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南ぬ島 恋ぬ島  作者: ズタボロオー
1 八重山編
2/19

2. 女子力

あまりにも都合の良い展開だと思われるかもしれませんが、そのあたりは目をつぶってください。

 午後4時半。

 

 ホテルの裏手にあるビーチでは、つい3時間ほど前に出会ったばかりの女性3人と男性1人で遊んでいた。

「ねえねえ、あそこ、コート空いてるからビーチバレーしない?」

 人気の少ないビーチにはビーチバレーのコートが2面と、ボールが転がっている。誰も使っている様子はない。

「いいよ」

「よかった4人いて。3人だったら2対1なんだよね。運動神経の関係でいつも私が一人になっちゃう」由紀がふくれっ面でぼやく。

「ていうことは、由紀ちゃん運動神経いいんだ」

「ううん違う。私は普通なんだけど、他の二人がにぶいんだって」

「ちょっと、それ軽く自慢なの?」真奈が会話に入ってくる。

「違う違う、愚痴だよ、この3人でスポーツすることになったら、私誰かと組んだことないもの、テニスのときも卓球のときもそう」

「じゃ、由紀ちゃん、僕と組む?」

「ありえなーい。2対1のときでも負けることあるのにぃ」今度は佳子がブーイングである。人見知りのようだが少しずつ僕とも話すようになってきた。

「じゃ、みんな一回ずつ組めるようにして、最初だけ公平にコイントスで分けよう」僕が提案した。

 

 コイントスの結果、僕が佳子と、真奈と由紀がチームを組んだ。

 ビーチバレーといっても遊び程度である。それに僕とて20代前半の男子の平均からするとそんなに運動神経がいいわけではない。体力は自信があったが運動神経はからっきしダメで、強かったのは持久走とかそっちの方だけである。

「じゃあ10点先取の1セットマッチ。終わったところでチーム替え。いい?」

 この炎天下に正式ルールでやると体力が持たない。たぶん陽も沈む。

 いくらなんでも女の子が相手だから楽勝だと思いきや、これが難しい。砂に足を取られるし、レシーブしても佳子がトスを上げられない。もっとも向こうも似たようなもので、由紀がきちんとレシーブしてもそのあとがつながらない。相手コートに入ったらポイントみたいになって、8-8になった。このままだと負けてしまう。こうなるとたかだか遊びとはいえ負けたくはない。そこで一つ作戦を授けた。

「ねぇねぇ佳子ちゃん、僕にパス上げなくていいから、受けた球はそのまま向こうのコートに返してくれる?」

 正直トスが上がらないんだから僕はどうせ打てない。だったら向こうのコートに入れた方が自滅の可能性が上がっていい。

 上にあげなければいけないという呪縛がなくなると、佳子は2球連続して相手のコートに向かって打った。たまたま真奈の所に行ったので、そのまま受けられずに2点連取して終了。

 そしてチーム替えである。同じチームの中でコイントスして、今度は僕と由紀、真奈と佳子がチームになった。これは勝負にならず、10-1であっさり終わる。

 そして最後、僕と真奈、由紀と佳子がチームを組む。また接戦である。さっきの様子から真奈はきちんとトスを上げると打てるようなので、できるだけ真奈に打たせた。接戦になるかと思いきや、意外にも10-5で勝てた。

 

 夕方になっているとはいえ、沖縄の日差しは強い。3セット戦うと体力が消耗する。

 スポーツドリンクを飲みながら他愛ない話をする。

「ねぇ。みんな彼氏とかいるの?」

「それでは第一問、この中に彼氏がいるのは何人でしょうか?」真奈が訊いてくる。

 この季節に女子三人で旅行するんだから、みんな彼氏いないのかな?でも真奈はきれいだから男の一人や二人いてもおかしくないし、由紀だってあの明るさと元気さだから彼氏はいるだろう。佳子は地味だからいなくてもおかしくないけど、逆にいるからアピールする必要がないのかもしれないし、よくわからない。でもここで二人と答えると佳子を傷つけるかもしれないし、一人というとなんだか微妙な空気になりそうだから、無難に答えよう。

「うーんとね、ゼロ」

「なんでそう思うの?」

「だって女同士で旅行来てるから。彼氏がいたらそっちと行くでしょう」

「ぶっぶー、残念」

「じゃあ彼氏いるんだ?」

「うん、一人だけね。ちなみに彼氏とかいても私たち旅行には毎年行ってるんだから。じゃあ第二問、この中で彼氏がいるのは誰でしょう?」

 地味子な佳子はなしとして、普通に考えたら真奈かな。でも意外に美人は理想が高くて彼氏いなかったりするから、無難に由紀かななどと考えをめぐらせる。

「えっとねぇ、由紀ちゃん」

「ぶっぶー、残念。この中で彼氏がいるのは佳子でだけでしたぁ」

 一番地味な佳子とは意外な感じもするが、彼氏がいる上の余裕なのかな。

「でもねぇ」由紀が続ける。

「彼氏いるっていっても何もないんだよ、手つなぐのがやっと」

「それ付き合ってるって言えるの?」

「本人たちが付き合っているって言ってるんだからいいの。佳子、気持ちはヒロシくんだけだもんね」

「うん」

 ヒロシくんってのが彼の名前か。でもそんな付き合い方でヒロシくん大丈夫なのかと、余計な心配をしてしまう。

「じゃあ、二人は彼氏いないの?」

「うん、真奈は高校卒業してずっと。私は実は先月別れた」由紀が続けた。

「だから由紀もヤマケンさんと同じ傷心旅行なの。て言うか私たちが元気づけるために計画したんだよ」佳子が言った。ここまで旅行のほとんどを由紀が仕切っていたので、全部由紀が中心なのかと思ったけどそうではないらしい。

「でもチェックインは由紀ちゃんが…」

「それは、由紀が社会人だから。このホテルは由紀の職場と協定があって由紀の名義だと安く泊まれるの。保養所っていうか…」

 さすがにしっかりしている。おまけに食事までサービスさせている。

 

 そういえばいつの間にか母親と子供3人がビーチで遊んでいる。部屋を替わってあげた家族だろうか。きっと向こうは誰が替わってあげたかなんか知らないんだろうな。

「ちょっと海入ってくる。真奈、行こ」なぜか佳子は真奈を連れて水際まで走って行ってしまった。

 

 ビーチパラソルの陰に二人だけが取り残された。そばにあったデッキチェアに座りなおして話を続ける。

「由紀ちゃん、イヤじゃなかったらどうして別れたのか教えてくれない?」

「もうだいぶ割り切れるようになったからいいよ。私たち、高校の同級生で卒業前から付き合っていたんだけど、彼氏、シュウくんっていうんだけど、東京の大学に入学しちゃったのね。私は遠距離でも大丈夫だと思っていたけど、シュウは我慢できなかったみたいで、入学してすぐ彼女作ってたみたいなのね。そんなことする人じゃないって思っていたから、遠くても会える日を楽しみにしてたし、シュウも帰ってきたときには私のこと大事にしてくれてた。でもね、シュウの友達でこっちにいるユウキ君って子がシュウは向こうに彼女いるって教えてくれたの。私、信じなかったけどユウキ君が見せてくれたSNSにはすごく幸せそうなシュウと彼女の写真があって、それ見たときにこれじゃ勝てないって諦めることにしたの」

「じゃあシュウくんにはきちんと確認したの?」

「うん、シュウは確かに女の子と遊んだけど、あれは遊びだから、由紀のことが一番だからと言ってた。でも近くにいる人には勝てないし、シュウのあの楽しそうな顔見てたら……」

 割り切れるようになったとはいえ、由紀は泣きそうである。

「うん、わかった。でもなんでユウキ君はそんなことしたのかな?」

「私のこと好きだったみたい。でも私ユウキ君とは付き合えない。ユウキと付き合うってことはシュウに会うこともあるだろうし、親切かもしれないけどそういう形で友達を裏切るような人は信用できない。ヤマケンくんだったら好きな人がそういう立場だったらどうする?」

「僕? そうだなぁ」いろいろ考える。正直どうするだろう。好きな人が僕の友達と二股をかけられていたら。やっぱり別れさせてどうにかしようと思うかな?

「やっぱり教えると思う。大好きな人が騙されてるのを見るのは耐えられない」

「そして付き合うの?」

「すぐには付き合わない。そんな時って感情がマイナスになっているだろうから、そんなときに告白してもだめだと思う」

「気持が落ち着いたころに告るってこと?」

「まあそうかな。勝ち目のない(いくさ)はしない。もっとも僕も二股かけられた方だし、どうなってるかは実際にそうなってみたいとわからないよ」

「あはは、ヤマケンくんらしい答えだね」

「まだ出会って4時間だから。僕の黒い部分は見せてないよ」笑いながら言う。

「そっか行きの船だからまだ4時間なんだね。ずいぶん長いこといるような気がする」

 そう。出会ってまだ4時間で、二日後に彼女たちは那覇に帰ってしまう。由紀は続けた

「ユウキ君、私にシュウと別れなくてもいいって言ったの。シュウだって向こうで楽しんでるんだから由紀も楽しめばいいって。将来シュウが那覇に帰ってくるんだったらその時に決めてくれればいいからって」

「なんで、そうしなかったの?」

「だってそれじゃ、結局どっちにも失礼じゃない? ユウキ君はそれでいいかもしれないけど、私はいや!」

 一見すると軽そうであるが、実にまじめな子である。たった数分のトークだったが、少しずつ由紀に引き込まれて行っていた。もし僕が那覇に住んでいて距離の問題がないのなら絶対に告白するのにとも思っていた。

 

 だが僕も失恋した痛手から立ち直ってない、恋愛に対して真っすぐな由紀だけに軽い気持ちでは付き合えない。僕は東京、由紀は那覇。寂しい思いをさせるのは間違いない。だからといってこの旅の間だけのアバンチュールだったら由紀に対しても失礼である。お互い遊びだと割り切れれば楽しい時間は過ごせるんだろうけど、両方ともがそんな神経はないから。

 

 僕自身の気持ちが定まらないまま、西の空に沈みそうな夕陽をぼんやり見ながらいろんなことを考えていた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 日が暮れかけてきたのでホテルに帰ってシャワーを浴びると、もう夕食時である。

 サービスで出してもらえるというから沖縄そば程度だと思っていたら、食材食べ放題のバーベキューだった。好きな食材を串にさして焼く。でもさすがに沖縄そばでは夕食無料で部屋を変えたりしないか。

 僕の横に由紀が、正面に真奈が、その横に佳子が座ってBBQタイムである。

 

 それにしても乙女は色気より食い気とばかりに、みんなよく食べる。華奢に見える真奈ですら次から次に焼きあがった野菜と肉を平らげている。

 

 由紀に至っては軽くあぶっただけで次々に食べるので、準備が追いつかない。さすが肉食系女子と冷やかしたら睨まれた。結果的に僕と佳子は何度も食材を取りに行く羽目となる。

 

「ヤマケンさん、食べてます??」佳子が心配そうに聞く。

「大丈夫、僕は僕のペースで食べてるから」

「あの二人、すごいですよね」

「うん、ちょっとびっくりした」

「真奈さんって細いのにあんなに食べるの?」

「普段はそんなことないけど今日はスイッチ入ったみたい。たまにそういうことがあるんだけど」

「由紀さんも失恋したばかりとは思えない」

「やっぱりその話、したんですね。」

「うん」

「あまり大きい声で言えないけど、今日は由紀を元気づけるための旅行なんで、できるだけ由紀のそばにいてあげてくださいね。私たちは応援しますから」

 え?そういう展開にしたいの?

「でも、僕は東京だし、那覇の子と付き合ってもまた遠距離だからなぁ」

「そんなこと関係ないですよ。ヤマケンさんと話しているときの由紀の表情、久しぶりに恋する乙女だったもの」

 うーん、脈ありか。ここで話を変える。

「佳子さんはいつでもマイペースって感じかな」

「そうですね、でもこうやってみんなのために動くの好きだし、ちょうどいいかも」

 佳子はにっこり微笑んだ。その表情がすごくかわいい。いかん、今度はこっちまで撃ち抜かれそうだ。でも敬語なのが微妙な距離感。

「佳子―、早く肉持ってきてー」二人の会話を色気のない由紀の声が遮る。

「はーい」佳子があわてて持っていく。

 僕もビールの入ったジョッキを抱えてテーブルに行く。

「佳子ぉー、あんた余計な話してないだろうねぇ」超ご機嫌な由紀はすでにかなり出来上がっているようだ。真奈もそうだが、肉だけでなくビールの量もすごい。

「大丈夫よ、それより食べすぎると今晩おなか壊しても知らないよ」ひとりだけ冷静な佳子。

 まだまだ食事は続く。

「もうおなかいっぱいだから無理―」

 でもだんだん食材の減り方が鈍ってくる。女子がギブアップしてからはマイペースな僕一人で食べている感じだ。

「もうそろそろ部屋に帰った方がいいんじゃない?」

「まだデザート食べてないよ」今度は佳子がむっとする。

「じゃあ佳子がデザート食べてから部屋に帰ろう」真奈が提案する。別に異存はない。そう言いながら3人ともデザートを食べた。甘いものは別腹って本当なんだと感心する、僕はデザートまでとても食べられない。

 

 食事を終えると、みんな208号室に集まった。

「さて、そろそろ部屋割を決めなきゃ」真奈が忘れていたことを思い出す。

「由紀は半分寝ているから、ヤマケンさんお願いしていいですか?」佳子が続ける。

 厄介払いというわけでなく、由紀と僕を二人にしようという心遣いであろう。確かに彼氏がいるという佳子が僕と二人きりになる理由はない。

「僕は構わないけど、由紀ちゃん大丈夫なの?」

「大丈夫大丈夫、襲いかかったりしないムグムグ」半分寝ている酔っぱらいが返事する。せっかくのナイスボディなのだが色気も何もあったもんじゃない。

「じゃあ、今日は私と佳子で隣の部屋に行くけど、もう少しこっちでおしゃべりしていい?」

「うん、今二人きりになられても僕も困る」

「せっかくのチャンスなのにね」真奈が笑う。

 確かに今由紀に襲いかかっても抵抗はされないだろう。でもやっぱり僕の気持ちを考えると今だけ満足してどうなるのかと思う。こういうときまともな思考の男子なら旅の間だけと割り切ることはできるかもしれないけど、残念なことに僕はそういう思考にはできていない。

 

 いつの間にか由紀は熟睡していた。

「この子、いつも強いことばかり言ってるけど、とても繊細でね」由紀が寝静まったのを見て真奈が話す。

「この前別れた時もすっごい落ち込んでて、食事も全然できなくて、本当にこのまま痩せて死ぬんじゃないかと思ったぐらい」

「今日の食べっぷりからは想像もつかないけど」

「で、ぶっちゃけて言うけどヤマケンさん真面目そうだし、よかったら由紀と付き合ってもらえないかな」あまりにもストレートにぶっちゃけられて、面食らう。

「でもまた東京と沖縄だとまた遠距離になっちゃうし、由紀ちゃん耐えられるかな?」正直僕も耐えられる自信がない。

「由紀の方は大丈夫だと思う。ヤマケンさんさえ良ければだけどね」真奈は真剣に話しているみたいである。

「でも由紀の性格だと追いかけてきちゃうかもですよ」佳子が続けた。

「その代わりね」真奈が厳しい目でこっちに向き直る。

「由紀はまっすぐな子だから、責任取る覚悟でお願い。一時の遊びだったらやめてね」

「ちょっと待って。そんな大事なこと、今すぐ即答はできないよ、由紀ちゃんとってもかわいいと思うし、付き合ったら楽しいだろうなと思うけど、距離のこともあるし、まだ僕は由紀ちゃんのことほとんど知らない。まだ出会って6時間だよ」

「だったらまだ2日あるから、もっといろんな部分を見て、それで判断したらいいじゃない。私も今すぐ答えろとは言ってないよ」

「ふぅ」僕は少しため息をついた。傷心旅行のつもりがなんだか大変なことになっている。

 女の傷は女でしか癒せない。友人の言葉が今頃になって響く。

 

 ベッドでは由紀がスヤスヤ寝息をたてて眠っていた。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 由紀が眠っている間、真奈と佳子と3人で少し話をすることになった。

 昼間のビーチで真奈は彼氏がいないというのは聞いていた。これだけのルックスだからいくらでも告白されるだろうとは思っていたが、いまのところオシャレや友達付き合いの方が大事で、あまり男に興味はないとのこと。もったいないとは思うがこればかりは本人の気持なので仕方ない。だからと言って同性愛者というわけでもないようだ。ちなみに告白されるのは日常茶飯事らしいのだが、「お前が私の何を知ってるんだよ」(本人談)でことごとく断っているらしい。友達付き合いで相性が良さそうだとか、縁があれば付き合ってもいいと言っていたので、男性を拒絶しているというわけでもなさそうだ。

 

 佳子はヒロシくんと中学生の頃からかれこれ6年ぐらいずっと付き合っているらしい。でも相変わらず手を握るのがやっとということなので、それおかしくないかと聞くとヒロシくんは超草食系だという。佳子も別に気にするようでもなく、ヒロシくんのそういうところが安心できるとのこと。高校時代、彼女と付き合って2週間で初キスして1カ月で初体験だった僕からすれば俄かには信じ難いが、そういう付き合い方もあるということなのだろう。

 佳子自身は処女であることに大してこだわりもないようだが、ヒロシくんの気持ちを大事にしているとのことのようだ。

 

 それにしてもなぜそんなに僕と由紀とをくっつけたいのかと聞くと、声をそろえて由紀の笑顔を取り戻したいからだという。この旅行でも最初はずっと暗そうにしていたのが、僕が合流してから急に明るくなったというのである。確かに由紀のはじけるような笑顔はまわりをぱっと明るくするだけの魅力があると思う。那覇にいたときに何人か知り合いの男の子を紹介したのだがあんな笑顔は見たことなかったというので、なにがきっかけでそうなったのかは分からない。ただきっとこの人だったらどうにかなるかもしれないという期待を感じたとのこと。この旅行を企画した時には由紀が一目ぼれするわけなどないと思っていたので、日常生活からの気分転換ぐらいの気持ちでいたらしい。

 

 もちろん僕も過去の女性遍歴や異性観などを白状させられたのだが、2時間ほど経っただろうか、由紀が起きてくると、再び酒宴である。

 それにしてもみんな酒が強い。ビールや缶チューハイや泡盛の小瓶などが次から次に空っぽになっていく。ほとんど下戸の僕はすすめられてもビールをコップ一杯飲んで真っ赤になっている。

 

「ヤマケンくんは女子力高いよ」まだ酔いの冷めてのか酔い直したのか分からないような由紀に言われる。

 なぜそうなる?

「そうだね、この女子の中にいても男を意識しない」真奈が同意する。

 ちょっと待て、それって誉め言葉に聞こえない。

 でも考えてみれば、確かに子供のころから女の子とばかり遊んでいた。僕の希望ではなくてたまたま住んでいた団地に同世代の男の子がいなかったのだ。もし僕が女子力高いとしたら、きっとそのせいだ。だから小学校の低学年の頃、男子は男子だけ、女子は女子だけで遊んでいたという記憶がない。しかも僕の父は単身赴任で週末しか帰ってこないものだから、家では母と祖母と妹だけであった。普通の男より女子力は高いかもしれぬ。

 もっとも女子力が高いといっても2か月前まで彼女がいたわけだし、あまり少女趣味は持ち合わせていないと僕では思っている。

 

 いつの間にか日付が変わっていた。

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