ユカリの書 第2話 フランクフルト ― 3 ―
「美味しかったねこれ」
「そうですねぇ。ベーコンの方も納得がいく美味しさでしたし。アレだけ並んだかいがあるものでした」
「そうね、とても美味しかったわ。嵐ちゃん、ありがとうね」
「ありがとう! 嵐」
「いえいえ、どういたしまして。あ、そうそう、ユカリさん。昨日私が戦った吏子さんとついさっき偶然に会いましたよ」
「吏子? 昨日の巨乳な女の子か」
名字が羽澄とわかっているが、下の名前は少し忘れていたな。
「巨乳って……」
「そうだね。嵐が戦っていた子って、私よりもおっぱいが大きかったね。アレで年下なんだからすごいよねぇ。羨ましいよぉ」
「お姉様はまだそれだけあればいい方だし。私はもっと欲しい……。うぅ……」
「ユカリさんは歳相応なのですからまだ希望はありますよ。2人がまず異常ですからこれは」
「よく食べてよく運動してよく寝て居れば大きくなるよ。後は揉んだりとか?」
突然私の胸に手を伸ばして揉んできた。
「ちょっ!? お姉様っ! ダメッ、やだっ! くすぐったいっ! んっ……、こんなところじゃ、ダメっ!」
「んー……、これは……」
必死に抵抗して手をどけようとするが、それでも遠慮なく揉み続けられてしまう。
しばらくしてやっと放してくれたが……。うぅ……、恥ずかしかった……。
「まぁまだまだ歳相応だからだよ、うん……」
「希望が無いって言いたいの? うぅ、身長からして小さいし……、やっぱり私は……」
「大丈夫だよ。身長が小さくてもおっぱいが大きい子はいるよ。私みたいになればいいんだよ!」
そう言って胸を張るお姉様。
あぁ、羨ましいわ本当に……。
「私も仕返しするっ!」
そう言って今度は私がお姉様の胸に手を掛けた。
「あっ!? ユカリちゃんってばっ! あははっ! くすぐったいよぉ! キャーッ! やんっ! あははっ!」
うぅ、相変わらず指の隙間からむにゅっと出てくるくらいある……。
お姉様とはいえ、羨ましすぎる。どうしたら本当にそれだけ大きくなれるんだろう。
「もう、こんなところで変な事してないの。周りが見てるわよ」
お母様に怒られて私は止めた。
同じ物は食べてきているはずなのに大きくならない。やはり遺伝か? 遺伝に問題があるのか? それなのに私だけ背が小さいとか……。
なんでこんな体になったんだろう……。
「もぉー、ユカリちゃんってば気にしすぎだよ。大丈夫だって、まだ9歳じゃん。絶対に大きくなるよぉ。いつもしているバストアップの運動はきっと実るからね」
「そんなことをやっていたのですか?」
「身長がこんなのだから将来が危ういから。せめて胸だけでもとガンバってる」
「どんな方法ですか?」
「ネットで動画で上がってるから、後で教える。斎藤もやっぱ気になるの?」
「そりゃぁ男装するのが好きですが、女性らしさを持ちだした感じには将来なりたいですね。敏腕のスタイルの良い司書なんて憧れますし」
「イケジョいいね! 嵐ならきっとカッコいいんだろうなぁ。社長の命を狙う物が現れたら、こう弓を取り出して一撃必殺で相手をズバズバと仕留めていくんだよ」
「どんな司書ですかそれは。命を狙われる社長って、どんな会社に付いてるんですか私は」
「んー……、あっ! 執事なんかいいね! お嬢様の命を狙う物から守るの! そしてお嬢様が嵐の事を好きにあるんだけど、地位の違いから恋の実らない禁断の恋愛になっていって」
「女性同士からもう禁断でしょう」
「飛行機に乗ってる女性の人たちも似合いそうだよな」
「スチュワーデスかぁ。それもいいね! 嵐は丁寧だし」
「パイロットも似合いそう。戦闘機の方の」
「あはは……、取り合えず私は将来は司書辺りがいいですよ。今もこうして生徒副会長していると、トップに立ってみんなの顔となるよりは持ち上げる方が好きですし。整理整頓とサポートする方が、仕事としてやりがいがありますからね」
「話しの途中で悪いがそろそろ行くぞ。続きは飛びながらしなさい。準備しなさい」
お父様の号令でみんな目的地へ最後のフライトの準備をする。
「……あっ」
席を立った時、酒呑と目と目があった。こちらに気が付いていたか。まぁアレだけ騒いでいれば気が付かれて無い方がおかしいか。
酒呑はニヤっと笑った後、何事も無くアンジェシカとその場で雑談し始めた。
どうやらこちらに関わる気はないようだな。
家族との楽しいひと時に水を差すような事はしないってことか。
きっと酒呑たちもユートピア遊園地に行くのだろうな。
久しぶりに家族全員で楽しい事が出来るのに、変な事で邪魔はされたくないな。何事もなければいいのだけれどな。
そんな不安を抱えつつ、私たちはユートピア遊園地へ向けて飛んで行った。




