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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第9章 ユートピア遊園地の平和な一時
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ユカリの書 第1話 畳がえし ― 1 ―

 待ちわびたユートピア遊園地へようやくたどり着いた。

 しかし休日だけあって、この人混みはすごいな。1000人以上はいるんじゃないか?

 海流のライブコンサートと優先チケットがなければ、こんな日に遊園地なんて来たくないな。


 私たちは兄さんに貰った前売り券で、チケットを買う人たちの行列を避けて、早く入園する事が出来た。

 その間に兄さんは居るかと思って、赤いカウボーイハットをかぶった人が居ないか探してみたが見つからなかった。


「さすがに日曜日の遊園地は、人がいっぱい居るねぇ」

「でもぼくたちが持ってる優先チケットで、そんなに並ばずに何度だって遊べるぜ。涼兄さんには感謝しなきゃな」


 私たちはここの1番人気のジェットコースターへ、さっさと向かっていた。

 並ぶと30分待ちや1時間待ちなんて、当然あるくらいの人気の乗り物だ。

 そんな1番人気は、畳がえしと言う乗り物。

 そこにたどり着くと先に入園していた人たちがすでにそこに並んでいる。もう20分待ちの標識があるところまで並んでるじゃないか。

 私たちはその列とは違う、優先列へと並ぶ。

 普通よりも値段が高くなるとはいえ、やはり優先チケットを買ってる人は居るようで、私たちの前には12人も並んでいる。でもこれなら5分もあれば乗れるな。


「海流お姉ちゃんのライブコンサート楽しみだねぇ」

「1時から1時40分までの予定。兄さんを探して話をするのなら、12時半から会場へ行った方が良い」

「そうね。それに席も確保しないといけないわ。どうせなら最前列で応援してあげたいわね」

「そうなるともう会場へ行って席取りしておかないと無理じゃないか?」

「お父さんの言う通りだぜ。ファンならもう遊園地で遊ぶよりもライブコンサート目当てなんだからよ」


 確かにそうだった。

 すでに開園前の列には、それはもうファンだと言う格好をした人たちが最前列で並んでいた。

 入ったと同時に駆け出して行った先は、その会場のある方向だった。


「まぁ普通に行こうよ。終わったら海流お姉ちゃんのところに行って激励しにいこうよ」

「関係者じゃないのに通してくれるかな?」

「ガンバって頼むよぉ。海流お姉ちゃんにも私が元気になった姿を見せて、ビックリちゃうよ」

「アレ? 花音、ここへ来るってことは連絡入れていなかったの?」

「うん、ビックリさせようかと思って」

「ステージで観客席にいる花音を見つけたらビックリするでしょうね。その時に歌や踊りを失敗しなければいいのですが……」

「それは大変だよっ! 今から来てるよって連絡入れなきゃっ!」


 そう言ってスマートフォンを取り出すお姉様だが、健がそれを防ぐ。


「そんなんでビックリして失敗したら、プロとして失格だぜ。ここは内緒にしようぜ」

「えぇー、でもぉ……」

「それもそう。今を甘やかせたら、将来に何か当たっときに困る。今を厳しく行かなきゃ」

「んー、それもそうだね。じゃぁ秘密にしておこっか」


 そうこうしているうちに私たちの順番になり、みんなが一緒のジェットコースターに乗れた。

 なんと乗り物には畳板1枚1枚がジェットコースターの外側に取り付けられている。

 私はその畳の上に寝そべり、係員に安全装置のベルトを体を巻き付けられていく。

 そう、この乗り物はその畳の上に寝そべった状態で発進する。


「楽しみだねぇ。どんな風になっちゃうんだろう」


 隣の畳には、お姉様が寝そべっている。


「もうはっちゃめっちゃーのぐっちゃぐちゃん、頭ぐらーんぐらーんになるんだろうね」

「普通に座って走ってる物と違う感覚が味わえるって言われてるね。どんな風になるか楽しみ」


 もう寝たまま走らされる時点で今まで乗って来たジェットコースターと違うのだが、これ以外にもまだ面白いポイントがある。


『それではみなさん。いってらーっしゃーい!』


 係員の放送が終わり、ジェットコースターは頭の方から進みだした。

 そのままどんどんコースターの頂上目指して登って行く。あぁ、空が綺麗だぁ。


「見て見てっ! 富士山がキレイだよぉーっ!」


 乗っている人もみんな、このユートピア遊園地から近くにある富士山の絶景に見とれる。

 綺麗な富士山をバックに、畳の上に縛られた状態で高い場所へ登って行くお姉様。

 なんだこれ? 見ていておかしいな。この光景は……。


 ガコンッ。


 あっ。頂上まで付いて頭が下を向いてゆっくり下がって行く。頭に血が上るぅ。


「おぉーっ! きちゃうぅーっ! きちゃうよぉーっ! このまま頭からまっさかさにおっ! きゃあああああーーーーっ!?」


 頭からまっ逆さに落とされていく私たち。

 グワンッと重力を感じながら今度は浮上する。そしてまた落とされる。


「きゃああああーーーーっ!! コワイーーーーっ!!」


 お姉様は怖いと言いながら喜んでいるな。

 そしてそろそろか。


 ガクンッ! グラグラッ!


「きゃあああああーーーーーーーっ!?」


 安定していた畳の金具が突然外れたんじゃないかと思うくらいに、縦にぐるぐる廻り始めた。

 この畳は走っている途中で、縦に360度廻る事が出来る状態となる。


「ひいいいいぃぃぃぃーーーーっ!? すごいよぉーーーーっ!?」

「あ、あわわわわっ!?」


 今まで悲鳴を上げてない私でも耐えられずに声を上げてしまう。そのむちゃくちゃに振りまわされる感覚に、混乱と恐怖が襲ってくる。

 自分自身で動ければこの程度の重力感覚はそんなもんでもない。よく飛行中にアクロバティックな事をしているから慣れてはいるけれど。

 しかし自分の予期しないところで急に畳が廻り始めたり、ジェットコースターが上に行ったり下に行ったりと、次の動きの予想が全く的中しない。

 重力感覚がめちゃくちゃだ。今私は上を向いていたのか? 下を向いていたのか?

 もう振りまわされ状態にされてしまっている。むちゃくちゃ面白怖いっ!


「ひゃああああああーーーーーっ!?」

「アアアアアァァァァァーーーーーっ!?」





 畳がえしを降りて来た人が、アレだけフラフラしている感情がわかった。

 あぁ、すごかった……。これはしばらくバランス感覚が変になる。


「すごかったねーっ! 何アレっ! 初めてだよあんな風になるのっ!」

「これは人気あるのがわかりますよ」

「もう1度載りたいぜこれっ!」

「うんっ! これは面白い」


 私も健に同意した。これは好きだ。面白いっ!


「本当にすごいわねぇ。こんな物を考えた人はすごいわね」

「そうだな。いつ壊れて落とされるかと冷や冷やしたぞ私は」

「どうするんだ? もう1度乗るのか?」

「私も乗りたい」

「行きたいねぇ」

「あっ見てください。もうあんなに行列ができていますよ」

「うわっ……」


 それはもう40分待ちの看板のところまで並んでいる。


「優先チケットがあると便利よねぇ」

「そうだな。アレを並ぶと他のが乗れなくなりそうだぜ」

「優先チケットを使えばすぐにまた乗れるけど。ちょっとこの列を見ちゃうと、またすぐ乗っちゃうのに抵抗あるなぁ」


 確かにな。一生懸命並んでいる人の横から何度も優先チケットで並んで乗ったら、普通チケットの人たち分の進みが悪くなってくる。

 こう言う人の気持ちを無視してガンガン乗れば楽しいだろうけれど、人としては最低だな。


「違う事をしてからまたここに来ましょう」

「それもそうだな。色んなアトラクションのフリーパスチケットだから、他のも楽しまなきゃもったいないな」

「なら次の人気アトラクションへ行こうぜっ!」


 次……。まさか次は……。昨日言っていた場所じゃないだろうな。


「そうですね。オバケ屋敷も結構時間が掛かるアトラクションですし」

「わ、私はこれを並んでもう1度乗る」


 私は最低な人間になっても、もう1度乗る決意を固めた。


「えぇー、ユカリちゃん。一緒にオバケ屋敷に入ろうよぉ。ねぇ♪」


 お姉様は私の右腕をしっかりとホールドした。


「そうだぜ。世界一の大きさを誇るオバケ屋敷にいかなきゃ、ここに来た意味がないぜ」


 もう片方の腕も健にホールドされた。


「うっ! い、いやだっ! 私は乗り物の方がいいっ!」


 やめてっ! 私はオバケが苦手なんだっ! 行きたくないっ! 嫌だぁーっ!!


「レッツゴーッ!」

「は、放してっ! いやあああああぁぁぁぁぁーーーーーーっ!!」

「あああぁぁぁっ、アカンはこれえええええぇぇぇぇぇぇっ!?」

「キャアアアァァァーーーーっ! エキサイティングですわーーーーーっ!?」


 畳がえしのジェットコースターで絶叫する人たち。私はそれに負けないくらいの叫び声を地上で発する。

 両脇をがっしり掴まれた私は必死に抵抗したのだが、簡単に拉致(らち)されてしまった。

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