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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第7章 その頃のあの人たち
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ユカリの書 第3話 坂浜港町の出来事 ― 3 ―

 さて、残りはあの男の子とボスか。

 …………って、アレ?


「へーっくしっ! うぁーもー、マジ無理。10連戦してんだぞこっちはよーっ!」


 男の子はいつの間にやら元の姿に戻っていた。体を大の字にして横たわっていた。

 そしてシャークマンも元の姿に戻って座り込んでいた。

 私はその男に近づいて尋ねた。


「何やってるのオマエら?」

「あんなやられた後の連戦はきっついから! 元に勝手に戻っちまったよ……」


 どうやら2人は戦っている最中に両方とも疲労の為に元に戻ってしまい、不戦敗になっていた。だから連戦は無理だと思ったんだ……。


「はぁ、全く……。それでどうする? 他の連中は私たちに全員やられたようだけど」


 お姉様と斎藤は、自分が倒した相手を海上から闘技場に引き釣り上げ助けていた。


「あぁ、もうオレたちの負けだ。降参だっつうの」

「そう。ならもう二度とこんな事しないと誓って謝れ」

「あーあー、わかりましたよ。すみませんでした。もう二度としませんよ」

「なんだその態度は?」


 私は刀を男の頭に付きつけた。


「お、おいっ! 生身の人間に向けての攻撃は違法だろ!」


 私はヒュンと動かして、前髪だけを切った。


「ひいっ!? ほ、本気ですかっ!?」

「私、ヤクザの娘なんだけど。このくらいの事は何とも思ってないし。それと普通だったら落とし前に体の一部の切断がヤクザの習わしだ」


 刀を持った可愛いラッコが、不良男性の頭に刀を突きつけている光景。

 なんてまぁ、シュールな光景だろうな。


「耳を切断してあげる。それで許そう」

「わ、わかりましたっ! 申し訳ありませんでしたっ! なのでお許しくださいっ!」


 ボスはその場で土下座して謝り始めた。


「それじゃ、身分証明書を出して」

「え?」

「身分証明書を出して」

「は、はい」


 男は言われたとおりに自分の身分証明書を取り出して見せた。

 私はそれを取り上げてスマートフォンのカメラ機能でその内容を撮った。


「そ、それをどうするつもりですか?」

「次にオマエが悪さした事を聞きつけたら、オマエの元に刺客を送る。覚えておけ」

「マ、マジっすか?」

「本当」

「ユカリ姉ちゃんっ! 警察来たぜっ!」


 健が言った通りに警察が2名駆けつけてきた。


「や、やべっ! にげろっ!」

「あっ! 待てオマエラーっ!」


 ボスを置いて周りに居た連中がクモの子を散らすように逃げて行った。

 警察も追うには人数が多すぎるので、そいつらはほっといて私たちの元にやってきた。


「君っ! 武器を下ろしなさい!」


 私は言われたとおりに武器を地面に置いた。


「乱闘が起きていると聞いてやってきたが、どういう状況だね?」

「俺が不良たちに絡まれてるところを、この4人に助けられたんです」

「ふむ……」

「あ、あのぉー……」


 おずおずと声を掛けてこちらにやって来たのは、お姉様が質問しまくったメガネの女の子だった。


「一部始終を動画で撮ってあるのですが、役に立ちますか?」

「動画があるのか。では見せてもらえないか?」

「はい、どうぞ」


 女の子からスマートフォンを受け取ると、その動画を確認していく。

 警察も状況を理解したようで、ボスは現行犯逮捕された。私たちは正当防衛として罪にはならずにその場で解放された。


「本当にありがとうございました」


 男の子は私たちへお辞儀してお礼を言う。


「本当に怪我とかなくてよかったよぉ」

「救急隊も駆けつけ損だぜ」

「そんな事はありませんよ。元々無い事にこしたことはないのですから」

「へーっくしっ!」


 男の子は膨大なくしゃみをした。


「わぁ!? 大丈夫? おでん食べなきゃっ! ちかくにコンビニあるかな?」

「おでん? あっ、あーそうだな。冷えた体にはアツアツおでんを食べたくなるぜ」

「季節は暖かくなってきたが、海はまだまだ冷たい。このままだと風邪をこじらせる」

「だ、大丈夫? 平沢くん」


 メガネの女の子が男の子を介抱してあげている。


「早く家に帰って風呂はいりてぇ」

「そうだね。早く帰らないと。おでんよりお風呂がいいね。そして早くふかふかのお布団で寝ようっ! お布団をはんぺんにすれば、おでんもちゃんと使えるよ」

「姉ちゃんのボケは腹が減るぜ……」


 はんぺんの布団……。ふかふかで暖かくて気持ちよさそうではあるな。


「平沢くん、無事に付くまで見送って上げるよ」

「いや、大丈夫だって。それよりごめんな。こんな事に巻き込んじまって」

「ううん、気にしなくていいよ。それより本当に大丈夫? あんな連戦するとか無茶しすぎだよ……」

「だから大丈夫だって」

「確かにすごい。10連勝おめでとう。相手が誰でアレ、そこまで戦い続ける気力はさすが。もし機会があれば、私とも戦ってほしい。実力は保障する。より高みの戦いをしないか?」


「別に構わないけど、今日はもう無理だぜ。明日も用事あるしこんな状態だから、早く帰ってしっかり休まないとヤバいし」

「私たちも明日、用事があるから無理だねぇ」

「取り合えずメールアドレスを交換する。戦う日程が合えば、ドコかで戦ってほしい」

「あぁ、それで構わないぜ。まさかあのラッコがあんな動きしてるなんて、面白いじゃねーか。弱いヤツ相手にしてるより、強いのを相手にしないと自分の実力が上がっていかないからな」


 そうして私たちはメールアドレスを交換した。

 彼の名前は平沢 准だった。

 平沢の体調も心配なので、話もそこそこにすぐその場で解散した。

 2人は竜神街の方へ飛んで行った。


「んーっ! 久しぶりに戦ったーっ! うーみゃーっ!」


 お姉様は両腕を上に向けて背を伸ばしていた。


「眠気はスッキリ取れたでしょうね」

「うん、お陰さまでね。疲れたけど、眠気は飛んじゃったよ」

「運動もできたし、今日はしっかり寝れる」

「そうだね。明日の為に体力全回復しておかないとね」

「しっかし姉ちゃんたちは強いよなぁ。ぼくもそれだけ強くなりたいよ」

「健も今回の戦いはよかった。私が教えた技もちゃんと形になっていた」

「そう? へへっ、練習したかいがあったぜ」

「健ももっとガンバれば私たちみたいになれる。お姉様の弟だし、才能がある」

「ホント? よぉっし。ガンバるぞぉ!」


 健も今回の戦いで少し自信が付いたようだな。


「あっ、お父さんが帰る時間だー」


 時計を見ると時刻は4時43分。5時が定時な為、昭次お父様が帰宅する時間帯だな。


「それならお父さんを迎えに行って、一緒に帰ろうぜ」

「そうですね。前のお詫びもありますし、迎えに行ってあげれば喜びそうですね」


 健の提案にみんな賛成して、私たちは昭次お父様が勤めている会社へと向かった。

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