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エトワールの賢者  作者: 沢村茜
最終章 花の国
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美しい桜のような花

「ただ、どうやって美桜の意思を確認するかよね」


 セリア様は言葉を漏らす。


「実際、連続して二回魔法を使えそう? 一度美桜にこちらにきてもらって、一年後に再び返すか、わたしたちの誰かがあなたの世界に行って、戻ってくるか。あなたの魔法が使えない間はわたしがここにいてもいいから、治安的なものは考えなくても大丈夫だけど。あの転移魔法をわたしが使えればいいのだけれどね。あんな古代魔法を実践するなんてこと考えたことはなかったわ」


「あれは無知だったからこそ、できたことよね。魔力自体は試練の日から格段にあがっているけど、その辺りはどうだろうね。これからどうなるかによるかな。美桜はどちらがいい?」

「わたしはどっちでもいいよ。アリアのしやすいほうで」

「そうか。美桜に来てもらうのが一番だけど、わたしも向こうの世界を見てみたい。でも向こうの世界で魔法をそもそも使えるのかもわからないんだよね。直接会う以外にも意思疎通ができる方法があればいいんだけど」


 アリアは苦笑いを浮かべていた。

 いろいろこの世界とは違うんだろう。わたしのこの能力も向こうの世界で反映されることはあるのだろうか。


 アリアに問いかけると、やはり分からないという答えが返ってきた。


「しばらく考えてみるよ。どちらがいいのか」


 本当は交わることのなかった二つの世界がこうして交差して、わたしが生まれた。

 きっと向こうに帰ってもそうたやすくは信じてくれないだろう。

 もし、今回の経験がなく、お母さんからそんな話を聞かされたとしても、わたしも信じられるか分からない。


「違う世界をつなぐ転移魔法って、すごい魔法なんだね」

「魔力がすべての世界ではないんだけどね。多大な魔力を消費する分、今、実在する生き物で使えるのはこの子と、可能性があるのはわたしくらいでしょうね。将来的にということを考えればリリーやラウールも可能性があるかもしれないけれど」


 セリア様は肩をすくめていた。


「失敗したらどうなるの?」

「魔力だけ消費して不発になると思うわ。そもそも魔法自体を発動できない気がするけれど」


 セリア様はそうさらりと綴るがいまいちわたしにはよくわからない話だ。

 あらゆるものに意味がある。

 そう教えられた。

 けれど、わたしがこの世界に、いやそれ以前にお母さんがここに来た意味はあったのだろうか。

 ただの運命の悪戯だったりするのだろうか。


 わたしはお母さんの指輪に触れた。指輪はどうしてもっていかなかったのだろう。

 お母さんに渡すと言ったが、彼女はそれを望んでいたのだろうか。

 少なくともそう信じたかった。お父さんとお母さんが出会い、わたしが生まれたのだから。


「お父さんとお母さんはこの城で出会ったの?」

「違うよ。北方にある草原で。わたしが転移魔法を使うときにお兄様も近くにいたの。そこでかな」

「せっかくだから連れて行ってあげたら?」

「そうだね」


 アリアはセリア様の言葉に、首を縦に振った。

 彼女の転移魔法によって到着した場所は森の一角だ。木々に囲まれるように一本の、そこには五枚の花弁を綴った花を宿した木が立っていた。

 わたしはそれによく似た花を知っていた。わたしの名前にも使われている漢字。


「桜の花みたい」

「桜?」


 アリアは不思議そうに首を傾げた。


「わたしの世界ではこのはなによく似た花があって、それを桜と呼んでいるの。その桜にもいろいろ種類はあるのだけれど。それでね、この桜って、わたしの名前に使われている文字なんだ。わたしの名前は美しい桜と書いてね……」


 わたしはそこで気付いた。お父さんとお母さんが初めて会った場所に咲いていた桜の花によく似た花のこと。そして、その花を美しいと形容する文字を名前につけたことに。


 お母さんはきっとお父さんのことを愛していたんだろう。そうでなければ、わたしにそんな名前はつけなかったはずだ。


 わたしの目から大粒の涙が零れ落ちた。

 アリアの言葉を、私を生んでくれたお母さんを信じていなかったわけではない。

 だが、こういう形でお母さんの気持ちを知れてうれしくないわけがなかった。


「どうしたの? 美桜」

「大丈夫。嬉しいの。ここに連れてきてくれてありがとう」


 わたしは精一杯の笑みをアリアに返した。


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