ったら同じ部屋の子は皆寝てた。私と美咲も空いてる端っこの方に布団を敷き、眠りについた。
寝ようとした。だがしかし...
私が布団に入った瞬間、中から何かが潜ってきてるを感じがした。布団から顔を出したのはニヤニヤしてる美咲だった。しかも、顔が近くてウザかった。
「何やってんの、君は?!」
「布団の中が寒くてこっちに来ちゃいました!」と、罪のないような顔で彼女は答えた。
「寒いからって、当たり前だろう!まだ入ったばっかりだから。いいから、自分の布団に戻って」
「嫌です」
「なんでよ?!皆が起きたらどうするんだよ!」
その瞬間、私の腰周りが彼女の腕に巻かれた。
「少しだけです。このままにいさせてください」
ため息をついたが、私は彼女の許可した。いつになったら私はまともに人に断る事ができるのだろうか?でも、なんか久々だな、人の体温に感じたのは。夜が終わり、あっという間に明日が訪れた
*****
次の日、また合宿のイベントで頭がいっぱいだった。でもそのおかげで帰りの時いつも元気100パーセントの美咲も流石に疲れ切った、バスの中で隣に座ってもぐっすり寝てしまった。これで、短い旅が終わった。
そしてその夜、片付け終わってカッターナイフを持ってベッドに飛び込む前に、ドアベルの音がした。文房具を机の引き出しに隠し、戸へ向かった。玄関の向かうに立っていたのは私の後輩、美咲だった。
「入ってもいいですか?」と、彼女は丁寧に尋ねた。
「どうぞ」と、ドアを大きく開き、彼女を自宅に上がらせた。
美咲が家に来るのは初めてだった。