ユウの書 第1話 9歳かこの子? ― 1 ―
土曜日。茶の木小学校は土日がお休みとなる。
学校の友達はみんな遊ぶ約束をして、1日ずっと遊んでいるだろうな。
そんな僕は言うと、さわやかな朝の日差しが登ってくる中で、クワを持って畑を耕している。
別に家が農家で手伝いをしていると言う訳ではない。
これは僕の趣味の1つで、畑を耕して野菜を育てている。
9歳の子供がこんな趣味持ってると、周りからよく変だと言われている。
まぁそんな事を言われているけれど、楽しい事なので止めたりはしないけれどね。
「よっほせ。よっほせ」
リズムよく土にクワを刺し込み、土の山を造って行く。
そろそろ4月も終わるので、スイカの種を植えようとしているところだ。
去年もいっぱい実って『ゆるやか時間』でお客様にも出したけれど、甘くておいしかったと好評だった。
今年もたくさん美味しいスイカを造るぞーっ!
「ふぅー……。後もう1棟だな」
耕してきた方向と反対方向から、もう1つ山を造る為に耕し始める。
僕がいる今の畑は、木漏れ日の森の中にある。
昔からここの畑では木花家が代々野菜などを育てて、自分たちの食料の糧にしている。
所有者は木花家本家の人で、この畑を今でも使っている。
そこに僕も畑をやりたいと言って、その畑の一角を譲ってくれた。
前はもっと小さい土地だったのが、僕が真剣に畑仕事をしているところを認めてくれたのか、1ヘクタールの土地をもらった。
今ではここに、トマト、アスパラガス、ごぼう、レタスなど色んな野菜を育てている。
いやぁー、楽しいな。
自分が一生懸命育てた野菜が元気に育ってくれて、母さんが美味しい料理を作ってくれる。
食べてくれる人が美味しいと喜んでくれて、僕たちもそれを食べて美味しいと喜ぶ。
将来は農業をやってもいいかもなぁ。
ミックスジュース研究者だけじゃ、収入は安定しないからなぁ。
この日本の税金っておかしいんだ。
直美先生見たいに世界中で売れるミックスジュースを造ってその印税でガッポリ稼いでも、手元に来る収入ってほんの知れた額なんだよな。
直美先生のミックスジュースでの印税の売り上げは約10億円とも言われている。けれど手元には1000万円程度しか来てないと、直美先生は愚痴を言っている。
1000万円あっても、ミックスジュースの材料には高額な物が多いので、あっという間に費やしてしまう。
なので直美先生の私生活面が豊かになってない。普通の一般人とほぼ変わりない生活をしている。あの先生の仕事をしていなきゃ食って行けない。
その消えたお金は日本の政治の為に使われていると言うが、一体何に使われているのやら。
きっとあの大神家が豪遊に使ってるに決まってる。
こんな税率なのに国民の人の大半が、この現状に文句や不満を持っていない。
収入が多い人からたくさんしぼりとり、普通の人は普通、無い人には取らないと行った感じで税収をしている。
ガンバって働いて収入を増やしている人にとっては、嫌な税率と思われていても。普通の人やそれ以下の人たちが大半な為に不満が出ていない。
逆に高収入の人が儲けていると大勢の人たちから嫌な目で見られて、いい気味だと批判される現状だ。
直美先生もその人柄を知らない人たちからは、奇異の目で見られている。
ミックスジュースの印税も楽して儲けてるイメージで見られているなぁ。
でもアレは造るのに運と経験が必要になるから、色々と大変な作業だと思うんだけどな。お金も掛かるし……。楽なものじゃないんだけど……。
「ふぅー、終わりっとぉーっ!」
最後の山も造り終わった。
さぁ、種を植えるかぁっ……と思われるだろうが、僕はそうしない。
しばらく耕した土は放置して、自然に近づけた状態に戻してから僕は種を植える。
なんか耕してからすぐ種を植えた苗って、育ってからヨワヨワしく感じる。
やっぱり自然の中から生まれた苗の方が、強く育ってくれる感じがある。
しかし余り自然栽培にしていると今度は逆に、野菜のうま味がなくなったりするから、育つのに手伝いはしてあげている。
野菜の育て方は人それぞれのやり方があるだろうけど、僕はこの方法で野菜を育てる事をしている。
んじゃ次は、春の新じゃがいもの収穫でもするかな。
ちなみにここで取れる野菜をミックスジュースの材料にすると、結構良い物が造れるんだよね。やっぱり取れたて新鮮、無農薬野菜だからかなぁ。
直美先生も僕の造った野菜を気に入ってくれていて、よく野菜が取れると買い付けに来てくれる。自分で食べる分と、ミックスジュースの材料と両方買ってくれる。
今日も新じゃが取れましたって、メールを送っておこっと。
「おはよう。また朝から熱心だなオマエも」
「あ、おはよう。今日の当番は宗八だったんだ」
後ろから声を掛けて来たのは従弟の木花 宗八。歳は僕と同じ9歳だ。
けれど学年は1年下の3年生で4月生まれだ。同じ茶の木小学校に通っている。
父さんの弟で武おじさんの一人息子だ。家もこの木漏れ日の森にあるのでよく出会う。
僕以外の親戚の子供たちは日替わりで、毎朝ここの畑に水をやりに来る当番制をしている。
「休日なのについてないよ。あー、まだ寝ていたいし」
顔も洗わず寝癖もそのままにやってきたのか、その表情はくしゃくしゃしていた。
「毎朝畑いじってるユウに全部任せればいいのに」
「それじゃ意味がないんだよ。自然と触れ合って心を造るが、うちの家訓なんだから。宗八も家でゲームばかりしてないで、外に出て自然と触れ合わないと」
「嫌でも家の周りが森だらけなんだから、これ以上触れ合おうとしなくてもいいと思うんだけど……」
「そうそう。モンマスの火山のボス。倒したよ」
「やっとか。ユウはもう少しゲームとかしないと、みんなに置いて行かれるよ」
まぁ確かに。僕はゲームと言う物は趣味の合間にできた時間にしかやってないからなぁ。
友達を大事にする為に相手の趣味と同じ遊びもそりゃしてるにはしているが……。ゲームだとかカードゲーム系とかはあんまり追いつけないので、結構置いていかれている。
「やっぱり、もうちょっと僕もみんなみたいに遊んだほうがいい?」
「そりゃそうだよ。ユウは今、友達何人いるのさ」
「え? んー……、数えきれないくらいにいるっちゃいるんだけど」
「それってさ……。自分が友達だと思っていて、相手はユウの事を友達だと思ってないんじゃないかな……」
「…………っん、んー」
そう言われるとそんな気もしてきたような。
クラス替えして特級組に入ってから、前に居たクラスメイトの友達とは、すれ違う時に挨拶ぐらいしかしてないような……。
昔は一緒にいるからみんなが遊んでいる時に入っていたりしていたけど、こう離れたら遊びの誘いだとかそう言うのもなくなってきて……。
「ユウの変わり者な趣味は、やっぱ直した方がいいと思うよ」
「う、うーむ……」
宗八はそう言った後、畑に水を撒く為にホースと蛇口があるところへと行ってしまった。
いやはや……。これは自分を見つめ直さないといけないかもしれないな。
しかし野菜は生き物。これだけは責任もって世話してあげないとな。
っとなると他にやってる趣味をもう少し抑えて、みんなと同じような事をしないとな。




