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ディクトルさん

ブクマand評価有難うございます!

「ディクトルさん、お手伝いさせてしまって、すみません。」

「否、構わん。これも鍛錬の内だ。」

「これ、結構力がいるから、本当に助かります。」

「ああ。」



 暫くコルツェさんのところで過ごして、ディクトルさんとは少しずつだが、距離が縮まって来たように感じる。まだ、あの無表情が何を語っているのかわかるわけではないが、今日は機嫌が良いんだろうな、くらいはわかるようになった。以前より良く話すようになったし、ディクトルさんとの関係は良好といったところだろう。

 ディクトルさんは小さな気遣いができる人だ。今も、私とメロリが齷齪と洗濯物の準備をしていたら、何も言わずに手伝ってくれた。表情が出ないだけで、本当はすごく優しい人なんだと思う。メロリはまだ少し警戒しているけれど。



「フーーッ!」

「もう、メロリ。どうしたの?」



 メロリはディクトルさんに近づくとすぐにもこもこの毛が倍くらいまで膨れ上がる。抱き上げて、その毛を撫でてあげると、少しずつは戻っていくのだが、それでもまだ普段よりも毛は膨張している。この間、はじめて彼らが来たときも、メロリはずっと警戒していたが、それほどまでに、彼らを嫌悪しているのだろうか。それとも、他に理由があるのだろうか。



「――風の精霊とは、相容れない。」

「え?」

「俺は、火の魔力を持つ一族の者だからな。」



 難しい顔をしながらメロリを撫でていると、ディクトルさんがゆっくり口を開いた。何の話か一瞬わからず、ぽかんとした顔でディクトルさんを見上げる。私の反応に私が理解していないことを悟ったのか、ディクトルさんは話を続けた。



「属性同士にも相性があり、そこには性格や、種族の壁はもちろん存在する。水と火程ではないが、温厚な風の魔力を持つ者は、気性の荒い火の魔力を持つ者があまり好きではない。

俺からは、それなりに強い火の魔力が出ているから、風の精霊であるこいつにとっては、不快でしょうがないのだろう。」

「はへぇ……。」

「それから、余談だが、アレクシスは、闇の魔力に溢れている。

俺たちが来たときに嫌な気配がしただろう。お前の中の魔力が闇の魔力に反応して、体調に影響を及ぼした。

魔王であるあいつには、意図的にその魔力を軽減させる力もあるが、あの時は敢えてそれをしなかったのだろう。」



 そういえば、あの時はコルツェさんが帰ってきてから、嫌な気配が和らいだ気がする。コルツェさんが何かしてくれたのかな、とも思ったが、アレクシスさんが、魔力を抑えてくれたのだろう。それに、ガスパーさんも同じようなことを言っていた気がする。まあ、あまり覚えてはいないが。



「メロリ、ディクトルさんは良い人だよ。大丈夫。」

「コフ」

「もー。」



 メロリと目を合わせて言うも、不貞腐れたようにメロリは目を背け、私の胸に顔を埋めた。苦笑を浮かべながらもこもこを撫でると擦り寄ってきたので、多少は気分が良くなったらしい。



「本能的なものだ。どうしようもないだろう。」

「そんなものなんですね。

――そう言えば、ディクトルさんて、魔族の方、なんですよね?」



 メロリを抱きしめ、少し躊躇いながらも予てからの疑問を口にする。真っ黒な髪に真っ赤な目のアレクシスさんはまさにTHE魔王といった風貌だが、ガスパーさんとディクトルさんは一見普通の人間とそう変わらない。お城にいた時にみた他の魔物は、人の形をとっていてもどこか不完全で、角が出ていたり、肌の色がその魔物の色だったり。だが、ガスパーさんとディクトルさんは完全に人のそれだ。だが、今の話を聞いている限りでは、やはりディクトルさんは魔族なのだろう。であれば、何の魔物なのか、そんな好奇心を掻き立てる。



「そうだ。俺はムスペルという巨人の一族に生まれた。

集落に住んでいる頃は、他の一族の者と変わらず本来の姿に近い形だったが、アレクシスに出会って、今の姿まで擬態できるようになった。」

「巨人さんなんですねー!」

「ああ。炎の巨人と呼ばれ、南にある火を祀る土地に住んでいる。」

「火を祀る土地……。」

「絶え間なく燃え盛る炎の中に集落があるんだ。」



 なるほど。炎の巨人と聞き、ディクトルさんの少し褐色の肌や、人よりも体温が高いところにはそういう理由があったのだと納得した。しかし、炎の中の生活というのは、聞いているだけで少し息が苦しくなってくる。もしやムスペルという一族は炎を食べたりするのだろうか。



「……言っておくが、炎を食べたりはしないぞ。」

「えっ!」

「お前はすぐに顔に出るな。」

「そ、そんなことは……すみません。」

「いや、構わん。食べずとも、炎を魔力として取り込むことはあるからな。」



 声に出して言ってしまったのかと思ってしまった。そんなにも私はわかりやすいだろうか。素直に謝罪をしたものの、魔力を補填する点では正解だったようで、ディクトルさんはまた優しくフォローしてくれたようだ。


 そんなこんなで、ディクトルさんとの距離を縮めながら、帰省の日々はゆっくりと過ぎて行った。

ディクトルさん、褐色肌設定にしました!出会いのところも少し書き換えております。


お読みいただき、有難うございました!

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