20話 育成
「それでは、改めてお前たちの今後について説明しよう。」
装備や生活必需品を買い戻してきたジョゼ達に告げる。
「さっきも言った通り、普段は冒険者として活動して、たまに俺の命令に従って行動する事になる。
あー別に冒険者を強制する訳じゃあ無いぞ?
自分達の食い扶持は自分たちで稼げるなら、冒険者以外でもかまわない。」
別に冒険者になって貰う事は無いが、俺の下僕になるからには最低限の戦闘力は必要だ。結局冒険者を続けて貰うしか無いだろう。
「いえ、俺たちはどうせ冒険者稼業ぐらいでしか稼ぎ方を知りません。このまま冒険者を続けます。」
ジョゼが答える。
まあ、そうだろうな。元々冒険者で、金が必要で強盗になる奴らだ。荒事以外に稼ぐ方法などあまり思いつかん。
「確かジョゼがBランクで、他はCランクだったな?パーティとしてのランクはどうなるんだ?」
ギルドの受付嬢に分からない事があればその都度聞いてくれと言われたが、実際に何か聞いたことは無い。ギルドの受付に行くと依頼の受注や完了の報告以外に何か出来る空気では無い気がするのだ。
こちらが余計な事を頼めば、余計な仕事を増やしやがって、見たいな雰囲気になる予感がする。
ギルドは公的機関に近い為、所謂お役所仕事なのだろう。
「はい、そうです。
パーティのランクはメンバー
の中で最も高いランクに合わされます。俺たち【影闇の刃】はBランクパーティになります。」
Bランクパーティという事はある程度の実績も経験もあり、ギルドにも認められているということだな。
「冒険者として活動を再開する前に、お前たち5人は俺の訓練を受けて貰う。今のままではこれ以上ランクを上げる事は出来ないだろう。」
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「ボス・・・ここは?」
「お前たちは、基本に体力が足りない。まずは基礎的体力をつけてもらう。」
こいつらは反応速度や、瞬発力には優れているが、スタミナが無い。それを補うための訓練をしようと思う。単なる思いつきだ。
ここはドーラの街から北に見える山の中腹の平になっている草原だ。魔物も出るがEやDランク程度だ。こいつらでも問題なく対処出来る。
「この草原を100周しろ。」
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全員が100周のマラソンを終えた頃には日が沈んでいた。朝から走り倒しだったので、最後の方はゾンビの様に走っていた。
何周か数えるのはクラーラさんに任せ、俺は草原で寝転がりながら読書したり、クラーラさんの膝枕で昼寝をしていたら途中から下僕どもが殺意の篭った視線を向けてきたので俺も一緒に走った。
俺は魔力で身体強化して走ったので、昼前に100周終わったが。
昼にはクラーラさんお手製のお弁当を食べ、全員が100周を終えて転移で、ドーラの拠点に送った。
そして朝にはまた、俺が迎えに行く。
走るコースを険しい山道に変えたり、激しい川の流れに逆らう様に泳がせたり、魔境の中に放り込んだり、水棲魔物がうようよいる海に放り込み、岸まで泳がせたり・・・
こんな生活を半年つづけた。
途中から育成するのが楽しくなり、下僕達の成長が感じられて嬉しかった。
1ヶ月目
厳しい訓練を強要する俺に対して殺意を向けていた。
2ヶ月目
連帯責任で追加の訓練を与えたり罰を与える様になったら、仲間内で励ます様になり殺意の篭った視線は無くなった。
3ヶ月目
むしろ集団行動を好む様になり、無駄な動きが無くなり一糸乱れぬ集団になった。
5人とも時速40kmで長時間走れる様になり。短距離ならばさらに高速で走ることができる身体能力になった。
4ヶ月目
模擬戦をひたすら行い。対人戦に慣れさせた。
5ヶ月目
俺が引っ張ってきたAランクの魔物を5人だけで倒させ続けた。
6ヶ月目
ギルドのBランクの盗賊団退治などの厄介そうな依頼を受けさせ続けた。
「この半年、誰も脱落せず、よく頑張った。訓練は終了だ。俺が教えられることはもう何も無い。」
「「「「「はっ‼︎ご指導ありがとうございました!」」」」」
一糸乱れぬ動きで敬礼してくる。
「お前たちは盗賊だった。だが今では盗賊団を中心に狩る冒険者だ。それはかつての過ちを償わせる為でもある。
盗賊は【影闇の刃】を恐れているだろう。お前たちが名を上げれば上げる程盗賊の被害は減り、お前たちの過ちを償う事にもつながる。
俺はお前たちに過去を清算し未来を歩んで行って欲しい。」
【影闇の刃】の名が上がれば俺自身が権力を持た無くてもよくなる。なので、出来るだけ名を上げて欲しい。
「ボス、俺たちの事をそこまで考えてくれていたのですか!一生ついて行きます!ボス!」
ジョゼが泣きながら叫ぶ。他の4人も熱い涙を流している。なんともむさ苦しい。




