第四楽章 迷宮出現
チートの概要に少しだけ触れています。
今回は異世界にダンジョンが多数発生したお話です。
「緊急連絡、緊急連絡、ダンジョン発生、ダンジョン発生・・・やばい、逃げろー・・・」
皇宮の会議室においてある、連絡用の魔道具が光だして緊急を告げた。その魔道具からの光が消えたと同時に、また新たに光出した。そして、また、新たなダンジョンの発生を告げる。今回は遠国の公爵領で出現が確認したと連絡が入った。
ざわついた会議室にまた、静寂を生むような大きな音を立てながら別の連絡用の魔道具を持った侍従長が入ってきた。一瞬会議室に静寂が訪れる。だが、それを打ち破るように魔道具から、悲鳴が聞こえた。
「お父様助けて・・・私の、私の・・・息子が・・・ダンジョンに飲み込まれたの・・・・」
それは隣国のルイス王国に嫁いだカリーナ第一姫から一報だった。ちなみにカリーナの旦那はルイス王国の国王である。
そして、子宝に恵まれたカリーナからの話では、ルイス王国にある辺境伯領でダンジョンが生まれたそうだ。
ダンジョンは辺境伯が管理しているとてもきれいな避暑地のような王室御用達の別荘地に発生した。
カリーナはその避暑地で王国の雑多な日々から逃れるように、子供たちと過ごしていたそうだ。
たまたま、子供たちが湖畔で遊んでいたとき、突然、空が暗くなり霧が発生した。それとともに、大地を劈くような大地の嘆きがあたりに響きわたった途端、湖畔が割れながら裂けた。湖の中央には今まで存在しなかった小島が突然できた。
その小島には対岸からもわかるような、大きな口を開けるように洞穴のようなものが見えた。
その洞窟を対岸から見ていると、王族の警護に当たっていた者が小舟を使って小島にわたりダンジョンを確認したそうだ。
そして、ルイス王国第一王子であるレンと従者もダンジョンに向かった。
出来立てのダンジョンは流動性が高く、遊び感覚でついていった長男がダンジョンの飲まれてしまった。
取り乱したようにルイス王に連絡する前に、父であるロザーナ皇に連絡してしまったそうだ。しかし、ロザーナ皇がレン王子救出に、手練れである俺と聖女で妹であるスレーナ姫を送るというと少し安心したようだ。
他国に可愛い孫皇子の救出のためであれ、軍隊を送れないことにロザーナ皇は意気消沈していた。しかし、冷静にカリーナがルイス王に連絡をとるよう説得した。そして、軍隊を送るようお願いするように進言するようにいって納得させた。そして、できればロザーナ皇国にも派兵の要請するようにルイス王に伝えてくれといった。
その一部始終をモニタリングしていたかのように、空きっぱなしの重いドアをコンコンと鳴らしながら幼女スレーナが入ってきた。
「お父様・・・王様。お姉様の件で失礼いたします。以前からこのようなことが起こると神託でわかっていたので、ルイス王には事前にこのことを告げておりました。もし、起きた場合は私とリッシェルで対応すると取り決めがありましたのよ。」
「どういうことだスレーナ姫。ダンジョンができることを知っていたと申すか。」
「ハイ。皇様。しかし、同時に8か所もダンジョンが生まれる可能性まで気づきませんでした。神託は8つのダンジョンが生まれるということで、それぞれ、予言のような神託がおりていたので対応はそれなりにしてまいりました。」
「まさか、レン王子が飲み込まれることを知っていれば。でも、いや・・・まさか、わざとルイス王は我が国に隣接している辺境拍領にレン王子いさせたのか。」
「その通りでございます。もし、王族貴族が住んでいるルイス王の首都ルッカでダンジョンが発生した場合、大混乱が起き、他の隣国からの争い事や災いも引き寄せる可能性があります。しかし、うまくダンジョンが管理できれば巨万の富を生む代物ですので、我が国との接する場所にあえて辺境領にいたんですのよ。カリーナ姉姫も納得してたのに・・・慌てて連絡を皇様にするなんてね。まだ、心の準備ができてなかったのですね。」
皇様は少し腰を抜かしたようにかすれた声でスレーナに聞いた。
「孫のレンは無事なのか。」
「当然ですわ、命の危機がある場合には緊急転移するための魔導具を携帯させてますわ。本人も呪われた運命と思って攻略する意気込みを見せていたのかもしれません。だからといって、あの年で本気でダンジョンに挑むとは誰も思いませんでした。でも、本気なら、それなりのちゃんとした装備を用意していたのかもしれません。でも、まー、あの年ならば、1階層のマップぐらい作れれば上出来ですけど。」
「無事なのか。よかった。しかし、もしかして我が国にもできたダンジョンについても聖女であるスレーナ姫に降りていたのか」
「ハイ。でも利用価値がなかった砂漠地帯に、タワー型のラビリンスができるというお告げだったので、魔物被害も出にくく、ましてや、オアシス都市として発展できそうなのでしばらく様子見でも良かったんですが・・・・」
「はっきりともうさんか。スレーナよ」
スレーナは急に罰が悪くなったかのようにもじもじしだした。
そのタイミングで俺はスレーナの魔法で会議室に呼び出された。
「皇様、急に現れて申し訳ございません。実はこの会話もスレーナとテレパシーで会話していたため、我が説明いたします。皇さま、考えてください。同時に8か所もダンジョンができれば、その富により戦乱に巻き込まれる可能性があるといえば・・・察することありましょう」
「国力が上がると同時に不の面ができるということか!」
「その通りでございます。一国なら政で何とかなりますが、他国が国力増加に伴う軍事力の強化を行えば、近い内にバランスが崩れてしまいます。そして、戦争が起きれば厄災が厄災を呼び寄せ、最悪の場合には国が亡ぶ可能性もあります。」
重い口を開けるようにスレーナが声を上げた。
「同時ダンジョンの発生なんて邪神もしくは、悪ふざけをしている神々の戯れにほかなりません。でも、神々が、今、この世界の国々で王者の資質がある者を見極めているのかもしれませんわ。」
皇は天に祈りながら膝まづいた。
「天は乱世の中で救世主をお求めになられたいと申すのですか・・・主よ・・・」
スレーナは神と向き合っている皇様をしりめに、魔法陣で俺と転移しようとした。
「取り合えず、レン王子を救出してまいります。それではよいご報告お待ちください。お父さん」
「いいのか、スレーナ・・・」
後日、最相に聞いたところ、俺の声が最後に会議室に響いてたそうだ。
それはともあれ、転移魔法陣があられたところは殺風景な小屋である。窓からは湖の湖畔が見えており、小屋の中にはある程度の武器や防具などが無造作に置いてあった。
スレーナは一つ息をを整えて俺の方をみた。
「カリーナ姉さまを紹介するわ。でも、一応言っておくけど、本当は以前にあったことがある記憶がカリーナにはあるからね。よろしくね。リッシェル。」
「わかってるよスレーナ。それより、レン王子は本当に大丈夫なのか?」
「神託によれば、生贄の祭壇にいるはずよ。新たな魔王転生させる贄としてね。つまり、私が行かなければ大丈夫なのよ。」
「あちゃー。スレーナったら魔王宣言自分でしちゃったよ。」
「いや、その、なんていうの。魔王がこの異世界では一体であればの話だよ。」
「どういうこと。スレーナ・・・もしかしたら、俺達が倒したことになっている魔王が、どこかにまだいるということなのか。」
スレーナは大きく左右に首を振った。
「初期設定のこの世界では魔王は一体だけよ。でも、神様見習いという者たちが合作してこの異世界は不安定要素が満載なのよ。だから私たちがいるんだからね。」
「まさか、生贄の祭壇の間ということは、ダンジョンをダンジョンに発生するモンスターを蠱毒にして強い魔王を体現させよとしているのか。スレーナ。」
「魔王の体現の可能性は湖畔中央のダンジョンだけとは限らないけどね。でも、今回発生したダンジョン数と今まであった旧ダンジョンを合わせると15体。そして、知られていないダンジョン3つを合わせると18体ね。」
「あのースレーナさん。知られてないダンジョンとかって何?」
「ごめん、ごめん廃棄されているダンジョンもあるから21体だわ。間違えちゃった。テヘペロ!」
そんなおどけた幼女の仕草に対して、俺は手を目の上にあてるほど、あきれたそぶりをわざと見せた。
「スレーナぶっちゃけ、このデスゲームはどのくらいで攻略すればいいの?」
「別に攻略する必要はないんだけど、この魔王の指輪があればね。でも、この鬼畜仕様になった異世界は駄目かもしれないから・・・・うーん・・・・ゆっくり攻略しましょう。」
「もとAIだったスレーナが予測が立たないどころか、ゆっくり攻略しようというのはどういうことだい。」
「単なる詰将棋よ。こちらが派手に攻略しようと思えばそれなりに、ゆっくり丁寧に攻略すればそれなりなのよ。だって向こうも、最新鋭のAIがシステムを運営しているんだからね」
「そういうことなら、向こうのAIには派手にばれないように動かないとな」
「わかってるー。リッシェル。こうなる可能性も加味したから、リッシェルにはまだチートを施してないんだから。でも、相手AIの出方が大体わかったから、裏技チートで攻略しましょう」
俺はある意味、夢と期待に満ち溢れた顔になっているスレーナが可愛くて仕方なかった。
「で、俺はどうすればいいのかなスレーナ。」
スレーナはニコッと笑う悪魔に見えた。
「一緒に地獄に落ちましょう。リッシェル。」
「スレーナとなら地獄でもおいしいケーキをたべたいな。好きだよ。」
「ハゥ。二人っきりだけだから今回はOK。なんだから。それより裏チートを説明するよ」
そういうとモジモジしながらスレーナは裏チートの説明し始めた。
「簡単に言うわね、生きた神様になることよ。」
えーーーーーーーーーーーー
俺は湖畔まで届くような声で叫んだ。
スレーナは耳をふさぎながらしゃがんでしまっている。
「うるさい。そんな大声を出すと、声枯れるわよ。この裏チートは作戦ともいえるものなのよ。」
「勇者召喚した勇者が本当は救世主?新人神様を間違って召喚してしまったとね。この異世界のシステム運営AIはさぞかし驚くわよ。だって神の御業が当たり前に轟くんだから。」
「でもさっき地獄に落ちようって言ったよね。まさか邪神にでも、する気さえあるのかな?スレーナ」
スレーナは幼女の姿で敬礼をした。
「違います。ただ、生き神様であればいいとは思っております。」
「なんだそのへんてこ敬語は・・・・いいぜ。なんとかなるだろう。スレーナは俺色に染めたいが、俺は君色に染めてくれ」
そういうと、俺に飛びつくスレーナであった。俺はこのとき、地獄の特訓ともいえる修行が待ち受けているとは知らず、スレーナに言われるまま、カリーナ王妃に会うこととなった。
次回からは王道のレベルアップの話になります。
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