ストーカーというのは意外と間近にいる
「だーかーらー、成績一位だった幸ちゃんとは初めて会ったんじゃないって言っているのですわ。」
「俺はそんなこと一言も言ってない。なに勘違いしとるん、恥ずいわ。」
「この私が忘れるわけないでしょう。」
「友悟、帰ろ。今夜ゲームする約束だよなぁ?」
「う、うん!今夜こそ勝つからね!」
「ちょっと、無視しないで下さる?」
なんなんだこいつ少しウザいぞ。こっち忙しいって言ったような気がするんだけど、スルー?まぁ、放っておけば諦めるだろうと思って友悟の腕を引っ張って行く。周りを見渡してみると少し見られていたことに気が付いて、少し恥ずかしくなったから歩く速さを上げた。多分今顔赤いかもと思いながらあの危ない奴の声が聞こえなく、離れることにしか集中してなかった。
「それだけじゃないわ、昔の幸ちゃんの身長は156cm、今より丁度21cm低く、体重は平均以下。今はやっと平均というところでしょうか。あ、前になかったほくろが首にできてるわね、チャームポイント?そして、幸ちゃんの名前の由来は…」
「黙らんか!」
話し声を無視できず聞いてしまった。聞いているほど反吐が出そうだった。そして遂に俺の名の由来を言いかけたところで全て爆発した。俺は大勢の前で叫んでしまった。皆の視線が俺等に向かれる。一人は怯えた顔したり、一人は泣き出したり。友悟も目を見開いて少し震えている。
「先帰る。」
長い沈黙の後、その言葉だけを残して走り出した。無我夢中で走った。前にいた人は退いてくれたり、俺を見てクスクスと笑っていたり。ムカつく。ムカつく。ムカつく。なんであいつは知ってんだ?そもそもあいつは誰だ?何で俺のことを知ってるんだ?
俺はある嫌な考えにたどり着いた。
ーストーカーー
人につきまとって追いかけまわす人物。嗚呼、ジーザス、俺は何か悪いことでもしたのでしょうか。本当に、俺みたいな平凡でどこにでもいそうなモブがストーカーなんかにつきまとわれて。これは確実に天罰だ。
若干涙目になり、家の鍵を開ける。親は今日仕事でいない。都合がいいと思い、部屋に入り机の上に荷物を出す。スマホを取り出し、イヤホンをさし音楽を選ぶ。それと同時に筆箱から鉛筆と消しゴム、机にあった白紙を数枚取り絵を描いた。流れる音楽に合ったイラストを描き、そろそろSNSで募集したイラスト等を終わらせる。意外といい出来だと呟き、SNSに乗せた。一分も経たないうちにラブが数個付いた。依頼人もDMの方でお礼を言っているので返した。
「友悟遅いなぁ。」
そう呟きながら鉛筆を走らせている。スマホのミュージックプレイヤー画面を少し見てからまた描きかけのイラストに向かった。ピコンという通知音が聞こえ、通知を見るとラジオサイトでのコラボのお誘いをDMで貰った。今日は友悟とゲームする日だし、断っておこう。明日は土日だしと思いながら断りのメッセージを打っていた。送信したと同時に家のドアが開き、外からただいまの声が聞こえた。鉛筆を筆箱に戻して弟の出迎えに行った。