表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/22

19話 下僕


「……すぅーすぅー」


リーダーの妹の治療が、完了した。


「クラーラッ!!」

「「「「姉御ッッ」」」」


リーダーの妹はクラーラという名前らしい。18歳で俺の奴隷達程では無いが素朴な感じの美人さんである。髪はリーダーと一緒の薄茶色で癖毛。背中まで掛かるウェーブになっている。治療の時は例によって全身を撫でる様に治した。全員部屋の外に追い出していたので、問題ない。


リーダーは刈り上がった短髪だ。ちなみにリーダーの名前はジョゼと言うらしい。老け顏だがまだ20代とのこと。弟分達の名前も聞いたが、覚える気はない。



あの後、ジョゼを含め全員が俺の下僕となる事を了承したので、ドーラの街の家で寝ているジョゼの妹クラーラを治療しにきたのだ。青石病は治癒魔法で、問題なく治せた。




「今は眠っているが、あとは食事と睡眠をしっかりとれば完治するだろう。」


クラーラが治った事に興奮しているジョゼ達に、現実を思い出させる。


「クラーラさんは、もう問題無い。約束通りお前ら5人は俺の手となり足となり働いてもらう事になる。


あーあと、俺が上級魔法使いだとか、俺に関する情報は一切誰にも漏らすなよ?もし逃げたり情報を漏らしたりした事がわかったら確実に殺りにいくからな?」







~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~







次の日、


俺は朝一で、ジョゼ達の家の前に立っている。昨日は、暗くて分からなかったが、しっかりとした一軒家だ。


遠慮なく入ると、玄関でジョゼに出くわした。ジョゼはナイフを構えている。


流石Bランク冒険者なだけはある。そりゃ自分の家にいきなり部外者が入ってこれば俺だって構える。



「おはよう。クラーラさんの具合はどうだ?」



「ぼっ、ボスッ!おはようごさいます!はい、ボスのお陰ですっかり元気です。ずっと寝たきりだったので体力はかなり落ちているようですが、問題無いと思います。


おいっお前らぁーボスが来たぞぉー。」



家の奥でバタバタと音が響き男達とクラーラさんが出てくる。野郎どもは既に俺の下僕だがクラーラさんは違うのでさん付けだ。



「「「「ボスッ、おはようごさいますっ」」」」


いつの間にか俺の呼び名がボスになっている。


こいつらは、俺の命を狙って尚生かされているという経緯で下僕になったのだから、ボス扱いは妥当か。


「おう。全員逃げてないようだな?早速お前らの今後について説明する。」




「ちょっと待ってくださいっ‼︎」


初めてクラーラさんが声をあげた。


「どうしました?クラーラさん。」



「事情は兄達から聞きました。こちら側が完全に悪いです。ですが兄達の行動の原因はすべて私にあります。兄達ではなく、私があなたの下僕になります。」



女性からあなたの下僕になりますって言われるのはかなり興奮するが、毎日美しい奴隷に囲まれて生活している俺にとって、クラーラさんが下僕になることに、あまり魅力を感じない。少しは感じる。



「クラーラ。これは俺達の問題だ。実際に行動を起こしたのは俺達だしな。お前は何も気にするな。これからは元気に、そして強く生きるんだ。


・・・愛している。さらばだ。」


そう言ってジョゼは目をつむり玄関から外に出ようする。


「兄さん・・・」


そして、クラーラさんはまるで戦地に赴く兄を見送るような瞳でジョゼの背中を見る。


「・・・なんか勘違いしているみたいだが、俺はこいつらを無駄に使い潰したりしないぞ?基本今まで通り、ここで冒険者として生活してくれて構わない。たまに俺の命令を聞いてもらう感じだ。犯罪はもうやめろよ?」



「「「「「「へ?」」」」」」



6人とも間抜け面だ。そもそも何となく使えるかな?と思って下僕にしただけだ。今の所、特に使い道無いし。使い潰したりはしない。



「それだけですか?俺達はボスの命を狙ったんですよ?

ボスはかなり強力な魔法使いのようですし。てっきり魔法の実験体にでもされるのかと・・」


実験体って‼︎俺はそんなマッドでは無い!


「お前らにやってもらう事は、基本情報収集のつもりだ。この街の裏情報とか、他所の街も含めて面白そうな情報を俺にもってこい。


あと強盗していたことや俺を殺そうとしたことは忘れてねぇーからな?先ずはお前らの腐った性根を矯正することから始めるつもりだ。覚悟しておけ。


あと気になったんだが、お前らパーティ組んでるのに、何で全員盗賊職なんだ?」



これは気になっていた。俺を襲う時もパーティなのに、全員素早い動きで急所を狙ってきたり、隠密が上手い気がしたのだ。盾役や後衛の弓兵くらい居ても良いだろうに。



「それは、こいつら俺が一から鍛えたんですけど、俺が盗賊職なんでそれ以外の教え方わらなかったからです。」



バランス悪過ぎだろ!まあ、全員が隠密行動が取れれば敵にばれずに全員で接近出来る…基本一撃必殺狙いだし、一撃目が決まらなくても直ぐにフォローし合えるという事か?まあチームワークはかなり良さそうだ。


全員盗賊職なのは、情報収集に特化しているとも言えるだろう。便利に使うつもりだ。



「そうか、とりあえず今から装備を整えてこい。金はあるだろ?」


クラーラの為の依頼や強盗で相当溜め込んでいた筈だ。売った装備くらい買い戻せるだろう。


「それが、無理なんです・・・。」



「ん?相当溜め込んでる筈だぞ?クラーラさんは俺が治したんだ。その分かなり金が浮いたはずだ。」



「恥ずかしい話なんですが・・・クラーラの病気を治すためにあちこちでポーションや青石病に効くと言われて買った薬でかなり騙し取られたんです。今考えれば、確実に偽物でした。あの時は藁にもすがる思いで・・・。


さらにこの家を担保に借金をしてたんです。その借金の分はなんとか返せるんですが、そうすると手元に殆ど残らないんです。両親から譲り受けたこの家を手放すのは出来れば避けたいので・・・」



「つまり、家を残して無一文。家を手放す訳にはいかないって訳か?」



「はい。ですが、俺達はそれなりに稼げていた冒険者です。低ランクの依頼なら装備が無くても十分です。それで金が溜まったら装備を整えて、何時もの様に稼げます。」



「で?いつから俺の下僕として活動するつもりなんだ?調子に乗るなよ?」


当然だ。


「・・・すみません。ボス。家を売りま「だが、その必要はない。」・・・?。」



この家は中々良い家だ、冒険者ギルドからは少し遠いがスラム街からも遠いので、そこまで治安も悪くない。中流階級の住宅街のようだ。敷地は小さいがこの街に多い木造では無く、しっかりとしたレンガ造りだ。塀もかなり高いし登りにくい様に表面もツルツルだ。入り口は一つの門のみで守りやすい。小さい庭もある。今は雑草で荒れ放題だが普段はクラーラさんが手入れするのだろう。花壇の跡がある。



「この家が担保になっている借金分は俺がだそう。その代わり、この家を俺のこの街での拠点に使わせて貰う。俺の本来の拠点はこの街からかなり遠くてな、冒険者ギルドの拠点登録に困っていたんだ。」



そういえば、ギルドの拠点登録をまだしていなかった。依頼を受けるときに、何度か催促されたが無人島と書くわけにもいかないので、保留にしてもらっていたのだ。それに街の中に拠点があれば何かと便利だろう。


「わかりました。もちろん構いません。借金を肩代わりしていただけるのなら、ここはこれからボスの家です。」



快く受け入れてくれたようだ。借金の金額を聞いて、払ってやる。金はちょくちょく魔物の素材を売っているため唸る程ある。



「よし、今から借金を返しに行け。それから装備も整えてこい。他にも仕方なく売り払った必要な物も買い戻してこい。」


「了解です。ボス。」



下僕5人がビシッと姿勢を正し、礼をしてから家を飛び出して行った。




現在、この家にはクラーラさんと俺の2人きりだ。少し気まずいな。


ほぼ初対面だし。初対面でも、野郎相手や、奴隷、店の店員と客という立場なら気を遣わずに対応できるんだが。



「…あの、ボス?」


気まずい空気を感じ取ったのかクラーラさんが話掛けてくれる。


「ジョゼ達はそう呼ぶけど、クラーラさんは、必要無いよ?ノルンでいいよ。」


「はいっ、ノルンさん?助けてくれてありがとうごさいます。もういろいろと諦めていました。それと兄達が多大なご迷惑をお掛けして本当に申し訳ありませんでした。」



クラーラさんはそう言って90度に頭を下げてくる。



「子供にさん付けは変だと思うなー、これからよろしくね?」


子供っぽく上目遣いで言ってみる。お姉さんに甘えたい年頃なのだ。


「・・・う、うんノルン君。よ、よろしくね?」



まあ違和感しか無いだろう。さっきまでジョゼ達にビシバシ命令して下僕扱いしていたのだから。少しづつ慣れて貰えればいいが。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ