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18話 襲撃者


「ノルン君ーーまた来てねーー?」



「うん、カリンちゃんまたねー。おばさんご馳走様でした。」


カリンちゃんのお店で遅めの昼食を平らげ外に出ると、日は真上からかなり傾いており涼しい風が吹いている。気持ちが良いから露天を冷やかしつつ街の散歩でもしよう。



お店には転移でカリンちゃんに会う為だけにちょくちょく来ている。一応料理も美味しい。


今ではカリンちゃんにも懐かれ、おばさんの受けも良くなっている。カリンちゃんには毎回のように冒険者の話をしてあげている。


ふふふ、カリンちゃんが成長すれば必ずお嫁さんに迎えにいく所存である。その為にお店に、狩で得た肉などを差し入れたりして好感度もあげている。涙ぐましい努力だ。




カリンちゃんに話すネタの依頼はたまに受けている。弱い魔物の討伐・素材納品の依頼が主だ。


冒険者ランクは社会的地位が必要になった場面に備える為、上げようと思っている。かと言って悪目立ちするつもりも無い。少しづつ上げていくつもりだ。ちなみに今はDランクに上がっている。


EランクからDランクに上がる為には街の雑用や採取、野生動物の狩猟などの依頼をこなさなければならないので面倒だと思っていたが、ボックスの中に村で狩をしていた頃の在庫の中からEランクの採取や狩猟の依頼品が大量にあった。なので特に労力も無くランクを上げることができたのだ。


Eランクが見習い冒険者だとすると

Dランクは初心者

Cランクは一人前

Bランクは中堅

Aランクは凄腕

Sランクは化け物


Aランク以上はヘタな貴族よりも権限を持つと言われている。


明確に地位が決められている訳では無いが、単純に貴族が持つ権力より高ランク冒険者の持つ武力が上となる場合があるのだ。



馬鹿な貴族がSランク冒険者を囲い込もうとしたがあっさり断られた。その事に激怒した貴族は依頼途中のSランク冒険者を私兵50人に襲わせ無理矢理従わせようとした。私兵50人は全滅し、新手の盗賊団として処理された。


こんな事が10年くらいに1度は起こるらしい。


明らかに貴族が悪いが、Sランク冒険者は一方的に襲われたとはいえ貴族の私兵を殺しても、何のお咎めも無い程の武力という力を持っているのだ。


この世界は、まだまだ法の整備が緩い。権力、財力、戦力、武力。

なんでもいいが力があれば、ある程度は我を通す事ができてしまうのが現実だ。


まあ貴族に召し抱えられるのも、低ランク冒険者にとっては夢の様なものだ。命の危険が少なく、高収入なのだから当然だ。


だが貴族が召し抱えたいのは、高ランク冒険者である。しかし高ランク冒険者は貴族に召し抱えられる以上に稼げてしまうのだ。これでは需要が満たせない。


そこで、有能な貴族達はまだまだ現役だが、守るべき家族が出来るなどして冒険者稼業を引退する元高ランク冒険者を召し抱える。


単純に武力として雇う場合よりも、貴族の私兵には無い、元高ランク冒険者としての豊富な実戦経験を求めていることが多い。


その為に、あらかじめ有望な冒険者とは依頼などを通じて交流をはかっておき、いざ冒険者が引退したら高待遇で引き込むというわけだ。冒険者側としても面識のある方が良いだろう。



俺としては将来的にBランクまで上げるつもりだ。それ以上は貴族に見を付けられる可能性がある。今の所貴族に関わるつもりは皆無だし、Bランクならば社会的地位もある程度はある。妥当なところだろう。


フラフラと適当に散歩していると、気づいたら知らない場所を歩いていた。日は建物に遮られ薄暗く、周りの建物も汚なくボロいものばかりだ。道の脇には浮浪者が横たわっている。寝ているのか死んでいるのか分からん。生ゴミのような空気が漂っている。




スラム街だ。


スラム街を覗いた事はあるが、こんなに奥まで来たのは初めてである。視界に人影は道脇の浮浪者しかいないが、何と無く人はいる気がする。静か過ぎるのだ。


探知魔法を使ってみる。普段街の中では探知魔法は使わない。人が多すぎて意味が無いからだ。




(…ん?いるな〜。しかも囲まれてる?)



探知魔法には半径20m以内に、浮浪者も含め5人いることが分かった。完全に囲まれてる。特に人の恨みを買った覚えは無いのだが。


浮浪者の前を通り過ぎる瞬間、浮浪者がナイフで足を狙ってきた。寝たふりの体制から無駄の無い動きである。



ガキーンッッ



もちろん障壁魔法は展開済みである。浮浪者のふりをした襲撃者に手を向け、風を操り命を刈り取ろうとすると、隠れていた4人がそれぞれ俺の急所を狙って襲い掛かってくる。もちろん障壁が弾く。


「退けっ!」


浮浪者がピシャリと命じると全員距離を取る。


ふむ、最初に襲ってきた浮浪者がリーダー格の様だな。



「何の用だ?」


瞬殺できるが、襲われる覚えが無いので一応聞いてみる。


「兄貴、間違いなくこいつだ!!」


「……弟分の仇だ。」



全く身に覚えが無い。


「心当たりが全く無いのだが…それにスラム街に来たのは初めてだ。」



「弟分が2人お前に殺された。許さん!」



2人…?あっ、思い出した。いつか路地裏で2人組にカツアゲされそうになったな。それで瞬殺したっけ?まさか、もう一人いたとは…見られていたのか。ちなみに死体は、遠い海の魔物の胃袋によって処分されているだろう。


思い出してスッキリした所で全員を風の鞭で腹を強めに殴り気絶させる。首を叩いて気絶させるなどという器用な事は出来ないが不可視の攻撃だ。避けようが無いだろう。


全員をまとめて、魔物が蠢く森に転移する。



この森は大陸を二分する山脈の麓にある森だ。雑魚な魔物は殆どいない。ランクB〜Dの魔物が跋扈している。軽めの魔境である。この森では最低平均Bランクのパーティでも生きることが難しい地帯だ。


俺が魔物との戦闘訓練の為、たまに訪れる場所だ。もちろん滅多に人に出くわす事はない。山脈の上の方にはAランクSランクの魔物の縄張りになっているらしい。俺もまだ行っていない。


魔境に生息する魔物は縄張り意識が強い為か、獲物を追いかけて森から出てくる事はあるが、それ以外でこの森から出てくることは基本ない。


この魔境に放り出すつもりで連れてきたが、一応言い分を聞こう、暇つぶしに。


水魔法で水をぶっかけ起こす。げほげほ言いながら目を覚ます。


「さて、勘違いを正そうか。まず、俺はお前の弟分とやらに、一方的に脅され、金と奴隷を差し出す様に言われた。断るとナイフで襲い掛かって来たので、返り討ちにした。以上だ。」



「そんな事をする奴らじゃないっ!!確かに金に困っていたが、流石に子供を襲う様な外道じゃねぇー!!」


「俺は嘘をついたことがないしこれからも嘘を吐くつもりは無い。つまり、現場を見ていたそいつが嘘をついているということだ。もう一度聞いてみたらどうだ?」


まあ、嘘をつかないってのが既に嘘だがな。つく時はつく。


リーダー格の男が、現場を目撃していた弟分に視線を向ける。


目を向けられた弟分が、たじろぐ。目を合わせただけでどちらが正しいのか見抜いたリーダー格の男は、「……どういう事だ?」ドスの効いた声で弟分に問いただす。


「あいつらは、このガキに殺されたんだ!それだけで良いじゃ無いすかっっグボッッォ!」


弟分が叫ぶ様に言い訳にもならない言葉を吐くと同時にリーダー格の男に殴られる。





「悪かったと思っている。子供を襲う様な奴は最低だが、こっちもなりふり構ってられない状況なんだ。


俺たちは冒険者でパーティを組んでいる。俺はBランクだが、こいつらはみんなCランクだ。

そこそこ稼ぎはよかったんだが、俺の妹が青石病に掛かっちまって、街の治癒士じゃ治せねぇーって言われたもんだから、借金までして、神聖教会の治癒士に頼んだんだ。


それでも金が足りねーってんで、依頼をがむしゃらにこなしてたんだが、まだ払う金の半分も集まらねーんだ。


それで俺たちは盗賊紛いの強盗で稼ぐ様になった。

お前には悪いと思っているが、逃がせば、俺たちは捕まる可能性があるし妹も助からない。恨むなら俺を恨んで・・・死んでくれ。」




リーダーはそう言うと素早く殴り掛かって来た。結局俺を殺す気ならリーダーも弟分と同じく最低野郎じゃねーか。


リーダーに続いて弟分達も向かってくる。もちろん障壁で弾く、それから5分程水を魔法で操りボコボコに痛めつけてから、全員を拘束する。


「言い残す事はあるか?」


脅してみる。


「ま、待てっ悪かった!お前の命を狙った事は謝る!

もちろん命の借りは命で払うつもりだ。こっちが狙ったのはあんたの命一つ、虫がいいとは思うが、俺の命一つで勘弁してくれ!」


まず思ったのは、こいつら意外と高ランクだという事だ。青石病というのは知らんが、病名から何と無く想像が付く。


リーダー格の男も含め冒険者だというのに装備がナイフのみというのは、全部売って金に変えたみたいだな。仲間想いな奴らだ。



「兄貴ぃ〜すまねぇ〜すまねぇ〜ッ兄貴が死ぬなら俺も一緒に死ぬ!」


「馬鹿野郎‼︎お前ぇらが妹の事を考えてくれてたのは分かってる!死ぬのは俺1人で十分だ!

へっ、それに弟分の尻拭いは兄貴としての義務だしな?」



なんか勝手に話が進んでしまっている。で、俺は誰を殺せばいいのだろうか?



「で、お前の妹はまだ生きてるのか?」



「え?あ、はい…後1週間くらいで、全身に青い痣が広がって死ぬそうです。」


悲痛な面持ちでリーダーが告げる。



「じゃあ、俺がお前の妹を治してやる。その代わりお前ら全員俺の下僕になれ。」



「へ?…それは、どういう…?」




カサッカサッカサッカサカサッカサッカサッカサカサッカサッカサッカサッカサッカサッカサカサッカサッカサッ


来たか。此処は軽めとはいえ、一応魔境である。大声で話していれば当然魔物が寄ってくる。森に来てから探知魔法を常に半径100m程展開いていたので気付いていたが。


この魔物は、冒険者ギルドの資料室の本にも載っていた蜘蛛系の魔物だ。体長30cmから1m程で、素早い。糸は吐かないが4本の牙と強力な麻痺毒がある。単体だとDランクだが数十匹の群で行動する為、群全体だとBランクに跳ね上がる。



全員を囲む様に障壁を展開し、風の刃で的確に頭を落としていく。3分程で殲滅完了。



さて…


「俺は魔法が使える。治癒魔法も少しは使える。時間はかかるが問題なく青石病とやらも完治させられるだろう。どうするか決めろ。」

今更ですが、プロローグの主人公やその家族の設定は、脚色してますが私のリアルを元にしていたりします。もし気になったら読み返してみてください笑

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