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ミックスジュース! ~姿を変える魔法の飲み物~  作者: 加熱扇風機
第6章 ユウの変わり者な日常
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ユウの書 第2話 ユウの企み ― 1 ―

 時刻は午後2時。

 お昼ご飯を取りに来たお客様も減り、大忙しな時間帯も過ぎてまったりし始める時間。


「ユウくん、海流ちゃん、ごくろうさまでした。お昼ご飯できたわよ。食べてらっしゃい」


 カウンターで洗い物をしていた僕と海流お姉ちゃんに、母さんがそう声を掛けてきた。


「はーい。今日は何?」

(とり)たま親子うどんよ」


 母さんからお昼ご飯を載せたオボンを受け取る。

 今日のお昼ご飯は、親子丼のごはんの代わりにうどんになった物だった。

 海流お姉ちゃんが造って時間が経った余った紅茶とコーヒーをカップに入れて行く。

 僕らはご飯と飲み物をお店の奥、家のリビングへ持って行った。


「ふぅー、やっと食べれるわね。お腹すいちゃったよ」

「はい、七味」


 僕は台所から持ってきた七味トウガラシを海流お姉ちゃんに出してあげた。


「ありがとう。せっせせっせせっせ……」


 その七味トウガラシをこれでもかと振って、どんぶり全体が赤い粉まみれになるまで振りかけていった。

 うぅ、めっちゃ辛そうだ……。

 海流お姉ちゃんってめちゃくちゃ辛党なんだよなぁ。トウガラシを生でかじっても平気ってくらいな人だ。

 辛い物を食べると汗をかいて新陳代謝(しんちんたいしゃ)がよくなって、脂肪も燃やせて()せるし良いのよと言うけど、度を過ぎて体を壊さないかと心配になる。のどだって傷めないかと思うのだが。


「そ、それじゃ、いただきます」

「いただきまーすっ!」


 僕はなるべく海流お姉ちゃんのご飯を見ないように、自分のうどんをすする。


「う~ん♪ これ美味しいね。これならお店に出してもいいんじゃないかなぁ?」

「海流お姉ちゃんの出したら、病院送りになるって」

「そりゃ出せないって」

「んー……。出すにもうどんの(めん)がねぇ。これをたくさん発注できればいいんだけど」

「そうなんだ。このうどんもコシがあって美味しいね。ドコの?」

「うどんの名産地。三重村のお土産だよ」

「そりゃ美味しいわぁ」


 僕と海流お姉ちゃんはうどんのコシを味わいながら、ちゅるちゅると吸って食べて行く。


「あ、そうだ。海流お姉ちゃん。明日コンサートの仕事が入ったんだね。今朝からお客様を招待しまくってたけど」


 それを聴いて海流お姉ちゃんが、自慢(じまん)げな顔をした。


「そうなのよ。実はライブコンサートの依頼が来たのよっ! それも大観衆の前でよ!」

「おぉー、おめでとうっ!」

「ありがとうっ! 収容席数700人のステージだなんて、本当に大勢の前でやれるのは久しぶりだなぁ」

「7、700人? もっと多いかと思ってたんだけど……」

「700人でもバカにしたらダメなんだからね。初コンサートでは500人の収容席で、アレからデパートの屋上で100人だったり、小さいクラブハウスで40人だったりとするんだからね。私にとって700人は大観衆なんだからね」


 んー、そんな物なのかな。僕はアイドルとかよくわからないけれど。


「今までの活躍が認められて、やっと大きな場所で歌わさせていただけるんだからね。このステップを踏んで目指せ、武道館だよ」


 海流お姉ちゃんにはガンバってほしいな。


「しかし明日かぁ……。先に知っていれば、応援しに行きたかったのに。明日は予定入っちゃってるんだよ」

「そうなの? なんだぁ……、遊園地の入場前売りチケット持ってきてたのに。まっ、仕方無いか」

「ユートピア遊園地って言ってたよね。僕たちが行こうとしているところはなんと、シンフォニー遊園地なんだよね」

「シンフォニー遊園地? えっ? 明日の予定って遊園地行く事だったの?」

「日曜だから有名な場所だと混むじゃん。だから風のシンフォニー遊園地にしたんだ。平凡なところで混まない場所に行こうってなってるんだ」

「そう……。違う場所だったね。また私と一緒の場所だったらよかったのにぃ……」


 ユートピア遊園地はここからだと、風のシンフォニー遊園地より遠い場所にある。

 富士山の近くにあって、その絶景も見事なところだ。

 でもあそこは面白いアトラクションも多いから人気が高くて、少々ここから遠くても休みの日はとても混雑している。


「まぁ、しょうがないわよね。あそこは結構混むもんね」

「うん、残念だよ。知っていればそっちに行く予定をたてたのになぁ」

「こっちも急にそんな仕事が入っちゃってね。もっと前から言っていればよかったんだけど……。明日にそこで活躍する人が足を骨折しちゃったから、変わりの人を急きょ雇う事になったんだって。それもまた3日前に急に入るんだもの。スケジュール入って無い暇な人じゃなきゃやれない仕事よね」


 海流お姉ちゃんは苦笑いしている。

 仕事が出来る嬉しい一方で、代役にされた事に悔しい気持ちがあるだろうに。


「もしかして李奈ちゃんたちと行くつもり?」

「うん、そうだよ」

「やっぱねぇ。でもデートするなら風のシンフォニーじゃちょっと物足りなくない?」

「デートとかなじゃないよ。李奈に杏子ちゃん、後3人も加えてと行くんだよ」

「他の子も来るんだ。なぁーんだ。またデートかと思ったのに」

「だからデートって……」


 いつも僕たちが一緒に居るところをどんな風に見られているのだろう。


「ユウたちはいつも一緒よねぇ。李奈に杏子ちゃん、ユウくん的にはどっち狙いなのよ?」

「え?」

「もし彼女にするならよ。それでどっちにする気なのよ。答えなきゃ、ユウくんの親子うどんに七味をばらまくわよ」


 そう言って僕からどんぶりを奪って、海流お姉ちゃんが七味トウガラシのフタをパカッと開けて、いつでも振りかけるスタンバイし始めた。


「ちょ、ひどい! やめてよーっ!」

「ほら、答えなさいって。でないと……」


 七味トウガラシの小瓶が(かたむ)き始める。


「わ、わーっ! えっと、そのー……」


 なんでまたそんな話になるかなぁ? そうして慌てた僕の出した答えは……。


「李奈にするっ! だからやめてってっ!」

「へぇー、李奈にするんだ。やっぱりねぇ」

「べ、別に2択なら李奈が1番彼女にするならそれっぽいだけで。杏子ちゃんは妹みたいな付き合いだからさぁ……」

「顔を赤くしちゃって。まぁ幼馴染ってさ。聴くところだと統計上、あんまり恋人にはならないみたいよ。幼馴染の関係のままに流れちゃって、見慣れちゃってる原因があるんだって。もし好きなのならちゃんと今から告白して、付き合いなさいよね」

「そんなの……。こっちの勝手だよ」


 僕はどんぶりを奪い返して、今度は奪われないようにとしっかり確保しながら食べる。


「ふふん♪ もし上手くいかなかったら、お姉ちゃんと付き合う? ユウくんってカッコいいし、将来イイ男になりそうよねぇ」

「アイドルは恋愛禁止じゃないの?」

「まっ、そうなんだけどね。それにユウくんの年齢的に18歳の私が手を出したら、犯罪になりそうだし。冗談よ。冗談」


 なんだかなぁ……。

「ふぅ、ごちそうさまでした」

「片づけは僕がついでにやっとくよ」

「そう? ありがとう。それじゃ私は、練習しよっと。明日の本番、絶対に失敗しないようにしないと……」


 そう言って海流お姉ちゃんはベランダに出て、歌と踊りの練習をし始める。

 お昼休み終わったらこれからまだ、6時まで働くって言うのに元気だなぁ。


 僕も食べ終わって、海流お姉ちゃんのどんぶりと一緒にキッチンで洗う。


「……ユートピア遊園地かぁ。変更できるかな?」


 僕は手をタオルで拭いて、スマートフォンを取り出して操作する。

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