7話 我が城
俺は今から海の上を時速300キロくらいで飛んでいる。風は魔法で障壁を張りガードしている。快適だ。
実は、いつも狩をしている森を、村から離れる様に1時間程飛ぶと海に出る。海を発見した時は港町でもあるんじゃないかと思ったが、見渡す限り断崖絶壁で港を作るには適さないようだ。
まだ街デビューは早いと考えているが、そのうち行くべきだろう。幸いあの村からは行商人が通ってできたあぜ道が伸びており、そこを進むと大きな街道に出るらしい。その街道沿いに進むと、アールグレイ王国の最南の辺境都市ドーラがある。この情報は行商人から聞いた。
到着。
ここは無人島だ
崖の上から遠見魔法を使いながら海をながめていた時に発見した。
三日月の形をした東京ドームくらいの小さな島で、三日月の内側は、浅瀬で綺麗な砂浜になっている。プライベートビーチである。無人島なので視線を気にする必要もない。全裸で泳ぐのが正解だ。
三日月の外側は崖。砂浜以外は林だ。パイナップルの様な果実がなる木があり食べてみると、想像通りパイン味だった。うまい。
さて、家に入るとしよう。
フフフ、、、
これが俺の、俺だけの家だ!
完成したアレとはこの海の家のことだったのだ。
大陸からは肉眼では見えないくらいの距離にある小さな島である。突然誰かが転がりこんでくることなどない!
森で良さげな木々を切り倒し、それを島に運んだ。ボックス魔法で、お手軽である。ただ今のところコンテナ1台分ほどの量が限界だ。
初めてボックス魔法を使った時は全魔力を使って成功したが、その後は、出し入れする時のみ魔力を新たに少し消費する。ボックスの中は時間が止まっているみたいだ。日々ボックスに入る量が増えていることから、これも魔力総量が影響しているのだろう。
基本は木と岩を加工して家をつくっだが、なかなかの出来だと思う。本格的な家は無理だからシンプルに木組みである。間仕切りはない。30畳ほどのワンルームである。部屋をたくさん作るより開放感を優先したと思ってくれていい。細かい作業は魔法が解決してくれた。工期は材料集めも含めて二ヶ月程だ。
イメージは太平洋リゾートにある開放的なオーシャンビューのペンションだ。
まだ昼過ぎだ。なにしよ。
今俺は風呂に入っている。島の崖側の端の地面を楕円形にくり抜き、大理石の様な石をタイル状に加工して敷き詰めた簡単な物だ。
海水から水だけを抽出して風呂に注ぎ温めただけだけなので温泉では無い。
だが気分は完全に高級リゾートの屋外露天風呂である。気持ちよすぎる。
村には当然風呂などなかった。週に一度、冷水を浴びるだけである。
元日本人として風呂のない生活はあり得ない。元々風呂好きで、家よりも先に作った程だ。
うむ・・・・森や海で狩をして、焼いて食べる。寝たい時に寝て、起きたい時に起きる。完全に野生児だがこんな生活も悪くない。しばらくは、この海の家を拠点にする。
しかし、ずっとは無理だろう。変化の無い生活はいつか飽きてしまう。やはり世界を周らねばなるまい。
今後の予定を立てよう。
まず街に行こう。そこで今までの狩で得た素材を換金する。その金でいろいろ買い物をする。街になにがあるのかは、詳しく知らん。ベッドは欲しい。この海の家には、気分で作った蔦のハンモックと動物の毛皮くらいしか無い。
体は7歳児なので快適な睡眠は必要不可欠なのだ。
寝る前に新しい魔法を考えて過ごし。魔法で取った魚を豪快に焼く。味付けは海水が染みているため塩焼きっぽい。