ユカリの書 第1話 ドリームペンシルに行こう ― 3 ―
そうこうしていているうちに、おもちゃコーナーへやってくる私たち。
健はドリペンちゃんには興味がないので、ここからさほど遠くないスポーツ用品が並んでいる場所へ向かった。それの付き添いに斎藤も行ってしまった。
私はお姉様と一緒にドリペンちゃんのグッズが置いてあるコーナーへ向かった。
「わぁ、これがドリペンちゃんっ!? カワイイ~っ!」
お姉様もドリペンちゃんが気にいったらしくて、そのグッズたちに目を奪われている。
「私もこれ買おう~っ♪」
「あっ、お姉様っ……」
お姉様が私が買おうとしていたドリペンちゃんの人形を手に持った。
「ユカリちゃんもこれを買うんだよね。それじゃ、お揃いになるね」
「お揃い……」
お揃いかぁ……。それも良いかもしれない。
あぁでも……、そうすると私が思っていた事が実行できないっ!
「お、お姉様っ! それ、私が買うからっ!」
「うん、一緒に買おうねぇ」
「いえ、えっと……。そうじゃなくて……プレゼントしたいっ!」
「プレゼント? え? 誰かにプレゼントするつもりだったの?」
「お姉様にプレゼントしたいっ!」
「私にプレゼント? これを? わぁーっ! ありがとう♪ ユカリちゃーん♪」
そう言って私に抱きついてくるお姉様。モフモフと頭を撫でられながらぎゅぅーとされる。
こう人前だと恥ずかしい。けれど私も嬉しいから固まったままでいる。
私は胸にうずめられる顔を必死に上げてお姉様に顔を向ける。
「ぶはっ! ふぅ……。これは元々、お姉様にプレゼントしたかった。元気がないお姉様を元気付けたくて」
「そうだったんだぁ。もう~、嬉しい事してくれるユカリちゃんがカワイイ~っ♪」
さらに頬と頬で頬ずりしてくるお姉様。
さ、さすがにこの人だかりの前で、これだけされると恥ずかしい。
もがいてお姉様から離れた。
「あぁもう、ユカリちゃんってば。もうちょっとやわらかいほっぺを堪能させてよぉ」
「家でならいいけど。こんなに人がいる前では止めて」
「そう? じゃぁ今日のお風呂は一緒に入ろうね。ユカリちゃんのすべすべお肌を堪能しちゃうんだから」
「なんでお風呂になるっ! ……入るけど」
「それじゃぁ私からのお礼は、何にしようかなぁ」
そう言ってお姉様が、ドリペンちゃんの他のグッズを見まわしていく。
「お礼はいい。お姉様が元気になってくれた事が、1番嬉しいプレゼントだから」
「もう~、私もユカリちゃんにちゃんとプレゼントしたいのっ! んーっと……。あっ、アレ大きいねっ!」
そう言ってお姉様が指差した方向を見ると、大きなドリペンちゃんがショーケースの1番上にあった。
……本当に大きいなアレ。私なら簡単に中に入れるくらいだ。
「アレにしようかなぁ。値段いくらだろ?」
「いや、さすがにアレは……」
「うわっ!? 1万2000円っ!? 無理だよそんな額っ!」
1万2000円かぁ……。やはりそれくらいだったか。
「お姉様。こっちの小さいより、あっちの大きい方がいい?」
「え? んー……。こっちの小さい方がカワイイよ。アレはアレで、ユカリちゃんを中に入れてモギュとしたら、もっと良くなったんだけどねぇ」
お姉様も私が入れるサイズと思っていたか。それで抱きつかれるのか……。
「なら、アッチも買う」
「そうなんだぁ……。えぇっ!? 1万2000円するものをっ!?」
「うん。買えない値段でもない」
銀行口座に60万円はあるから、これを買っても問題がない。
「ユカリちゃん……。お金は大事にしようね。そんなポイポイと使う物じゃないからね」
「お金なら60万はあるから、本当に大丈夫」
「どこからそんな大金が出ているのか分からないけれど。もし黒堂組から出たお金なら、使わないでね。ちゃんと全うに働いたお金で買ってくれなきゃ、私は嬉しくないよ」
「だからこれは全うなお金。ミックスジュースの印税だから」
「え? 印税?」
「うん。実は母の印税なのだけれど、母は行方不明だから私へと送金される。父は離婚しているから、父の元には行かないお金だから」
「そうだったんだぁ……。てっきり危ない薬とかでもうけたお金かと思ったよぉ」
「黒堂組の収入源は、C級以上の武器の密輸入販売だから。まぁ汚れた金であることは確かだけれど……」
そう言った武器を昨日、私たちはさんざん使っていたが……。
斎藤もあの事は秘密にはしてくれるが、2度とあんな武器を使いたくないと言っていた。
でもいずれ戦争が起るとなれば、あの武器を再び手にする日が来る。慣れておいてほしいところではあるな。
「んー、でもダメ。買っちゃダメ」
「どうして? ちゃんとしたお金」
「お母さんからのお金だからだよ。ちゃんと大事にとっておいて、結婚式の資金にして上げた方が、お母さんも喜ぶよきっと」
結婚式って……。先の長い話だ……。
それに私を捨てた母なんて、どうでもいい。だからこんな金、私が好き勝手に使ってやる。
「……」
しかしそう思った時、このお金は使いたくなくなった。
別に母の気持ちがどうと言う訳じゃない。
母の金で買った物で喜ぶお姉様が嫌だった。
お姉様が喜ぶのなら、私が稼いだお金で買った物で喜んでほしい。
私がこの母のお金で結婚式に出た時、それが嬉しいと思ったら嬉しくない。
大嫌いな母が関与しているとなるといらだってくる。
「わかった。母の金は使わない」
「うん、そうして上げてね」
「じゃぁ私が稼いだお金で買うから」
「えぇーっ!? 今度はまたどんなお金なのぉ? もぉー……」
「これもミックスジュースの印税。私もいくつもの新発見のミックスジュース印税を登録してあるから、それなりに収入がある」
ちなみに赤毛の侍は登録をしていない。
アレを登録してしまえば、免許無しで造った事がバレてしまうからだ。
「お姉様に上げるアッチの人形。これは私のちゃんとまともに稼いだお金で買うから、受け取ってほしい」
「う、うーん……。やっぱダメっ! 高額すぎるよぉ。私はこっちの普通サイズでいいよ。もうこっちじゃなきゃ嬉しくないよ。ねっ、こっちにしよう」
「……まぁお姉様がそう望むのなら。無理にはしない」
いくら押しても喜ばれて無いのなら、意味がないし。
「うんっ♪ 嬉しいよ! ありがとう、ユカリちゃんっ!」
再びギュッと抱きつかれるが、私はそのまま受け入れた。
周りはまたかと呆れて見ている人がいるが、そんなの知った事か。
「お姉様、そろそろ会計しに行こう。健たちがタイクツしてると思うから」
「あっ、私はユカリちゃんのプレゼントを探してたんだったっ!」
そう言って再び物色し始めるお姉様。別に私のはいいのだけれど……。
「じゃぁこれっ! ドリペンちゃんのキーホルダーっ! これ、私からのプレゼントだよっ! 受け取ってくださいっ!」
それはドリペンちゃんのイラストが描かれたキーフォルダーだった。
値段も500円だし。うん、それなら私も受け取ろう。
「ありがとう、お姉様♪」
「えへへっ♪ じゃぁお会計しに行こうか」
そうして2人のプレゼントは交換された。
1000円以上だったのでくじ引き券1枚貰い、これで4枚になった。




