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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第7章 その頃のあの人たち
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ユカリの書 第3話 坂浜港町の出来事 ― 4 ―

 昭次お父様の働く会社に着くと、まずロビーの受付で小野寺の娘たちと説明した。そして案内された応接間で待つ事となった。


「お父さんが働いている会社に入るの初めてだぜ」

「私もぉ。あっ、アレなにかな? わぁっ、すごいよっ! あんな大きな物を吊るしたよっ! アレっ! うわーっ! すごい力持ちだねっ!」

「おー、すげーっ! カッコいいーっ!」


 2人は窓から見える光景を見回してキャーキャー騒いでる。


「も、もう少し静かにしましょうよ」


 そんな2人を斎藤が苦笑しながら(なだ)める。

 私も普段見かけない物ばかりがある景色なので、色々と眺めていて楽しい。


「……ん?」

「ユカリさん? どうしましたか?」

「アレは……」


 私が見た先には沢山のコンテナが山積みされた中に2人の男性が、カルテを持ってコンテナを見て回っているところだった。

 そのうちの1人にドリームペンシルの宝石店前で見かけた男性が居たのだ。

 確か……。志村と言われていたか。


「あの人はっ! なんとまぁ……、なんの縁なのかよく会いますね」

「さっき店の前で書類を渡されていた。それに関しての物かもしれない」


 志村は1つのコンテナの前で止まると、隣に入る男性と話し合った後、トランシーバーで話をする。

 そしてリーチスタッカーと言うコンテナを持ち上げる車を呼んで、そのコンテナが運ばれた。

 コンテナは待機していたトラックの荷台にまで運ばれ下ろされた。志村もそのトラックに乗り込むと、そのトラックごとドコかへ去って行った。

 その場に残ったもう1人の男性はミックスジュースを取り出してワシの姿となると、すぐにその場から飛び去ってしまった。ここの従業員ではないみたいだな。


 ワシと言えば兄さんがよく使う移動手段のミックスジュースだけれど。

 顔を変えて変装をしていても、あのガッシリとした体形は変装しようにも難しい。体つきも似ていた事もあるし、もしかしたら兄さんかもしれないな。

 あのアンジェシカが兄さんや酒呑とも繋がりがあるのなら、あの志村とも繋がりがあるってことだな。

 ここで何をしていたのやら。そしてあのコンテナの中身は一体何が入っていたのだろうな。


 ガチャリ。


「おぉ? 嵐ちゃんまで居るじゃないか」


 応接間に入って来た昭次お父様に、外を眺めていた私たちは振り返った。


「お仕事お疲れ様。お父さん」

「ありがとう。娘たちが来ていると聞いて驚いたぞ」

「ごめんね。連絡も無しによっちゃって」

「別に構わないがどうしたんだ? 何かあったのか?」

「明日の為に飛行練習してたの。私も家に引きこもってばっかりだったから、体力が大丈夫かなって」


「あぁ、確かにそうだったな。それでここまで来たのか。大丈夫だったのか?」

「うん! ヒドリノ丘街まで飛んで行ったから大丈夫だよ」

「おぉ、それなら大丈夫そうだな。なら明日の為に今日はゆっくり休まないとな」

「お父さんいつ頃帰れそうなんだ? 一緒に帰ろうかと思って来たんだけどさ」

「そうなのか? なら後15分は待っていてくれないか? すまないな」

「いいよぉ。こっちが勝手に来ちゃったからね」

「ここでもう少し待っていてくれ。後でまた迎えにくるから」

「わかったよぉ。それじゃ、またね」


 お父様は部屋を出て行き、私たちはお父様が戻ってくるまで明日の遊園地の乗り物の話なんかで時間を潰した。

 言った通りに15分弱で戻って来たお父様と一緒に家に帰宅していった。





 就寝前の静かな時間。

 今日はお姉様も体調が良くなったと言う事で、一緒に寝ようと言ってきた。

 私も一時住まいの部屋から、お姉様の部屋に布団を運んでいた。

 最後に枕を持って行って、お姉様の部屋へ戻った。


「ん? ひゃぁっ!?」


 部屋のど真ん中に急に現れた物。私とお姉様の布団の上にどっしりと構えた大きなドリペンちゃんの存在に驚いた。


「あ、ユカリちゃん。改めてみると大きいねぇこれ」


 どうやら私のカバンから、あのドリペンちゃんを取り出したらしい。


「存在感が半端ない……」


 私がお姉様にプレゼントした小さいお人形の方は、お姉様の勉強机の上に飾られている。

 それの存在と比べると、遥かに負けた……。くっ、斎藤めっ……。


「さぁさぁっ、さっそくユカリちゃんを中に入れて遊ぶよぉー」


 そう言えばそんな事も言っていたなぁ……。


「もう寝ないと明日にひびく。朝も早いのだから」

「うーん、それもそうなんだけどぉ……。すぐに終わらせるから。ねっ」

「まぁ、すぐなら……」


 お姉様はドリペンちゃんの後ろのチャックを開けると、中から丸いクッションを抜いて行く。

 本当に中へ入れる仕様になっているんだな。

 少しばかりぺちゃんこになったドリペンちゃんに、私はゴソゴソと入って行く。

 ん? 内側にもチャックがあるな。

 私はそれを開けると、外の光景が見れた。


「あ、ユカリちゃんだ」

「どうやらここから顔を出すみたいだ」


 あの中で呼吸し続けたら息苦しいな。私はドリペンちゃんから顔を出した。


「あははっ! かわいいーっ!」


 お姉様はスマートフォンで写真を撮っていく。そしてそれを私へ見せた。ドリペンちゃんの胸辺りに私の顔がある状態だった。


「は、恥ずかしい……」

「ねねっ、ちょっと動いてみてよぉ」


 お姉様のリクエストに答えて、中で丸まっている体をよっちらよっちらと、一生懸命体を揺さぶりながら動かして歩いて行く。


「ペンギンみたいでかわいいよーっ♪」

「ペンギンだけどねこれ」


 十分に写真を撮ったお姉様は、今度は私にぎゅむっと抱きついてくる。


「えへへ~、ユカリちゃんのかわいさ倍増だぁ♪」


 お姉様にモフモフされていく私。あぁ、久しぶりだなこう言うのも。


 ガタッ!


「お姉ちゃんうるさいぞー。明日早いのだから……、ぶふっ!?」


 健が私の姿を見て笑った。


「うわっ、予想以上にそれ面白いぜっ! ユカリ姉ちゃんウケるわーっ!」


 このやろう……。最近健も生意気言う様になってきたな。


「健、この中に入って写真撮られろ」

「いやいやいや、ぼくはやだね」

「だーめっ! 健も入らないとダメっ! ユカリちゃんをバカにした罰だーっ!」


 そう言ってお姉様が逃げ出そうとする健の(えり)を掴んだ。


「くそぉーっ! はなせぇーっ!」


 私はドリペンちゃんから出て、連れてこられた健をドリペンちゃんに押し込んだ。


「観念しろ」

「くそぉーっ! だせぇーっ!」

「そんなに暴れたら破けちゃうでしょぉーっ! もぉーっ! 破いたら許さないよっ! 十文字固めの刑だよっ!」

「あー、ちくしょぉーっ! わかったよ。顔出せばいいんだろ顔をっ!」


 健は観念してドリペンちゃんから顔を出した。

 それを私とお姉様がスマートフォンで写真を撮っていく。

 確かに予想以上に面白いなこれは。


「もういいだろっ! なぁ、それ絶対にみんなに見せないでくれよ」

「あっ、もう斎藤に送っちゃったよ」

「えぇーっ!? お姉ちゃんーっ! 酷いよっ!」

「私は酒呑にでも送って、全世界に配信してもらうか……」

「ヤメロォーッ!」


 静かな夜はドコへやら。

 お姉様が元気になってから、いつも通りの賑やかな日常が返ってきた。


 その後、騒ぎを聞きつけてやってきたお母様に早く寝なさいと怒られて、私たちは就寝した。

 明日が楽しみで眠れないかもぉーっと言ったお姉様は、あっという間に寝てしまった。

 久しぶりに一緒に寝た私も、お姉様の幸せな寝顔を見ているうちにすぐに寝てしまった。


 やはり小野寺家の生活はこうでなくてはつまらない。

 絶対に守っていこう。二度とあんな日々にならないように……。

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