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2015年/短編まとめ

角砂糖と眠る

作者: 文崎 美生

ひどく無防備だ。

そんなことを思いながら、彼の髪の毛に触れる。

私の膝の上に置かれた頭。

サラサラの色素の薄い髪に指を通せば、ほんの少しだけ男物のシャンプーの匂いがした。


規則正しい寝息を立てている彼は、起きる気配が一切なくて私の膝に頭を預けたままだ。

どれくらいそうしていただろうか。

私が本を読み終わってもずっとなので、だいぶ疲れていたんだろうな。


サラサラと髪を撫でながら彼の寝顔を覗き込む。

眼鏡をかけていなくて、意地の悪い笑顔じゃなくて穏やかな顔なんてなかなか見れない。

正しくレアなのだ。


ただ裏を返せば凄く疲れてるってこと。

それくらい疲れてるってこと。

普段から人の気配がすると上手く寝付けなかったりする彼が、私の前では無防備な姿で眠ってくれる。

熟睡して起きないくらいに。

それくらい疲れてて、それくらい信頼されてるってことなのだ。


「そうやって考えると、照れるよなぁ」


小さく呟けば自覚するのと同時に頬に熱が集中する。

私に出来ることなんて少ないけれど、こうして少しでも役に立てているならば嬉しい。

だって私は彼のことが好きだし。

何より私は彼の彼女だし。

彼は私の特別なのだから。


傍らに置いた彼ご愛用の黒縁眼鏡を手に取り、自分でかけてみた。

歪む世界とキツイ度数に目が痛くなる。

視力はそれなりにいい方なので、彼くらいの度数になると視界が揺れて仕方ない。


照れ隠しだけど照れ隠しにならなかった。

気持ちが悪くなるだけだし、その必要もないくらい彼は気持ち良さそうに眠っているのだから。

あーあ、なんて溜息を吐いて彼の髪を撫でる。


女の私からでも羨ましくなるその指通り。

ついでに耳までふにふにと弄れば、彼が嫌そうに身をよじる。

可愛いなぁ、本当に大好き。

口元の笑みを誤魔化すように、彼の目の下のクマを撫でながら唇を耳に近づけた。


「好き、大好き。……お疲れ様」


休んで。

ゆっくり休んで。

その気持ちを込めて彼の額に唇を落とした。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 幸せそうで何よりです。 [一言]  微笑ましい限りです。
2015/09/19 23:02 退会済み
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