14話 買い物
翌朝、かなり清々しい気持ちで目が覚めた。視界は肌色一色、暖かい肉に包まれているようだ。昨日の事を思い出す。奴隷を買ったんだった。
気持ちのいい目覚めだ。次はシアを抱き枕にしよう。起きるか。
「おはようございます。御主人様。」
起き上がると、俺が抱き枕にしていたアメリアが挨拶してきた。どうやら先に起きていたようだが、俺が起きるまで、そのままの体勢で居てくれたらしい。
「「「「おはようございます。御主人様。」」」」
四人が綺麗に揃った挨拶をしてくれる。アメリア以外は元の奴隷の服を着ている。
「おはよう、よく寝た?」
「はい、皆十分に睡眠をとり、体調も万全です。」
魔法で水を出し顔を洗う。樽に水を出し、奴隷達にも顔を洗うように言う。
朝食に焼き魚を食べながら、みんなに話す。
「今日は、街に買い物へ行って生活用品とか細々した物を買う。掃除道具や調理器具、食器類だな。あとはみんなの服だな。」
「服を買っていただけるのですか?」
アメリアが嬉しそうだ。
「そのボロ着じゃもったいからな。」
本当にもったいない。メイド服はあるだろうか?無ければオーダーメイドだな。下着類も必要だろう。金が心許ないので、最初に買い取り所へ行くか。また魔物の素材を売ろう。
「あと、シアには家の補修や増築、家具の制作を頼みたい。まずは、全員で寝ても広いサイズの特大ベッドを頼む。材料は出す。後で木工用の工具も買わないとな。」
魔法でベッドを作れないことも無いが、素人の日曜大工では寝心地に影響するかもしれない。街で買うとなるとこの島まで運ぶには、ボックス魔法が人目につく事になる。やはり作らせるべきだな。
「わかりました。出来る範囲で精一杯頑張ります。」
「じゃ行くか。みんな手を。」
全員が手を握ったのを確認して冒険者ギルド前に転移する。
路地に入り周りに誰も居ないことを確認してから、ステルス魔法を解除する。
ギルド横の買い取り所に向かう。前回のように大きなボロ袋を5袋を買いパンパンに素材を詰める。奴隷達に運ばせ、買い取り所の広めのスペースで鑑定してもらう。今回は量が多いので30分以上かかると言われた。
先に札をもらい後で買い取り所の受付に行けば金が貰えるらしい。ギルドの施設だし、チョロまかしたりしないだろう。
先に細々とした物を買いに行こう。札を受け取り雑貨屋は何処にあるのか聞いてから、買い取り所を出る。
雑貨屋を目指して歩くとかなり視線を感じる。美少女の奴隷を5人も引き連れいる七歳児がいれば当然か。無視して進む。
雑貨屋を見つけ、必要そうな物をどんどん選んでいく。食器や調味料、様々な大きさの布、掃除道具などだ。金は今も多少あるし、余裕だ。全部で銀貨2枚もしなかった。
雑貨屋の店員に調理器具や工具はどこに売っているのか聞く。二軒隣に金物屋があるそうだ。
金物屋で、料理ができるルシルとチャイに好きに調理器具を選ばせ、シアに木工用の工具を選ばせる。
店を出て人目のない路地でボックスにしまう。
買い取り所に向かい受付で札を出す。金貨5枚と大銀貨2枚銀貨8枚だった。大金である。当面の資金には十分だ。奴隷達は驚いていたようだが、素早くポケットからボックスへしまう。
買い取り所を出て以前行った服屋に向かう。場所は覚えいるので近道するために路地に入る。
路地をみんなで雑談しながら歩いていると1人の薄汚い男が、通路を遮るように立ちふさがってきた。後ろを見ると奴隷達のさらに後ろにも1人いる。
「さっき買い取り所で受け取った金と有り金を置いてけ、この路地の通行料だ。あーついでに奴隷もな?」
ニヤニヤ下衆な笑みを浮かべている。随分と高い通行料だな。もちろん払う気は無いけど。どうやら素材を買い取り所に持ち込んだ時からつけていたらしい。わざわざ換金するまで待ち、カツアゲしてがっぽりいただくつもりだったのか。
奴隷達は緊張した面持ちだが、取り乱してはいない。おれが魔法使いだということを知っているからな。
既に奴隷達の周りに障壁魔法がかけてあり、安全は確保してある。
「そこを通してくれないか?通してくれたら、命を取らないであげるよ。あーついでに有り金を置いていけ。」
挑発すると、ナイフを持ち突っ込んできた。単純だな。
小石魔法で脳天を撃ち抜き、死体をボックスに仕舞う。死体ならボックスにも入る。
後ろを見ると、奴隷達を人質に取ろうとしたのか障壁にぶつかって痛がっているマヌケがいた。飛行魔法で回り込み上から頭を撃ち抜いた。またボックスに仕舞う。後で戦利品を確認しよう。
そういえば、初めて人を殺したのではないだろうか?いつかは殺す事になると覚悟はしていたので、気にしないが。障壁魔法を解き奴隷達に話しかける。
「大丈夫だった?」
「はい。誰も擦り傷すらありません。流石御主人様です。」
アメリアがうっとりした目線を俺に向けながら言う。
人を殺したのにそんな視線を向けられていいのだろうか?まあこの世界は命が軽い。盗賊の命はもっと軽い。みんな殺した事に異論はないようだ。
以前行った服屋に到着する。
「いらっしゃいませ、またのご来店ありがとうございます。本日はどの様な品をお買い求めでしょうか?」
店に入ると前と同じ店員が話しかけてきた。以前来たことを覚えているみたいだ。できる商人だ。
「今回は、この子達に普段着を3着ずつと下着類も5着くらい適当に頼む。好きに選ばせてやってくれ。」
「かしこまりました。お嬢様方どうぞご自由に手にとってお選びください。」
店員は一瞬奴隷達の首輪に目を向けるが、客なら奴隷だろうが気にしないようだ。
「そういうわけで、自由に選んできて。」
「御主人様。お言葉ですが、この店の品は、奴隷には過ぎた物かと。私達は露天の古着で十分です。」
アメリアが遠慮がちに言ってくる。
「金はあるのにわざわざ古着を着せる理由が無いし、別に奴隷の為ではない。俺の側で汚ない身なりを晒し続けるつもりか?
俺は服のセンスとか分からないし、自由に選べ。」
照れ隠しで命令する。
「か、かしこまりました。全力で服を選んで参ります。」
皆でぞろぞろと選びにいった。
そして、店員に本題を切り出す。
「少し相談なんだが、貴族の使用人が着る様な服は置いてあるか?」
「はい、ございます。ですが先程のお嬢様方がご着用になるのでしたら何名分かサイズがごさいません。オーダーメイドになってしまいます。」
やはり無いか、アメリアやルシルはともかく、ドワーフのシアと双子のサイズは無いだろうな。
「一度、見せてくれないか?」
「かしこまりました。すぐにご用意いたします。」
パタパタと奥に消え、直ぐに服を抱えて戻ってきた。
うーん、想像していたメイド服と少し違う。スカート丈も足首まであるしダサい。
「全員分をオーダーメイドで注文しよう。ただし、今から言う通りに少しデザインを改良して欲しい。」
注文すると言ったら店員が嬉しそうな顔をしたが、すぐに笑みを引っ込め真剣な顔になる。
「えーと、まず•••••••••」
金を払い、全員の採寸を終え店を出る。完成には5日かかると言われた。生地も良い物を指定したので、1着銀貨4枚もしたが楽しみだ。
奴隷達は元の奴隷の服から新しい服に着替えている。前の奴隷の服は捨てようかと思ったが、アメリアが雑巾としてでも使えると強く主張した為他の荷物と共にボックスの中だ。
元が美少女なだけあり、街の男どもの視線を奪いまくっている。全員、俺のもんだ。優越感を感じる。
島に帰って昼飯にしよう。カリンちゃんのお店に行こうかと思ったが、奴隷達をカリンちゃんに見せるのは何か後ろめたさを感じる。
人影の無い路地に入り探知魔法で周りに人が居ないことを確認し島に転移。
家に入って買ったものを出していく。
「ルシル、チャイ早速料理を頼む、他は、掃除とかよろしく。シアはベッド作りをはじめてくれ。」
机に食材を置き、家の脇に何種類かの木材を置く。
皆慌ただしく動き出す。
「あの、御主人様。釜戸がありません。」
ルシルが遠慮がちに言ってくる。
そうだった基本的にこの家には設備が無い。ちなみにトイレは、魔法で50メートル程の深さの小さな穴を掘り、事が終わると上から少し土をかけて悪臭が立つのを防いでいる。
家の隅っこを台所スペースと定め釜戸を作る。床の板を少しはがし地面にレンガの様に加工した石を魔法で操り素早積んでいく。レンガ同士を結合させ、火口に別の種類の石をはめ込む。木製の取ってを取り付け外せる様にした。
作業時間20分程だろうか?素人にしては上出来だ。
釜戸の横に大量のよく燃える木材を蒔にして積み上げて置く。
火打石も雑貨屋で買ってある為、俺が食材さえ出せば問題なく料理が出来るだろう。
「あとは頼む。海にいるから、料理が出来たら呼んでくれ。」
狭い家なので、掃除もアメリアとチャムの二人で既に一通り終わったようだ。今は外の掃き掃除をしている。
「アメリア、掃除が終わったら料理を手伝ってあげてくれ。チャムと海で遊んでくる。」
そう言ってチャムの手を引っ張り海に遊びに行く。
「かしこまりました。行ってらっしゃいませ。」
この辺りの海は、危険な魔物が生息しているが、決してこの島に近づいて来ない。俺のせいだ。
飛行魔法で海の上を飛び雷魔法を海面に叩き込むと、でっかい魔物が気絶して浮かんでくるのだ。面白くなって、狩りまくっていたら、魔物が島に近づいて来なくなった。魚はいる。
要するに島の周りの海は子供が遊んでも安全だ。
「チャム、何して遊ぼうか?」
「魚取りがいいです!あたし得意なんですよ?」
「じゃあどっちがたくさん捕まえられるか勝負しよう。制限時間は料理が出来るまで!」
「はいです!」
俺は相手が子供だろうが容赦しない。チャムがいる為、雷魔法は使えないがやりようはいくらでもある。
「よーい、はじめ!」
2人とも我先に海へはいる。当然全裸だ。それが、ここの海に入るときの不変のルールなのだ。
潜るとチャムが弾丸の様なスピードで、魚を追って泳いでいく。猫系獣人の能力なのか、さっきまでは無かった鋭い爪で次々に魚を仕留めていく。
これは俺もうかうかしてられん。魔法で空気を操り魚を包み込む様にして仕留めていく。魚はエラから空気を入れると、窒息死するのだ。卑怯では無い。
「御主人様〜チャム〜お食事の準備が整いました〜」
チャイが砂浜で、頑張って大声で呼んでいる。
チャムと2人で砂浜に上がり、成果を見せ合う。くっ、負けた。チャムは獲物をある程度狩ると砂浜まで置きに戻っていたはずだが、俺よりも若干多い。空気で仕留めるのは効率悪かったかな。
「負けたか〜、チャムは泳ぎが本当にうまいな。今度教えてくれ。」
「はいです!」
元気いっぱいである。
身体を拭き服を着て家にはいる。魚はボックスへ。
家に入ると良い香りがする。食欲が湧き上がる。
俺が席に着くのを見て皆席に着く。
「じゃあ食べようか。」
うまいな。白み魚のフライにポトフ、サラダもあり、かなりバランスの良い食事だ。やはり手の込んだ料理は美味しい。
皆も満足そうだ。
「御主人様と同じ料理が食べられるなんて、私達はなんて幸せなんでしょう。御主人様ありがとうございます。」
アメリアが恭しくお礼を言ってくる。俺が調理したわけではないのだがな。食材は俺持ちだが。
「うまいな。ルシル、チャイこれからもよろしく頼むよ。」
「御主人様のご期待に添えるよう全力を尽くします。」
「は、はい、がんばります!」
昼飯を食べ終えると、シアはベッド作りの作業に戻り外へ、他は皆で仲良く食後の後片付けをしている。
まだ、昼過ぎだ。ギルドの依頼でも見に行くか。




