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交響曲第1番 第一楽章 英雄の帰還

異世界の姫様と勇者という王道から入ってみました。

それも、魔王を討伐後から。

「勇者の御帰還だー」


白馬からおりて、衛兵に馬を預けると皇国の城下町の門番やら衛兵が大声をあげながら、勇者の到着をお祝いする声が、町中の人々にも知れ渡り怒号にも似た騒がしさと共に勇者の帰還を喜んでいる。


俺は戸惑いながらも、幼女スレーナを左の肩に乗せて目配せをした。


肩を小刻みに持ち上げる。そんな合図しながら小声でスレーナに話しかけた。


「ホントに俺が皇子でいいのか?この皇国が滅亡するかもしれんぞ」


「フフフ。異世界の王道を楽しみましょう。ほら、王様と謁見しましょう。あらやだ。この世界ではリッシャル義父様になるんだからね」


「そういうスレーナはお姫様なんだろう。謁見なんて他人行儀だぞ」


しゃべり声が聞き取れないような歓声が上がる中、耳元で話すスレーナを愛おしく感じながら町中を凱旋にも似たお祝いの声が飛び交った。


皇国の城下町の中でもひときわ大きな橋を渡り、ロザーナ城の門前に着くと同時にゴーという地響きのような音をたてて門が開いた。


門が開ききる前に2人の美しいお姫様が駆け寄ってくる。


「スレーナお姉様。お帰りなさいませ。リッシェル様、御帰還をお喜びいたします。」

「近衛第一騎士団ならび以下9騎士団に伝令、第二姫のスレーナお姉様御帰還ですわ。英雄の御帰還よ。」


その声により、音楽隊がラッパを鳴らし城が一つの楽器のようにも似た音を出し始めた。城内に入るとまるでオーケストラのような音たちが混じりあり曲を奏で始める。


俺は肩から降ろしたスレーナをお暇様抱っこのように優しく抱えながら歩いた。


二人の妹姫たちは俺達のその抱えながら歩く姿を見て、結婚式のようだといいながら、憧れのカップルを見る女子高生のようにはしゃいでいる。



大聖堂に着いたとき、近衛騎士団の団長達が、片膝を立てながら、俺達の通路をつくるように整列をしていた。


俺は一度立ち止まり、スレーナを降ろした。


スレーナは大聖堂の中央にひいていた、真っ赤な絨毯の上をダンスを踊るかのようにひらりひらりとおどけるようにクルッと回転しながらお辞儀をした。


スレーナの無邪気さを横目に絨毯の先を見つめた。


謁見の間のようになった大聖堂の奥には、皇様と皇妃が一段と高い奥の間に椅子に、威風堂々と待ち構えるように鎮座している。


俺はゆっくり皇様と皇妃様の前にゆっくりとスレーナをエスコートしながら歩き出す。


幼女をエスコートする姿はまるで、父と子のように見えるかもしれないが、皇様と皇妃様には微笑ましく映ったのであろう。


皇妃は居ても立っても居られぬかのように立ち上がり、こちらに向かって歩き出そうとしていた。


そんな皇妃の手を握り、落ち着かせようと皇様も一咳をした。


俺たち片膝をたてながら深々と皇様と皇妃様に帰還のあいさつをした。


「皇様、皇妃様。勇者リッシェルと聖女スレーナ。魔王討伐してただいま戻りました」


「大儀であった。よくぞ無事帰還したものよ」

「スレーナ姫お帰りなさい。大変でしたね」


皇様と皇妃様もスレーナの顔を見ながら喜ばれた。皇妃様はスレーナを近く呼び椅子から立ち上がり抱きしめた。


「お帰り、心配して心配して・・・・でも、無事でよかった。」

「スレーナや・・・五体満足で帰ってこれた。よかったわい。でも、呪いがまだ解けてないが・・・魔王討伐だけで、これ以上は望むまい」


そういうと、二人の妹姫も皇妃様に抱き着くように駆け寄り、幼女の背中にしがみつき咽び泣き始めた。


家族の団欒を邪魔しないように俺は近衛騎士団長達のほうに振り返り発布した。


「魔王を倒したぞー!これがその証拠の魔王の指輪だー!悠久のリングがある限りこの王国は争いは無くなるぞー!」


先ほどまで静まり返っていた大聖堂に、怒声のような近衛騎士団長達の雄たけびが響き渡った。


皇様はここぞとばかりに立ちあがり、皇妃に手を差し伸べて立ち上がらせた。


「皇国の国力を示すときぞ。勇者いや、英雄の凱旋を執り行う。近衛第一騎士団を筆頭にとどこうりのないように。そして、他の国への良き知らせを送ろうぞ。英雄の凱旋だ!」


俺は皇様の方に近寄り、片膝を立てながらお辞儀をした。


「あり難き栄誉。ロザーナ皇。ありがたく承ります。しかしながら、魔王を討伐しても、聖女スレーナ第二皇姫にかけられた成長が止めた呪いは解呪できませんでした。お姫様の一人も救えない勇者・・・ましてや英雄なんて呼ばれるのは・・・」


俺の言葉を察したかのように、スレーナが皇様にすがるように俺の隣に来て片膝を立てながら訴えた。


「皇様。魔王討伐に協力してくれた、各国の王族や貴族そして知人にお礼まわりする私たちのわがまま許しください。」


そういうとスレーナは俺の方を向いてニコッと笑った。

俺も頷いて、もう一度、皇様に懇願した。


「ロザーナ皇よ。魔王なきこの時代は我は勇者、英雄というのは無用な長物です。ですが、聖女スレーナ第二皇姫にかけられた呪いを解呪するために、再びお礼を兼ねた解呪情報を探す旅に我ら吟遊詩人となり旅立ちます。二人で決めたことですがお許しください」


「律儀で困った勇者だ。ここで英雄となったリッシェルの申し出を断れば、我も皇民達に合わす顔がなかろう」


そんな姿を見て皇様に耳打ちする皇妃。皇様は耳打ちした内容が気に入ったかのように大きく頷き、俺達に話かけられた。


「聖女スレーナよ。解呪したあかつきには、英雄となった勇者リッシェルと結婚することを誓うというならば解呪探索を目的にする吟遊詩人として身分を隠しながら旅をすることを認めよう」


「よかったわね。スレーナ、解呪して、早く孫を見せてね。早く赤ちゃんを抱きたいわ」


皇妃様は嬉しそうに語りかけた。


「気が早いですわ。お母さまったら。でも、そうなるように努力いたしますわ」


幼女スレーナが見違えるように妖艶な大人の美しい女性の横顔で微笑んでいる。

俺も一段と真っ直ぐな気持ちで、立ち上がり胸に曲げた片腕をつけながら宣言した。


「英雄でも吟遊詩人でも、君が愛するものすべてに誓おう。姿かたちがかわろうとも、君にかけられた呪いまで愛して見せる。君が君であるために。生きる意味さえ与えて見せよう」


こうして、俺たちのこれから愛をすべての者たちへ示すのであった。

次回は皇国に入る前の打ち合わせを交えた話を予定


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