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エトワールの賢者  作者: 沢村茜
第一章 妖精の国
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戦いの行方

「ローズ」


 動こうとしたリリーはニコラに制される。


 アルバンは大剣を抜くと振り下ろした。ラウールはその剣を自らの剣で受け止める。金属音が静寂の森に響き渡る。二人の剣は違う方向を向き、力勝負になっているのか剣の位置が僅かに左右に動く。


 ラウールは一歩後ろに下がる。アルバンは柄をより強く握り、踏み込んでこようとする。


 その時、ラウールの身体が銀色に光る。だが、すぐにその光は消え去っていた。


 再び男が剣を振り落とすが、ラウールはかけられた魔法に臆す様子もなく、剣を横に流し、アルバンの大剣を弾く。


「さすがに噂の王子様だな」


 アルバンの皮肉めいた笑みにもラウールは無反応だ。


「お前は忘れていないか? 俺たちの手元には王女がいる。お前がこれ以上反撃をしたら、王女に傷をつける。殺しはしないから安心しな」


 アルバンはそういうとにやりと笑みを浮かべた。


 だが、ラウールがそんな脅しにも怯まない。冷たい目でアルバンを見据える。


「逆にこちらも問いたい。他国の王女を誘拐して問題がないとでも思っているのか? 妖精たちに攻め込まれても文句は言えない」


「妖精なんて貧弱な奴らだよ。魔法を封じてしまえば、相手にもならない」


「封じられるなら、な。だいたい、ローズ王女を誘拐しただけでも問題なのに、傷つけるなんて論外だ」


「お前のやっている自国の民を傷付ける行動も論外だと思うが」


「その民が何も問題を起こしていないならそうだろう。妖精の国に幾度となく忍び込み、王女を誘拐したとなれば話は別だ」


 アルバンがラウールに飛びかかろうとした。ラウールは一歩後ろに下がり、詠唱する。そして、アルバンの足もとが凍りつく。彼は足を動かすが、氷から逃れられそうな気配はない。それはアルバンだけではない。私達を襲った人全員だ。皆、足元が凍りつき、身動きが取れなくなっていた。


「王女を殺せ」


 そうアルバンが言い放つ。だが、女性は顔を強張らせたまま、身動きを取らない。


「そろそろタイムリミットだ。決断しろ。降参するまで氷は解かないがな。もっとも降参したつもりで攻撃を仕掛けたらどうなるか分かっているだろうな」


 ラウールの口調は今までの少年の話し方とは違い、妙な凄みを感じる。


 再びラウールの体が銀に包まれるが、一瞬で消滅する。ラウールはジャコを睨む。


「さっきから何度もかけているが、今のお前には俺の魔法は封じられまい」


 その言葉にジャコの顔がより青ざめる。


 圧倒的にこちらが有利な状況だ。彼の能力に驚きながらも、理解できないことがある。それはジャコが幾度となく使っている封印魔法をなぜラウールには効果がないのかだ。


「何で、ラウールの魔法は封じられないの?」


「ラウール様とジャコでは根本的な魔力の強さが違うんですよ。魔力を封じる時に、相手より自分の魔力が高いと楽に封じれる。逆に、相手が高いとその魔力の差に応じて封じれる率はぐんと低くなる。もちろん、万に一つの可能性にかけて強い相手の魔法を封じる方法もありますが、可能性を考えると得策ではありません」


 ニコラは私の問いかけに笑顔で答える。


 それはリリーの魔力の強さがジャコに劣っているということなのだろうか。


「ジャコも魔力自体は人間にしてはかなり強い。こういう家業をしていても、能力自体は国で五本の指に入る魔術師です。お城の魔術師になれば、一、二を争う実力者になるでしょう。ただ、ラウール様の魔力が強すぎるんですよ」


 ニコラはそう補足する。


 ラウールの自信はここから来ていたのだろう。現にラウールがいなければ、状況は悪い方に傾いていた可能性も否めない。


 ラウールは口元に笑みを浮かべる。


 直後、ジャコが銀の光に包まれた。ジャコはうめき声をあげ、ラウールを睨む。ジャコを包んだ銀の光は消える事なく輝いている。リリーを包んでいた銀の光が消失する。


「魔法を封じるのはこうするんだよ」


 その言葉で辺りに動揺が走る。


「さあ、決断を下せ」


 ジャコを含め、アルバン以外は両手を上げる。ローズを捉えていた女性も例外ではない。


「ニコラ、ローズ王女を任せた」


 ニコラは頷くと、ローズの傍まで歩いていく。氷に囚われた彼らはただそんなラウール達を目で追うだけだ。


 ニコラがローズの傍につくのを待ち、女性が氷から解放される。彼女は目線を逸らすと、ローズから手を離す。


「リリー、こいつらを縄で縛れ」


 リリーが呪文を詠唱すると女性の手足が縛られた。女性はその間、抵抗もしなかった。ラウールがアルバン以外の氷魔法を解くと、リリーは彼らを縄で縛る。


「さて、お前はどうする?」


 ラウールは腕組みをし、アルバンを見据えた。


 アルバンは目を充血させ、ラウールを睨む。


「あと一秒だ」


 アルバンが持っていた大剣を投げ捨て、手を上げた。ラウールが氷を解き、即座にリリーが彼を蔦で縛り上げた。


 リリーはローズに駆け寄る。そして、ニコラから彼女の身体を受け取ると大粒の涙を零していた。


 リリーの蔦に囚われた者たちは、怯えた表情を浮かべるもの、憎らし気に見つめるものなど、その様子は多種多様だ。


「恨み言なら後で聞くよ。しばらく眠っていてもらう。妙なことをされると困るからな」


 ラウールが呪文を詠唱すると、彼らはその場で眠りにつく。アルバンやジャコも例外ではない。


 ラウールは平然とした顔で彼らを見渡している。その表情には疲れのかけらも見せない。


 魔法や戦闘を始めとし、この世界のことは分からない。だが、彼が並はずれた強さを持っていることだけは理解できた。王子や王様は屈強な部下に守られるものだという先入観を自ずと持っていたが、彼は違う。


 ラウールは投げ捨てられた武器を集め、木陰に置く。


「さて、エミールの木まで行くか。案の定、王女の身柄も確保できたしな」


「ちょっと待って。案の定って何?」


 ラウールはローズを捕えていた女性を指差す。


「さっき城の外で話をしているとき、その女が盗み聞きをしていたんだよ。王女の身柄を確保しているうちにエミールの採取に向かうだろうと思ったんだ。先にイネスを採取したのもそういう理由だ。エミールの木の皮には金銭的にそれだけの価値がある。恐らくバイヤールは王女の身柄も、アルバン達に預けていたんだろう。自分の家に連れ込むなど危険なことを奴がするとは思えない」


「じゃあ、エミールの木はあいつらの手に渡ったの?」


「今のローズの様子を見る限りできていないと思うよ。恐らく、ローズが気付くまで俺たちを足止めしておくつもりだったんだろう。採取ができたのなら、ここで俺たちを妨害する必要はない」


「明日まで待てば良かったのに」


「バイヤールから王女の身柄を移せと言われればそうするしかないからな」


 恐らくニコラも会話を盗み聞きする人に気付いていたのだろう。だからこそ、森についた時、私にああ言ったのだ。


「わたしは彼らを見張っておきますので、木の皮を採取してきてください」


「でも、ローズは今のままでは採取なんて無理よ」


「まずは当初の予定通り、俺たちで試してみよう。無理だったら、ローズ王女が気付くまで待てばいい。ジャコの魔力を封じたので、王女にかかった魔法も解けている。時期に気付くだろう。こいつらから依頼主の情報を聞き出したりとやらないといけはいことはたくさんある」


「ローズはどうするの?」


「ここにおいておけ。そいつらはニコラに任せておけば大丈夫だ。念のため、魔法が使える奴は封じておくか」


 彼が呪文を詠唱すると、ローズを抑えていた女性が銀色の光に包まれていた。


 リリーは木陰にローズを持たれかけさせると、ローズの髪の毛を整える。そして、ニコラに「よろしくお願いします」といい頭を下げていた。


 私たちはそこから歩き、エミールの木に到着する。最初見た時はその躍動感に惹きつけられたが、その必要性を理解したためかよりどっしりと構えて見えた。


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