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気分は保母さん

今日は二話更新です!

一つ前からお読みください!

 ワーウルフと、ガルムの子供と戯れてから、数日、既に日課になりつつある廊下の掃除をしていると、彼らが遊びに来てくれるようになった。最初は2匹だけできていたのだが、ワーウルフの子供、ウィルが面倒を見ていたのは、狼や犬のような見た目の魔物の子供らしく、彼らにつられ多くのもふもふが私のもとへと集うようになってきた。日々もふ充である。

 お披露目が終わってから、アレクシスさん達はニンゲンの国王へ会いに行くとかなんとかでお城を空けているし、自由にしていたとて、問題はないだろう。



「きゅーい!」

「ガルルルルル……」

「よし、みんな準備はできた?じゃあ行くよー!

よーい、どんっ!」



 遊びたい盛りの子供たちと遊びながら、日課をこなす為に、子供たちに雑巾リレーを提案してみた。賢い子が多いのか、すぐに私が言ったことを理解し、そこから毎日この調子である。もふもふたちが尻尾を揺らして廊下を走り回る様子はもう眼福の一言である。

 しばらく雑巾リレーをした後は、風魔法で廊下を乾かす作業。水魔法と風魔法の基本動作はほぼ完璧なのでは、と自画自賛しながら乾かしていく。廊下があらかた片付いたら次は、どろどろになってしまったもふもふたちを綺麗にする番だ。


「王妃様、終わりました!今日も綺麗になりましたね!」

「みんなよく頑張ったねー!じゃあ、中庭で水浴びしようか!」



 ウィルがみんなを整列させ、私のもとへと嬉しそうに報告しにくると、よくできましたとみんなをほめた後、次の指示を出す。すると、私の掛け声とともに、子供たちは一斉に中庭へ駆けていく。その際汚れた廊下をちゃちゃっと水魔法と風魔法で流した後、私もリリさんと中庭へと向かった。

 城の大きさに比例して、中庭もかなり大きい。子供たちはまだ遊び足りないようではしゃぎまわっている。その可愛さにきゅんきゅんしながら、部屋着のスカートを縛り直し、駆けて近づく。足を出すことに、最初はかなり怒られたのだが、結局リリさんが折れてくれたので、困った顔をしていても見ないふりをする。リリさん、ごめんね。



「王妃様っ!お願い致します!」

「ぷきゅぃ!」

「よーっし!行くよー!」



 目をキラキラさせた子供たちに向かって手を翳し、ホースをイメージして水を放出する。僅かながら差す日の光に反射して、キラキラと光る水を前に子供たちは更にはしゃぎ始める。楽しそうな子供たちを見ていると私も少し気が乗ってきたので、前に翳していた手を上にあげ、噴水のように放射し、自らもそれに混ざる。流石にリリさんは後ろの安全圏で控えていたが、尻尾を不安げに小さく揺らしているのが見えた。

 水のシャワーで水浴びを終え、次は風魔法で乾かそうと水を止めたと同時に、感じたことのある嫌な気配を感じ、動きを止めると、後ろから低音の色っぽい声が響いた。


「――随分と刺激的な格好じゃないか、我が妃殿。」

「陛下っ!」

「アレクシス陛下、お帰りなさいませ。あの、これは、」

「ああ、いいよ。エナちゃんに聞くからさ。」



 ゆっくりとこちらへ近づきながら、アレクシスさんは、パチンと指を鳴らす。すると、私も子供たちもびしょ濡れだったのがウソのように乾いた。流石、魔王様である。

 ウィルを筆頭に子供たちが嬉しそうにアレクシスさんを歓迎する。それに笑顔で手を振ったアレクシスさんは、子供たちを森へ帰るように促した。ウィルも子供たちも嬉しそうに飛び跳ねながらぺこりと頭を下げ、森へ戻っていく。

 リリさんが気まずそうに頭を下げながらアレクシスさんに弁解しようとしてくれるも、アレクシスさんは色のある笑みを絶やさず私に問いかける。後ろに控えている、ガスパーさんとディクトルさんは少し顔を赤くしながら、こちらに目を向けないようにしていた。



「お、お帰りなさい、アレクシスさん。」

「ああ、ただいま、エナちゃん。」



 自分の格好を見下ろし慌ててスカートを下ろした私は自分が持てる最大限の作り笑いを浮かべ、挨拶をする。しかし、アレクシスさんはそれでは誤魔化されてくれなかった。それどころか、私の腰を引き寄せた後もう片方の手で私の顎を掬いあげ、鼻と鼻が触れ合う間際まで、端正な顔を近づけてくる。



「あっ、あの、アレクシス、さん……!」

「それで、あんな格好で、何をしていたんだ?」

「っ、!」


 アレクシスさんはくすりと笑うと耳元へ唇を寄せこれでもかと言う程良い声で、囁いた。耳にかかる吐息が擽ったくて、身を捩るも解放してくれる様子はない。何も悪いことはしていない筈なのに、それを弁解する声もでない。



「ほら、エナちゃん。教えて。」

「ひ、ぅっ……!」



 腰に回されたアレクシスさんの手がするりと腰を撫でると、思わず声を上げてしまう。すかさず自身の両手で口を抑えるも間に合わなかった。真っ赤になった顔を隠すように少し俯くと、至極楽しそうな笑い声が聞こえ、アレクシスさんと少し距離が出来た。



「少しからかい過ぎたね。魔物の子供たちと遊んでたのかい?

何をしても構わないが、少し慎みを覚えた方がいいかもしれないね。」

「う、す、すみません……。」

「っ、そ、そうです!貴方は仮にも!アレクシスの、魔王の妻になる女性なのですよ!?それなのに、そのような、はし、はしたない格好を!!!」

「……気をつけた方が良い。」



 またからかわれた挙句、慎みをもってなんて笑顔で注意されたらもう恥ずかしくて頭が上がらなくなってしまった。その声に畳み掛けてガスパーさんとディクトルさんにも注意される。いつも冷静に悪態をついてくるガスパーさんがここまで動揺しているのを見ると、本当にやめた方がよさそうだ。リリさんも後ろの方でうんうんと頷いている。



「誰も居ない所なら構わないよ。例えば、寝室、とかね。

――なんてね。さあ、食事にしよう。食事をしながら俺が居なかった間のことを教えて。」



 ちらりと視線だけアレクシスさんに向けると、優しげな口調でとんでもない爆弾を落とされた。悔しげにまた視線を向けると、ぽふ、と大きな手で頭を撫でられる。心臓がトクンと揺れたのは、気づかないフリをした。

やっとアレクシスと絡められました……!

急なドキドキシーン、大丈夫でしょうか?


今回もお読みいただき、ありがとうございました!

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