5話 独り立ち
今日も充実した狩人ライフを過ごしたノルンです。
弟が生まれた。突然でびっくりした。確かに母のお腹が膨らんでいたような気がしなくもない。
いずれ他人になる予定の家族なので、全く興味がなかった。晩食の席で名前をどうするかの話題になった。全く興味が無い。いつものように適当に聞き流しながら、ほとんど温水のようなスープを飲んでいると父親が大声をあげた。
「ノルン!、いい加減にしろ!!前から思っていたが、お前は!家族が増えるんだぞ!何とも思わないのか!」
「ごめんなさい。」
そういって俺は部屋に戻り、明日の狩に備えて寝た。
夜寝ていると、何かが折れるような音で目が覚めた。
「兄さん、こんなことしてだいじょうぶかな?」
「大丈夫だよ。さっきの父さんが言ってただろ?もうすぐノルンはこの家から居なくなる。少し狩ができるからって、調子に乗りすぎたんだよ。こんな弓はもう必要ないだろ。はっはっはっ」
同室の長男と次男である。名前は確か、長男がアルトで、現在16才、次男がハルクで12才ある。四男の名前はまだ知らない。
アルトは、こげ茶色の短髪に背も高く父親に似て、ガッチリとした体格だ。村でも威張り散らしている。
ハルクは赤茶色の男の子にしては長めの髪で、母親似で線は細く、アホっぽいが顔が整っていて将来はイケメンだろう。ていうか、既に村のお嬢さん達とよく遊んでいるようだ。この事を長男は羨ましがっている。
そういえば、そのうち縁を切ることになる予定の兄たちとまともに話したことは無いな。兄たちは畑仕事だし、俺は狩。家でも必要最低限の会話しかしてこなかった。友達も作らず、1日のほとんどを1人で森の中で過ごす俺はかなり奇妙な奴だと思われているだろう。
まあ、なんとなく兄達が俺を疎ましく思っているのは知っている。
大人顔負けの狩の腕を妬んでいるか将来家や畑を継ぐ権利を脅かす存在だと感じているのかもしれない。だが父親に怒られると思って実害は今まで加えて来なかったが、俺を奴隷商人に売ることになったので行動に出たのだろう。
弓は壊されたが、ほとんどカモフラージュに持っているだけだ。父親が狩についてきたときなどは、矢に魔法をかけて、軌道を誘導して使っている。
しかし、早いな。三男だし愛想もない俺だから、いつか売られると思っていたが。まだ7歳だしあと2.3年くらいの余裕はあると考えていた。
よし明日にでも独り立ちしよう!アレも完成したし、力もつけた!村人全員相手にしても鼻歌交じりに瞬殺できるが、無用な殺しはしたくないし、皆殺しにして国で指名手配にでもされたら、大きな街には入りずらくなるだろう。
つまり俺の自由が減る。それはヤダ。明日狩に行ってそのまま独り立ちだな。
翌日、早朝いつもの時間、晴れ晴れとした気持ち目覚めた。
今日から俺は独りだ!独りはいい!何故なら自由だからだ。面倒なしがらみも無い!
いつもより素早くかつ適当に、水汲み、洗濯を終わらせる。もうやらなくてもいいと思うが、長年の習慣だ。惰性に近い感じでやり遂げる。
家族全員で朝食の席に着く。相変わらずシケた飯だ。だが、これが最後の母親の作る飯なので仕方なくいただく。
食べ終わり、狩に行く準備をしに部屋へ向かおうとしたら、父親だったような気がする奴に話しかけられた。
「ノルン、今日狩から戻ったら大事な話がある。今日は少し早めに帰って来い」
大事な話って、完全に口減らしとして俺を売るという話だろう。
「分かったよ父さん、いつもより頑張るね!期待しててよ!」
もちろん嘘だが、
この父親は自分のプライドしか守らないやつだった。家と畑を継ぐ長男には、甘めだった。どうでもよすぎるが。
なんか母親が泣きそうな顔で俺を見ている。なんだかんだ母さんは俺達兄弟をできるだけ平等に扱おうとしてくれた。結局は父親の言いなりだったので産んでくれたこと以外は感謝していないがな。
ちなみに長男アルトは父親の後ろでニヤニヤしている。次男ハルクはなんとも言えない感じか。
さて、行こうではないか。
7歳児で独り立ちは、当初より大幅な計画の前倒しだったが、俺には魔法がある。1人分の食い扶持くらい、サバイバルでもどうにでもなる。幸いアレも先週完成した。フフフ、、、。
これまで取れた肉以外の素材もかなりの量所持している。街で売ればかなりの金になるだろう。7歳児のなりで全部売ると目立つので、小出しにして売るけど。
前人未到の大森林、古代遺跡、迷宮、秘境に魔境、行くべき所は山ほどあるのだ。
森に行き、少し歩いてからステルス魔法と飛行魔法を使い、今出せる最高速度で飛んでいく。
「イヤッフゥーーー〜〜〜〜〜〜〜」