ユカリの書 第2話 フランクフルト ― 1 ―
今日は晴れてよかった。
風もいい具合に強くも弱くも無い、穏やかだ。
昭次お父様も残った仕事を全て片付けて、今日は一緒に出かけられるようになった。
昨日ドリームペンシルまで行った練習の甲斐もあってか、お姉様の具合も悪くなることなく、計画通りなフライトで飛んで行けている。
っと言う事で私たちは今、子琵パーキングエリアに来ている。
ここのパーキングエリアは竜神街から飛行してくると、平均で30分辺りに位置する場所にある為に各地方にある休憩所としては、1番利用者が多い場所でもあるので、施設が大きくて人気が高いところだ。
ここら辺一帯にある村から集まった名産や美味しい物のお店が集まり、グルメ番組なんかにもよく取り上げられているな。
そう言えばパーキングエリアには珍しい車もちらほら見えていたな。
アレらは全部電気自動車だろうな。ガソリンで動く自動車があればとても珍しい方だ。
最近になって日本で電気自動車の普及率が上がって来ているが、まだまだ手ごろな値段と言う代物でもないから、余程家庭に余裕がある家じゃないと買えないな。
それにまだまだ地方に行く程に、車道の設備は整っていない。
最近では道路設備に国は力を入れ始めているし、そう遠くない未来には車での移動手段も増えて行くだろうな。
排気ガスの流出が少ない日本は、これでも先進国の中で1番大気汚染度が低い。環境に優しい国と言われている。
その為か日本を訪れる外国人は、この国の空気はとても澄んでいて美味しいと言うな。
「んっんーあぁーんぅーっ! 空気が美味しいねぇーっ!」
そうかな? 小野寺家と変わらない様な気がするけれど……。あの場所も山に囲まれてるからな。
まぁ気分的なものか。
私たちは今、山の景色が美しい高台の休息エリアにいる。
「富士山ももうあんなに大きよ。ふっじさーーーーんっ!!」
ここから富士山に向けて山彦をするお姉様。周りに居た人が笑っている。
「富士山も世界遺産登録されてからか、いつもよりもキレイに見えるようになったわねぇ」
それも気分的なものじゃないか?
「ふっじさーーーーんっ! 世界遺産登録おめでとうーーーーっ!!」
お姉様は再び富士山にそう声を上げて拍手している。
昔の元気なお姉様になったな。これくらいやかましいのが普通のお姉様なんだ。
「元気になってよかったわね。アナタ」
「あぁ。あの騒がしい花音に戻ってくれてよかった。相変わらず面白いな」
そんな娘を見て笑っているご両親。この両親があって天然なお姉様になるんだなぁ……。
「ねぇ。富士山と写真撮ってよぉー」
そう言って自分のスマートフォンを取り出して、誰か受け取ってとキョロキョロしている。
「私も写る」
私は撮る側ではなく、一緒に写る側の選択肢をとった。
お姉様との大切な楽しい思い出は、しっかりと残していきたいから。
「それじゃ、私がとりましょう」
そう言って斎藤がお姉様のスマートフォンを受け取ってこちらに構える。
「1+1は?」
「強いっ!」
「えっ!?」
カシャっ!
あっ……。絶対に私は疑問に思った顔で写されたぞアレ。
「お姉様。なんで強いの?」
「2人居ればメタモルバトルは1人の時より強くなるじゃん。それに語尾が『い』だから、笑ってる感じにちゃんとなるよー」
いつも思うのだが、どうしたらそんな風な考えが思いつくのだろうな。
「でも花音。なんか気合入れて言ったからか眉間に眉がよっていて、少し驚き顔なのか怒っているのかの、中途半端な顔になっていますよ」
そう言って見せてくれた画像は確かにそんな表情だった。私はというと眉がつり上がって、右目がとじかけているし。
「これはこれで面白いからよしっ!」
結局消去されずにこの思い出は残されるのだな。
忘れた頃にこれを見た時、なんでこんな顔になったのか覚えているだろうか……。そしてなんでこんなバカな事してたんだろうって私たちは笑っているのだろう。こう言う楽しい思い出が出来るのも良い物だな。
「ただいまー」
「あ、健。おかえり」
健はここに付いたら真っ先にトイレに行ってた。
「ふぅー。出る物も出ると、お腹がスッキリした。なんか食べたくなるぜ」
「健、汚い」
「まぁ、朝食は軽くとってきただけだからな。ここでちょっとした物を食べてから行く予定でもあったし、そろそろ何にするか見て回るか」
昭次お父様の提案にみんなが賛成する。
「何か有名な物を食べたいですね」
「だったらさっき見かけたところ、すげぇー並んでいたけど。そこに行ってみようぜ」
健がその店の前まで案内してくれる事になった。
外の出店が並んでいるエリアで、色んな食べ物の良い匂いが漂っている。
そして健が見つけたそこのお店の前には30人ほどの行列が出来ていた。
「なんのお店でしょうか?」
「看板に書いてある。フランクフルトが1番人気」
「地元のブランドブタを使用した、ジューシーで強烈なパリッとした歯ごたえ。この食感が病みつき間違いなしっ! っと、テレビにも紹介されたと書いてあるわね」
「どうする? ここまで並んでも買いたいか?」
「私は食べたいーっ!」
「他にも食べ物は色々とある。これだけ並ぶと時間が掛かるのも考慮に入れて、お姉様」
「んー、そうですねぇ……。私が並んで置きますから、皆さんは他の物を見てきていいですよ。私は是非食べてみたいですからね」
「そうね。それなら効率がいいわね。それじゃ嵐ちゃん、これ、みんなの分のお金ね」
そう言って杏里お母様が斎藤にお金を渡す。
「待ち合わせはドコにしますか?」
「さっき休憩していたところでいいんじゃないか?」
「そうしようか。それじゃ、他の物を見て回ろうか」
私たちは斎藤にそのお店は任せて、他の物を見て周って行く。
ちょこちょこと色んな美味しそうな物を見つけては、それを買って行く。
そして待ち合わせである休憩所のところに戻ってきた。
こっちは結構長い間見て周ってたけど、斎藤はまだ来ていないな。
それだけ時間が掛かるものだったか。
「ちょいまてやこるぁっ! アタイのやでそれぇーっ!」
「ん?」
大声ではないが、なんか聞き覚えあるイントネーションの声がしたので、そちらを見てみた。
「1個ぐらいイイじゃねーかよ。オレのもやるからよ」
「……あっ!?」
さらに聞き覚えも見覚えもある人物がそこには2人居た。
それは酒呑とアンジェシカだった。
なんで2人がこんなところにいるんだ?
しかも2人が一緒に仲良く食事しているところを見る限り、繋がりがあるのは私の予想通りだったようだな。
……ふむ。もしかしたら一緒のユートピア遊園地に行くかもしれないな。
兄さんがその遊園地に行くのなら、そのバックアップに酒呑が待機していてもおかしくはないからな。
しかしアンジェシカはどんな役割でいるのかはわからないな。あの人はどんな役割の位置にいる人なのだろうな。
酒呑たちは私たちから4つ離れたテーブル席で食べながら話をしていた。
こちらの存在には気づいていないようだ。
「くそぉー! はよぉよこせっ!」
「はいはい、ほらよ」
そう言ってタイ焼きのしっぽの部分を渡した。
「まてこらぁ! このしっぽ部分あんこ入っておらんしっ! 最近のは入ってるのも多いのにこれは無いんかいなっ! 身のところよこせぇっ! 腹の部分をぉーっ!」
あの人、食べ物の事でよくモメてるな。
お姉様たちがいる中で関わり合いになると面倒なので、気が付かれないならそのままでいいか。ほったらかそう。
「嵐はまだかなぁ?」
お姉様はチャーシュー丼を今か今かと待ち遠しそうにハシを持って待っていた。
「……あ、嵐がきた」
私が辺りを見回すと嵐を見つけた。




