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第三楽章 波乱の予感

皇様との謁見の続きです。

ロザーナ皇との謁見も終わりに差し迫ったところ。一人の皇様の従者が慌てふためいて駆け寄ってきた。


「大変です。我らの皇よ。大至急、火急の案件が・・・」


言い終る間に、大聖堂に大怪我を負った者が担ぎこまれた。


二人の近衛兵が担いできたものは、既に生き絶え絶えの様子であった。歩くこともできず、引きづられた床には真っ赤な絨毯がどす黒く一匹の大蛇が張ってきたようにも見えた。


担ぎ込まれた者は、明らかに黒装束であることから暗部の者の様だ。


騎士団長の一人が皇様の従者に駆け寄り胸ぐらをつかんだ。


「無礼であろう。皇の御前でであるぞ」

「ヒー。あゎわ。ですが、あの者の話をきいてください」


今まで担いでいた衛兵は、騎士団長のあまりの迫力で、傷ついて血だらけの黒子は大聖堂のど真ん中でに放り出してしまった。慌てて、担いできた衛兵の一人が、四股がだらけている黒子を持ち上げようとしたとき、黒子は首を皇様のほうに向け今まで開けることのできなかった、マブタヲゆっくりと、力強く見開き始めた。


「ロザー・・・・ナ皇よ・・・この城に・・・魔物・・・が・・・すぐ・・・そこ・・に・・・おに・・げて・・・く・・・」


黒子のその一言で、今までの荘厳で皇の威厳に満ちた謁見の義が、厄災の前触れともいえる不穏に包まれていく。


第一騎士団長は皇様を死守するかのように皇様の前に立ち塞がり、大声で他の騎士団長に発破をかけた。


「皇を死守せよ。この大聖堂に何人たりとも通すでないぞ。我ら騎士団の長たる者がする行動はわかっているよな」


騎士団長達よる雄たけびが、大聖堂に戦場のような怒声が響かせる。


しかし、次の瞬間大聖堂の天井を突き破り、あたり一面が光に覆われた。一瞬の間をおき、落雷が轟く。1回、2回と3回と大聖堂にいた者たちを震えさせるには十分であった。


数秒の緊張と怯えにも似た恐怖の感覚が襲う。そのような臨場感を打ち破るかのように、踊り出す幼女。


騎士団長達はおろか、皇様や皇妃様も、幼女のお遊戯をしている姿に目をぱちくりさせた。


たまらず皇様がスレーナに声をかけた。


「スレーナ姫・・・何をしておる・・・この落雷も・・・」


俺は皇様が言い終る前に幼い姿のスレーナをひょいっと猫の首を持つように引っ張り上げ、そのまま空中に舞い上げる。


スレーナは子猫のように空中で2回転している。そして、また、大聖堂が光につつまれる。今度は真っ赤に染まる光で熱波を巻き起こした。みんなが気付かぬうちに俺の背中におんぶしている幼女スレーナは何とも愛らしかった。


大きく天井が開いた大聖堂に、焼け付いた床を冷やすかのようにヒューヒューと風が吹く。


騎士団長達は何が起こったかわからず、パニックを起こす寸前のように、口をパクパクしているものまでいた。


少し土煙まで待っていた大聖堂の視界が晴れたとき、床に転がっているはずのない死体が3体が散らばるかのように焼けた肌をさらしていた。


先ほど皇様に火急の要件があるといった皇の従者が焼け死んだ死体の一体である。後の2体は怪我人を運んできた衛兵であった。死体をよく見れば魔物が変化していたとわかった。


俺は微動だにせず、この状況をあるがままに分析したようなことを言ってみた。


「魔王の配下の者がこの皇国にもいたようですな。魔王がいなくなったことで正体をさらしたのだな」


スレーナは俺の言葉をただすように付け加えた。

「リッシェル・・うーん。半分正解!復讐よ。魔王のリングを使用してないからよ。だから、魔王のリングで命令される前に皇や私たちを暗殺しようとしたのよ」


「魔王のリングというのは魔族の王の証・・・悠久のリングは魔族をすべる力があるというのは本当の様だな。確認の為にこのリングを行使させたいが皇様よろしいかな」


俺が魔王の指環をかざし左手の中指に着けようとしたとき、俺の頭をポンポンしながらスレーナが叩いた。



「ダメよ。リッシェル。魔王のリングで貴方の心が穢れることがあったらいやなのよ」

「スレーナ。じゃあ、どうすればいいんだ。俺の生きざまが変わることはないんだから」


皇様は今いる状況がわかったかのように立ち上がった。


「スレーナ・・・お前がこの大聖堂を破壊したのか。いや・・・我ら大聖堂にいたものを魔物から守ってくれたのか?」


「そうよ、お父様・・・皇様、私はひそかに、この国に持ち込んだ、魔王のリングが魔物に「狙われるのではないかと思っていただけですわ。そこに変装した魔物が皇の従者となって表れたから確信しましたのよ。それに、このものたちは魔物臭が凄いんですもの。気付かない方がおかしいですわ」


その言葉を聞いたスレーナの二人の妹がクンクンと目をつむり、鼻を引くつかせた。


スレーナは二人の妹の姿を見て少し恥ずかしそうに言った。


「大丈夫よ。妹たちからは良い匂いしかしないよ。私は魔物に襲われるような旅に出ていたせいで、香水の一つもつけてないんだから。私を匂わないでね。それに、女子のたしなみとして匂いには敏感なのよ。まして魔物の匂いには特にね。」


「そうですわよ。スレーナお姉様はいい男の匂いもかき分けることでも超一流でしたわ」

「そういえば、スレーナお姉様はかわいらしいモフモフな者の匂いを嗅ぐのも好きでしたわ」


スレーナは俺の背中から、大道芸のお猿さん張りに飛ぶ。


ゴチン! ゴチン!


「「痛いですわ!お姉様!これ以上、お姉様の秘密を話しませんわ」

「よろしい。二人は後で私の部屋に来てね。待ってるわ!」


あー妹姫はやらかしちゃったな、スレーナ・・・目が笑ってないよ。


俺は妹姫達の頭をなでなでしながら、スレーナにいった。


「俺はスレーナの匂いが好きなんだ。俺の匂いは嫌いか!」


一瞬でスレーナの顔が燃え上がったように真っ赤になって後ろを向いた。


「うー。リッシェルの意地悪。そういうのは二人だけにしてよ」


こんなデレた娘を始めて見たのか、皇妃はクスクスを笑った。

「可愛いわねスレーナったら。でも、大聖堂を壊さないまでもスレーナだったら何とかしたんじゃないの。」


「ごめんなさい。お母さま・・・皇妃様。だって、皇宮に出入りしているような魔物だから、暗器の一つでも持っている可能性があったから・・・チョビッだけ力を示さないと、他の潜んでいる魔物が襲ってくるかもしれないと思ったから」


俺はスレーナにも頭をよしよししてあげた。

「スレーナは時間稼ぎをしたんですよ。魔王のリングを使用するまでのあいだ」


スレーナは俺の顔を見上げながら一つ頷いて見せた。そして小声で神の御業を解析できる私の前では魔王の指環ぐらいどうということはないのよ。


そうつぶやくと、魔王の指環を俺から奪い一番太いであろう親指にして見せた。

指輪をした手を振りかざした。スレーナは目をつむった。そんな刹那な動作をした瞬間、魔王の指環がキラリと光った。そして、スレーナはぼそぼそと口元を動かしてしゃべっているようであった。


ルーナという言葉が聞こえた瞬間、騎士団長達の一人が発狂した。


「あー・・・わぎゃー・・・マイ・ロー・・ド・・・我の忠正は御身と共に・・・」


発狂した騎士団長は床に転げながら、崩落した天井の破片で血だらけになっていった。そして、だんだんと転げる回る動きも鈍くなりはじめた時、騎士団長の口から、黒い影が抜けるように出ていき、霧のように発散した。


それと同じように、幼女ロザーナも少し疲れたようにぐったりとして、俺の足の甲にペタンと座りこんでしまった。


ロザーナは俺の顔を見上げながらニコッと笑いかけた。

「リッシェル。少し眠くなっちゃった。でも、これで、魔物の襲撃はなくなったわ。でも・・・もしかしたら、他の国でも同じ事が起こっていたとしたら・・・」


俺は優しくスレーナを抱きかかえた。一瞬、俺のほっぺを小さな手で触った瞬間すやすやと寝てしまった。


俺はスレーナを起こさないように、皇様に言った。


「皇様。まだ、魔族からの驚異がぬぐいきれぬまま、皇都凱旋などできませぬ。一刻も早く、他国の情報を集める必要があります」


皇様は大きく頷き、謁見の義が終わりを迎えた。


皆たちを散会したと同時に、最相や国の重鎮、そして貴族院たちを集めて会議を催す運びとなった。


その後、俺たちの新たな旅に出ることになった。なぜならば、この国を含めて新たな脅威が発覚したからである。

異世界のチート能力は次回です。お楽しみに


ブックマークよろしくお願いします。

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