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七転び八起き

本日2話更新です。

ひとつ前からお読みください!

「では、コルツェさん。また、行ってきます。」

「ああ、いつでも帰っといで。」

「う……はい!」



 お城へと戻る日。コルツェさんの優しい声に、抑えていた行きたくないという気持ちがちょっとだけ溢れてくるも、首を左右に振って元気よく返事をする。またしばらく帰ってくることはできないけれど、コルツェさんもお城に来ることがあると言っていたので、それまでの我慢だ。

 挨拶を終えると、足元の魔法陣が光りだす。寂しい気持ちもあるが、頑張らなければ。そう思って、笑顔でコルツェさんに手を振る。困ったような顔で笑うコルツェさんが見えた瞬間、視界が真っ白に染まった。



「――っ、んぇ!?」

「む」

「め、メロリ!ついてきちゃったの?」

「コフー!」



 間抜けな声を出してしまったが、これは不可抗力である。転移の瞬間、メロリが顔にダイブしてきたため、そのまま連れてきてしまったのだ。どこか満足げなメロリを抱きかかえながら、どうしようかと考える。私自身は転移魔法を使えないし、そもそもそんなに簡単に使ってもいいものなのか。更に言えば、ガスパーさんに頼むのもちょっと頼みにくい、なんて。



「――お帰り、エナちゃん。」

「っ、アレクシスさん!」

「此奴が勝手についてきたんだろう?なら、大丈夫だよ。

婆さんも、問題があるならすぐに引取りに来るだろうからね。」

「それなら、良いんですが……。」



 転移した先はどうやら、アレクシスさんの執務室だったようで、執務机に頬杖をつきながらアレクシスさんが楽しげに喉を鳴らしこちらを見ていた。ディクトルさんは一礼した後、メロリを一瞥し私に視線を向ける。アレクシスさんは、特に気にすることはないと言ってくれていたが、訳あって預かっている風の精霊なら、何かあった時に対処ができるメロリさんの傍にいた方が良いと思うのだが。

 私に擦り寄ってくるメロリを見つめながら考えるも、結局自分ではどうしようもないため、コルツェさんが迎えに来るまでは、預かるしかないなと自己完結させた。困ったさんめ、ともこもこをぐりぐりしながらメロリを愛でていると、自分に影がかかり、腕にあった柔らかい感触が無くなった。



「あまり、くっつくのは禁止だよ、エナちゃん。

婚約者は、俺なんだから。

――お前も、あまり調子に乗るなよ。」

「え?」

「何でもないよ、エナちゃん。」



 影の正体はアレクシスさんだった。人のよさそうなイケメンスマイルでメロリをつまみあげ、私の頭にポンと片手を置いた。その後メロリに何か話しかけたようだが、私には聞こえなかった。

 アレクシスさんにつままれたメロリが少し膨らんでいるのを見て心配そうに見つめると、私の頭を一撫でした後、メロリを返してくれた。少し不機嫌そうなメロリはアレクシスさんを睨んでいたように見えたが、恐らく気のせいだろう。ちらりとアレクシスさんを盗み見るとその視線に気づいたようで笑顔で返された。

 そうこうしている間に、部屋の中にノックの音が響く。アレクシスさんは入室許可を伝えた後、執務机に向かった。



「アレク、入りますよ。

――おや、戻ってきていたのですか。

もう少し居なくても良かったのですが、まあ、いいでしょう。」

「はあ」

「アレク、例の件ですが、準備完了しましたよ。」

「ああ、ガスパー。流石、仕事が早いな。」



 ゆっくりと礼儀をわきまえながら入ってきたのはガスパーさんだった。私の顔を見るや否や嫌そうに顔を歪め相も変わらず悪態をついてきた。居なくてもいいなら私だってもっとコルツェさんのところにいなかった。なんて本音は大人げないので、心の内に秘めておく。

 完全に出るタイミングを逃してしまった。アレクシスさんとガスパーさんの小難しい話に一区切りがついたら、お暇させてもらうことにしよう。そう思って、メロリをもふもふしていたら、アレクシスさんとガスパーさんがこちらを見た。……嫌な予感がする。



「ねえ、エナちゃん。」

「……はい。」

「花嫁修業しに行こうか。」

「……は?」

「物分りの悪い頭ですね。

ニンゲン共の貴族たちが集まって、貴族としてのマナーや教養を付ける学園へ通えと言っているのですよ。」



 アレクシスさんがいつもの良い笑顔でこれまたとんでもない爆弾を落としてくる。それに反応できずにいると、ガスパーさんがこれでもかというほどワザとらしい溜息をつきながら、概要を説明してくれる。いや、流石にそれを理解しろというのは、ちょっと無理がある。ぽかんと開いた口がふさがらず、それをみたガスパーさんがまた深く溜息をついた。



「貴方には、この世界の常識や教養が足りません。いずれ来る公的な場で、この間のような粗相をされては、アレクの名誉にかかわりますからね。

ですので、手っ取り早くニンゲン共と同じところで学ばせることにしたのですよ。」

「学園、ですか。」

「ただし、貴方が魔法を使えるということと、魔王の妃になると言うことは、伏せて通っていただきます。

貴方程度の粗末な魔法であっても、ニンゲン共にとっては特異なもののようですから。」

「因みにこれって拒否権は、」

「ないよ、エナちゃん。」



 ガスパーさんの説明を聞きながら、頭の中で整理するも、うまくまとまらない。一応ダメもとで拒否権があるかどうかも聞いてみたが、案の定、食い気味に否定されてしまった。悲しい。



「では、ひと月後の編入までに、リリからある程度のマナーを教わっておいてくださいね。」

「頑張ってね、エナちゃん。」



 アレクシスさんのイケメンスマイルを背にふらふらと部屋を出ていく。どうやら、平凡にのんびり異世界生活を送れるのはまだ随分と先らしい。これから始まる、異世界での学生生活を想像しがっくりと肩を落とした。


次から、波瀾万丈学園生活が始まります!(予定)

ちょっとだけ、ざまぁ要素も入れていこうかと思っておりますので、

苦手な方はごめんなさい!


お読み頂き、有難うございました。

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