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21話 遺跡

 夜空に星々が輝き、街は完全に寝静まった深夜。

 冒険者ギルド一階の酒場に於いても酔いつぶれた冒険者がギルドの男性職員によって外に放り出される。ギルド前では酒飲み達が折り重なる様に爆睡していた。


 酒場の喧騒も無くなり、あと数時間もすれば朝日が登り早起きな街の住民によって再び街が動き出すであろう。


 そんな街が止まったとも言える束の間の時間に、冒険者ギルドの二階にある一室にて1人の男が腕を組み、目を閉じ眉間に皺を寄せて座っていた。


 男は30代前半と若く、身長は185cm以上あり長身だが、細身でどう見ても腕っ節に自信がある様なタイプでは無い。最も服の下に極限まで引き締まった筋肉が隠れているのだが、あくまで外見上はインテリ肌で学者気質な雰囲気を醸し出している。


 顔つきは知的でありながら何処か優しさがあり、普段から人の気持ちを汲み取り周りに配慮が出来るため、冒険者ギルド内では多くの職員に慕われている。


 だがこの時は普段とは掛け離れた不機嫌な怒りとも呼べる雰囲気を隠すこと無く静かに発していた。


 室内は部屋の主の几帳面な性格を表すかのように綺麗に整理された書類や棚が整然と部屋の両脇にある。その他は、書斎机と椅子、机を挟んで反対側に客人用の椅子が二脚並べてあるのみだ。


 男は部屋の主の席に腰掛け、彼此20分以上沈黙を続けていた。



 コンコンコンッ

「ギルド長、ご報告があります。」


「入ってください。」


 部下のあり得ない時間帯の訪問にも関わらず、ギルド長と呼ばれた男は待ってましたとばかりに、目を開き入室を促す。


「失礼します。」


 扉にギルド長室と書かれている部屋に入って来たのは栗毛のロングヘアでクール系の美人。真面目そうな人間族の女性で、ノルンのギルド登録を担当した人物でもある。


「シェイネさん、疲れている所申し訳ありませんが早速報告をお願いします。」


 ギルド長は言葉遣いこそいつも通り丁寧だが、口調はやや強めで部下の女性に報告を促す。


 まあ、この部下の女性がドーラの街に帰還次第何時であろうと叩き起こせと別の部下に頼んでいたのだが、やはり睡眠を妨害されては多少不機嫌にもなる。だが、それよりもこの部下の女性の報告次第ではこれから暫く眠る時間が無くなる程の諸問題が起きてくるという事の方が、若くしてギルド長にまでなった男の余裕を減らしているのだろう。


「はい、では新たに発見された遺跡の調査報告をさせていただきます。」


 女性も普段温厚なギルド長が早く報告を促す気持ちを理解している為、余計な前置きを抜きにして報告に入る。



「遺跡の位置は発見した冒険の証言通り王国と帝国を隔てる山脈、王国側の麓に広がる樹海に存在していました。


 ここ、ドーラの街から南東に馬車で3日、樹海に入ると馬車は入れないので加えて徒歩で4日程の距離です。


 遺跡については大部分が地中に埋まっていました。


 地上に露出ている部分の形状から古代遺跡に間違ありません。


 そして調査の結果【古代王の墓】で在ると判明しました。」



 その後、ギルド長から質問しつつ空が白み始めるまで調査報告を詳しく女性から聴き出し、2人で報告書を作成した。



「ふぅ、とりあえずは報告書はこれで完成としましょう。シェイネさん遺跡の先遣調査、ご苦労様でした。


 今日は休暇にしてください。本当はもっと休みをあげたいんですが状況が状況なので明日から来てください。出張手当と危険手当はしっかりと出させて頂きますので。


 考古学に造詣が深いことに加え、魔法使いであるシェイネさんはギルドにとって欠かせない存在です。これからもよろしくお願いします。」


 ギルド長は疲れきった部下を労い、気を配る。この様な所が多くのギルド職員から慕われる要因なのだろう。

 もっともただ人が良いだけの人物なら、若くして辺境都市ドーラのギルド長になど成れる筈がない。人柄や性格も含めて相当やり手なのは間違いないだろう。








 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~









 古代遺跡は、極々稀に発見される。


 既に発見された遺跡を調査し得られた情報によると、数千年以上前この大陸には大陸全土を統一した王国があったとされている。


 この王国が存在した時代には、現在の魔法使いでは造れない魔導具が数多く存在した。


 現在は、魔具と呼ばれる魔導具を真似た劣化版が造られている。性能差は言うまでも無い。


 このことから、現在よりも魔法使いの数と質が遥かに高い水準であったものと推測されている。


 その時代の最高峰である魔法使い達が魔物から取れる魔石を加工することで魔導具を造った。


 その偉大な魔法使い達が魔法と魔導具の力で大陸を統一し、その子孫が、王や貴族になった。


 その王国は最低でも数百年は続いたとされているが、未だ王国の名前が分かっておらず一般に古代王国と呼ばれている。


 絶大な繁栄を誇った古代王国が何故滅んだのかも分かっていない。


 古代王国の時代については現在も考古学者はもちろん、古代王国の遺跡に真実や(ロマン)を追い求める冒険者も多い。



【古代王の墓】とは、絶大な権力を持っていたであろう古代王国の王族の墓である。


 当時の王の墓は王族の権力顕示の為か巨大である場合が多く、棺と共に大量の財宝が中に安置されている。


 当然、王の墓には墓泥棒対策に様々なセキュリティが在る。それも高性能の魔導具を活用して。


 現代では完全に再現出来ないような高性能な魔導具がセキュリティ機能を担っている以上【古代王の墓】の遺跡発掘調査は難易度が非常に高く、そして危険だ。


 ギルドの遺跡探索依頼のランクはAもしくはSランクである。


 ギルドに指名されたAランク以上のパーティが複数協力しなければならない。そうやって高ランク冒険者が遺跡内の大きな危険を取り除き、さらに中・低ランク冒険者や騎士団が小さな危険までも取り除く、そうやって初めて本格的な遺跡調査が行える様になる。


 それでも必ず死者が出るのが【古代王の墓】の遺跡発掘調査なのだ。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 最終投稿日から8年以上、世間ではコロナで多くの方が亡くなって御存命でしたら生存報告だけでも……
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