ユウの書 第1話 畳がえし ― 2 ―
やーっと僕たちは、ユートピア遊園地についた。
入場門の前には沢山の人が居て、その入場券のチケットを買う為に行列が出来ていた。
僕たちもチケット売り場の列に並んで、チケット購入まで雑談している。結構な人数が並んでいて、これは開園前に買えないな。
あぁ……、こうなると昨日の海流お姉ちゃんの前売り券があれば、すぐにでも入場の列に並んで、すぐにアトラクションの列に参加できたのにな。
スタートダッシュが遅れる程に、1番人気の乗り物の列には行列が並んで行くからなぁ。
「海流お姉ちゃんのコンサートは1時からね。その前にお昼も食べておかないとお腹すいちゃいそうよね」
「12時前には食べておいて、12時半には席取りした方がいいのかなぁ?」
「あの畳返しを乗るには50分はかかるだろうなぁ。入場券を買ってから入ると、もうすでに前売り券の人たちが並んでいるだろうしさ」
「オバケ屋敷にも行く予定ですわよね? 時間的にお昼を少し押しませんか?」
「そうだよ。オバケ屋敷も40分間も中で遊ぶし、それの待ち時間と移動時間、後は予期しない時間が掛かる事があれば…………」
「ん~、お昼食べる時間がなくなるわねこれは? オバケ屋敷はお昼の後にした方がよろしいわね」
何しろアトラクションの待ち時間が正確に分からないと計画も全て狂うな。
「こう言う時にアトラクション優先券買っておくと便利なの」
「でもアレって高いわ。普通のチケットに3000円分も足さないといけないのよ」
「そうだよね。僕たちのお金じゃ、そんな高価な物なんて……」
「世知辛い世の中なの……」
「そ、それでしたら、今回はワタクシが皆さんの為に……」
「ん? なっ!? なんやとっ! ちょいまちっ! そこにおるの祐定くんらやないかっ! なんでここにおるんやっ!?」
「えっ? えぇっ!?」
「アンジェお姉ちゃんなのーっ!?」
そこにはドリームペンシルショッピングモールで出会ったアンジェお姉さんが居た。
「なっ、なんでアンジェお姉さんがここにいるのよっ!」
「そりゃこっちが聴きたいわぁっ! アタイらは海流のコンサートを見に来たんやで」
「それならこっちもそうよ。うわー、まさかここで一緒になるなんて思ってもみなかったわ」
「……はぁ」
シアがため息をついていた。犬猿の仲だからなぁ2人は……。
しかしアンジェお姉さんも海流お姉ちゃんのファンだったのか……。
「なぁ、コイツらはアンジェの知り合いなのか?」
その隣に居るアンジェお姉さんより、さらに年上と言う感じのお姉さんが語ってきた。
「あぁ、せや。アタイのあのルビーと黄金の鎧を当てたのが、この子や」
そう言って僕を紹介するアンジェお姉さん。
「へぇ、この子か。それでまた木花さんの息子なんだろ。またなんと言う偶然だよな。木花家ってやっぱりなんか持ってるだろ」
「いやはや……、偶然ですってば」
「あぁ、コイツはアタイの友達の近藤 芹華や」
「初めまして。まぁ、近藤や芹華って呼ばれるよりは、酒呑ってあだ名で呼んでくれよ」
「酒呑? 変わったあだ名ですね」
「酒に呑むって書いて酒呑や。コイツはホンマに酒呑みなんやで」
「それで付いたあだ名だけど、オレは気に行ってるぜ。こっちで呼んでくれよ。よろしくな」
「それにコイツは性同一性障害者や。芹華って言う感覚がなくって、酒呑ってのが自分の名前になりつつあるんや」
「性同一性障害ってなんなの?」
「また珍しい人だな。性同一性障害とは、体の性別とは違って心の性別が逆となっている人だよ」
「それにしては見た目はちゃんとした女性ですし、服装も女性物を着ていますわね。性同一性障害者と言うと、自分の体も心に合わせて変える人と思うのですが……」
「中にはそういう風にしないヤツもいるにはいるぜ。オレもそういうのだぞ。昔からこの体は可愛くて綺麗な女の子だったからな。男としていじると勿体無いし可愛そうだからな。オレは近藤として芹華の世話をしてるんだ。オレ自身は別人の男だけど、この女の体の芹華にはオレの宿主として入っているって感覚なんだぜ」
またなんか難しい人だな。
「まぁ、あんまり気にせんといた方がええよ。普通に男として接してりゃえぇんや。それよか、祐定くんたちも海流のコンサートを見にきたんかぁ」
「そりゃぁ僕たちの生まれた時からお世話になっているお姉ちゃんですし」
「なんや……、アタイより先にお姉さんになっとる人おったんね……」
「残念でしたわね。だから言ったではありませんか。お姉さんぶるにはアナタは役不足と」
「あぁ? なんやジブンおったんか? いると気がつかんかったわ」
「あら、それは大変ですわ。遊園地に遊びに来ている場合ではありませんわよ。早く眼科へ行って見てもらった方がよろしいですわよ」
「ま、まぁまぁ、ここでそんな喧嘩しないでよ」
また始まったし……。この2人が合わさるとすぐに火花が散るのはなんでだろうな、もう。




