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孤独に愛された私  作者: 三塚みちる
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孤独と私

「あぁ...疲れた」


背筋を伸ばした私は呟いた。自分の指を絡み合い、両手を上に長く伸ばした。二時間もずっといすの上に座っていれば疲れる物だと知っていた私だが、まだまだ姿勢を変わらずにパソコンの画面をみつめ続けた。一度やる気を出すと達成感を得るまで止められない私は、どうしても終わらせたい課題があって、ちっとも動かなかった。


次時間を見た時は午前三時半だった。五時間以上暗い部屋に引きこもっていた私はようやく作業を終わらせた所で、やっと自分の気楽そうなベッドに入ろうとした時、ピンポンという音が聞こえた。これは間違いなく私の部屋の玄関のドア―ベル。こんな時間、私の同九人はもうぐっすりと寝ているに違いない。仕方なく私が見る事になった。そもそも誰がこんな夜中に来るの?そっちの方に私は興味深かった。

ドアベルは一回ではなく、何回かなっていた。うるさい。

「はい、はい!」

とイラっとした声で私は玄関に向かいながら言った。ドアを開けた瞬間に、見知る顔が私の目の前に現れた。

「どうした、こんな夜遅くに?お前、明日授業あるんじゃないの?」

彼女は多分私の声から気付いた、今あまりいい気分じゃないっていう事を。でもこの人はこんな事も知ってたはず、私は絶対に苦しんでるような人をほったらかしにできないっていうことも。ため息をついた後、私は「入れば?」と彼女に言った。本当、困ったもんな。私も、この子も。面倒臭い、本当に。


彼女は自宅に上がって、私が玄関のドアを閉めて鍵かけられる前に、自分の唇がロックされてしまった。ある意味キスされた。背中がドンと後ろのドアにぶつかり、手首を両方抑えられ、絶対逃げられない状況になってしまった。

美咲(みさき)...」

と口を離された瞬間に私は彼女の名前を小さく呟いた。

彼女の目は、捨てられた子犬のような、寂しそうな目をしていた。こりゃ否定するどころか、聞く事でもなかった。

「分かった。おいで」

今度はもっと優しい声で言った。私は彼女をギュッと抱きしめ、彼女もう私を同じように強く抱いた。


いつから、こんな事になってしまったんだろう?

いけない事なのに、やっている。

時間を巻き戻すなんては出来ない。

昔みたいに戻るのは不可能。

私は取り返しがつかない事をやってしまった。



これは、線を越えてしまった私への罰。

 これは、私がちょうど大学三年生の前期が始まった頃の話。私が住んでるアパート同じ大学の大学生ばかりで、近くに住んでる人たちも、その大学の学生。もちろん私その大学の学生。


「君、今日授業あるんじゃなかったの?いいの、まだ行かなくても?」

「あぁ、今日、先生用事あるから休みって」

「へー、 そうか」

 これは私と私のルームメイトの話。よく朝にやる会話だった。


 その後、私はそろそろ大学に行く準備をし始めた。十時頃に準備が終わって、玄関に向かって、アパートから出た。戸に鍵をかけたあとに、見慣れた顔が私の目の前に現れた。彼女はいつも通り、男っぽい服を着て出かけようとした。彼女の名前は美咲。十九歳。私と同じ大学に入学した新入生。


「おはようございます。」

 と美咲は、私と会うたびにする挨拶をしてた。私もいつも通りおはようと答えた。私と彼女の関係はただそれだけ。あの頃はまだそれだけだった。


 ちょっと遅くなったけど、私の名前は○○○子、よく子っちゃんと呼ばれてる。二十一歳。大三年生。私は今ちょっと変わってるけど、優しいルームメイトと二人暮らししてる。学校では中学の頃から友人になった、正反対な二人が仲良くしてくれてる。それから、最近ちょっと気にかかってる後輩がいる。その人たちは誰なのか、どうして私はそう言いえるのかは、これから説明して行く。


 私は、好きなように人生を送っている。それは「死」を考え続けるばかりということと、「孤独」と言う『奴』に愛されてる人生を送ってる。簡単に説明すると、頭ではその考え方をしてるけど、心は逆に反対な事を感じてる。だが、『心』という物をとっくに失われてしまった私は、当然感情より倫理を選ぶ。

 私は大学で日本文学を勉強している。初めて文学に興味を持ったのは小学六年生の頃、太宰治の人間失格を読んだ時。本の登場人物だったとしても、それを読んで『人間を理解できた』という気持ちを持てた。けれど、それは最初で最後の体験だった。


 太宰先生の作品では、書かれたものが全て主人公じゃなく、作者の本音に聞こえた。まるで彼が作った虚構な人間じゃなく、彼自身だった。

 それ以来私は文学に憧れて、興味を持った。色んな本を読み始めた。本は現実とは違って、他人の事を言葉で理解する事が出来る。人間っていうものが分かりやすくなる。私は、自分を苦しみばかりの考えより本に載っている嘘に絡まれている言葉を見るのが好き。

 けれど、私がどれだけ文学を好きになったとしても、自分の人生には不満の範囲が大きすぎて、どうしても好きになれない。死にたがりの私のままである。


 それはさて置き、今日の事を教えよう。まあ、そんな事言っても、ほかの日とはあまり変わらないけど。大学に行って、昼ご飯を食べて、晩ご飯もついでに買って、それからアパートに帰った。いつもの日常に変化なしの日々が続く。そう、私。ただ私と『彼』。『彼』は誰かというと...


 とりあえず『私が昔からずっと嫌いなストーカー彼氏』と呼ぼう。彼の名は「孤独」。


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